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No. 18  オンリーワン

  人は誰でもナンバーワンになりたがる生き物だ。

  絶えず、他人と自分を比較し、高ぶり、卑下し、自分を位置づけようとしている。
  そこには、嵐の日に大波にもてあそばれる小舟のような、浮き沈みのはげしい、不安定な自己評価しか生まれない。

  しかし人間にとって、もっとも幸せなことは、ナンバーワンになることではない。
  オンリーワンになることだ。
  家族にとって、友人や恋人にとって、そして今は見知らぬ誰かの、かけがえのない者となること。
  いや、気づいていないかもしれないが、もう私たちはすでに、オンリーワンの存在なのだ。

  教会での礼拝でこの話を聞いたその日の午後、教会員のご家族の小さなお嬢さんの記念会が持たれた。記念会とは、仏教でいう「法事」にあたる。ただキリスト教のそれは、死者を供養するものではなく、ご家族を慰めるためのものである。

  今年の桜のころ、5年9ヶ月の生涯を閉じて、天に召されたこの女の子は、仮死状態で生まれ、障害を持った。
  一生のあいだ、話すことも歩くことも食べることもできず、24時間の介護が必要だった。
  しかし、その短い一生の中で、彼女は家族や周りの人々、病院の医師や看護士の方々に多くの喜びを与えた。
  たくさんの人が、涙を流しながら彼女の思い出を語った。
  正直、本当に多くの困難と葛藤があったと思う。
  でも彼女が何かをいやがって泣くと、回りの人はその心の成長を喜び、彼女が笑うと、その笑顔は人々を慰め、勇気づけた。

  人の一生は、何をなしえたかで決まるのではない。
  その人が、そこにいること。それが何よりも偉大な奇跡なのだ。
  笑うことと泣くことしかできなかった彼女は、たったひとりのかけがえのないオンリーワンだった。

  天の御国で、チューブをはずされ、思いきり走り回る彼女を、私たちはいつか見る。
  それまで私たちは、彼女と同じように自分らしく生きる、自由と責任を負っている。


    あなたを形造った方、主はこう仰せられる。――
    「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している。」 (イザヤ書43章4節)


  


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