2006年7月24日

「舫い船」について

「犬祭3」(sleepdogさん主催)が、先ごろ閉幕しました。
すでにオンライン界の定例イベントとなった感のあるこのお祭りも、今年で三回目。
今のところBUTAPENNも皆勤を続けていますが、今年は自由参加部門で、「金の骨」をいただきました。
三度目にして、初の「金」受賞です。ひゃっほう。
うれしがりと言われようと、うれしいもんはうれしい。ドッグさんからいただいた、受賞記念の「金骨」画像を飾っちゃいます。


dogfes_gold.gif


今年のsleepdogさんは、仕事の最繁忙期にあたってしまい、激務の合間の運営でした。涼しい北海道とはいえ、さぞかし、汗まみれで孤軍奮闘してくださったのだと思います。
ほんとうにお疲れ様でした。

さて、祭終了にともない、参加作の「舫い船」について、いくつか「あとがき」めいたことを書いておきたいと思います。
今だから告白しますが、このお話は犬祭のために考えたというより、ずっと暖めていたいくつかの題材をまとめて投入したという経緯があります。
だから、感想欄でも非常に好意的にご指摘いただいたのですが、犬が登場する必然性があまりない。ここに出てくる「早太郎」という犬のかわりに、村の鎮守の木でも何でもよかった。ドジな使用人の女の子だったりしたら、ちょっとした初恋ものになったかもしれませんね。

私がずっと暖めていた題材というのは、ひとつは私の通っている教会の名誉牧師が礼拝メッセージで話した、子どもの頃の思い出話です。私の父と同じ年の生まれで長野県出身の老牧師は、小さい頃柿の実を盗んで、村のとんでもなく恐いおばあさんに家の中まで追いかけられたりしたそうです。しかし、そのおばあさんはキリストを信じて、180度穏やかな性格へと変えられたのです。
「こ?れ?は?使える!」ということで、メッセージの内容そっちのけで設定をメモしていた、とんでもない信者であります(笑)。

もうひとつの題材というのは、「喫茶吾眠」のとっとさんから、去年の6月にいただいた「掲示板200リク」でした。
そのリクエストとは、村山由佳さんの「すべての雲は銀の...」に出てくる兄弟(優秀な兄と、平凡な弟)と、最初は弟の恋人だったのに、後に兄と結婚してしまう女性を、BUTAPENN流に描いてほしい、というものでした。
この設定は、「夜叉往来」でも使ったばかりだし、どういうふうに料理すべきかと悩みつつも、例として提示された「すべての雲は銀の...」を読んでみました。
このお話は、文字通り兄に恋人を取られた弟が、とあるペンションを舞台にいろいろな人々との交流を通して、傷ついた心が癒されていく……という筋です。
読んでみて、実は私は、ストーリーそっちのけで、兄夫婦に対して怒りを覚えてしまったのです。
特に、弟に対する負い目から追い詰められて入院している彼女を見舞ってやってくれと、兄がペンションまで頼みに来る場面。こんなことを平気で頼むなんて、兄たちはなんと自分勝手なんだと思いました。
主人公が新しい出発をするというラストを読んでも、鬱憤は収まりません。

もし、私が弟だったらどうするだろう。
「いいよ」と見舞いを快く引き受けて、実際は兄嫁と対面するや、ねちねちと苛めて、流産に追い込んじゃう(おい)。
それからも、自堕落な生活を送って、兄夫婦に金銭的にも心配を掛け続け、派手な女遊びをして、あげくの果てには子どもを儲けて、子どものいない兄夫婦に「育ててくれよ」と押しつけてやる。
でも、彼の子どもを懸命に育てる兄夫婦の姿を見て、また復讐の道具として生み出したはずのわが子の成長を見ているうちに、長い年月の果てに彼の心は癒されていく……。

というストーリーを思い浮かべていました。
「舫い船」は、そのすべてのドラマを全部隠した上で、道具とされた子どもの立場から見たお話に仕立てました。
もちろん、とっとさんのリクエストのすべてを満たしているとは、およそ言いがたいですが、とっとさんはこころよく、「これでOK」とみなしてくださいました。というわけで、「掲示板200リク」完了(笑)。

もうひとつのテーマは、このあいだから私をさいなんでいた「閉塞感」です。
このブログにも以前に書きましたが、老親をかかえ、次第に自由に行動できなくなりつつある今に対する鬱屈とした気分が、日々強まってくるのを感じていました。書くことによって昇華したい、と主人公を狭い谷に閉じ込められた少年に選んだのです。
幸い、この話を書いたことと、夫と尾瀬旅行に行ったことで、すっかり私の欲求不満は解消しましたが(笑)。

これほどいろいろな個人的な心情を詰め込んだお話を、丁寧に読んでくださった皆様、投票してくださった皆様、どうもありがとうございました。
でも、この「あとがき」を読んだら、投票しなければよかったと思う方がいらっしゃるかもしれませんね(笑)。

*「犬祭3」の会場はオープンしています。小説・イラスト・短歌などたくさんの作品が展示中ですし、感想掲示板なども稼動していますので、もしよろしければお運びください。