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(舞台中央に、父。両側に息子が立つ)
ナレーター:これは、ふたりの息子と父親のお話です。
弟:お父さん。財産の半分を俺にくれ。
父:そのお金でいったい何をするつもりだ?
弟:遠い国に行って、ひと旗あげてやるんだ。こんな田舎にくすぶっていたら、何もできやしないよ。
父:外国には、危険なことがたくさんあるぞ。いつまでもここで暮らしたらどうだ。
弟:こんな退屈なところいやだね。じゃあバイバイ。(退場)
父:待ってくれ。行かないでくれ。(追いかける)
兄:まったくあいつは昔から、勝手なヤツだ。自分ひとりだけ自由を手に入れて。フン。
(場面転換)
ナレーター:財産の半分をもらった弟息子は、すぐに遠い国に旅立ちました。そして、そこで湯水のように財産を使ってしまいました。
(坐っている弟息子の後ろで3人の女性がカラオケを歌っている。モー娘の歌?)
弟:(拍手をして)いいぞ。さあ小遣いをやろう。
(女性たち、きゃあきゃあ喜びながら、ひとりずつ金をもらう仕草)
弟:ああ、毎日楽しいなあ。あれ、オレっていったいここに何をしに来たんだっけ。
まあ、いいや。楽しいから。
(場面転換)
ナレーター:弟息子の財産はすっかりなくなってしまいました。そしてちょうどそのとき、その国に大ききんが起こり、弟息子には食べるものさえなくなってしまいました。
(弟、腹をへらしてとぼとぼ歩く様子)
ナレーター:弟息子は、ある人のところで豚の世話をする仕事をもらいました。でもそれは豚よりもひどい生活でした。
(豚登場)
弟:ああ、豚のえさのいなご豆でもいいから、おなかいっぱい食べたいなあ。
豚:おい、おまえ。おまえは今までずっとオレたち豚のことを馬鹿にしていただろう。臭くてきたなくって、近寄るのもいやだと思っていただろう。だけど、見てみろ。今はおまえのほうがオレたち豚よりみじめな人間になってしまったぜ。ははは。
弟:(頭をかかえて)ああ、なんてみじめなんだ。いったいなぜこうなってしまったんだろう。いったいどこで間違えたんだろう。
そうだ。お父さんがあんなに止めたのに、家を捨てて出てきたのが悪かったんだ。お父さんの家は楽しかったなあ。雇い人でさえ、パンをおなかいっぱい食べて幸せだった。
(立ち上がる)そうだ。お父さんの家に帰ろう。
もう息子なんて呼んでもらわなくてもいい。雇い人のひとりにしてもらおう。
(場面転換)
ナレーター:こうして、我に返った弟息子は、立ち上がって自分の国の、父親の家に帰ることにしました。
(とぼとぼ歩く)
ナレーター:ところが家までまだ遠かったのに、父親は弟息子の姿を見つけたのです。
父:おーい。おーい。
(駆け寄って抱きしめる)
父:かわいそうに、かわいそうに。こんなに痩せて。ずっとずっとおまえのことを忘れたことはなかったよ。毎日、今日帰ってくるかと思って、丘の上から見ていたんだよ。
弟:(離れようともがく)お父さん、ごめんなさい。俺、神様もお父さんも忘れて、ひどい生活をしていたんだ。オレ、豚みたいによごれているよ。くさいよ。だから近寄っちゃだめだよ。
父:何を言ってるんだ。おまえはずっと私の息子だよ。お父さんはおまえのことを愛してるよ。
さあ、みんな。この子にきれいな服とくつと指輪を持ってきておくれ。子牛を料理してお祝いしよう。
(場面転換)
ナレーター:家中のものが祝宴をしていたとき、畑から兄息子が帰ってきました。弟が帰ってきたこと、それを父親がとても喜んでいることを知って、兄息子はとても腹を立てました。
兄:なんでこんなにお祝いをするんだ。こいつは長い間自分勝手に遊んでいたんじゃないか。財産を全部使ってしまったんじゃないか。なぜお父さんはこんなヤツをゆるすんだ。
僕なんか、ずっとお父さんの言いつけどおりにしてきた。どんなに遊びたくったって、全部あきらめてきたんだ。それなのに、僕よりもこんなヤツを大切にするなんて、ひどいよ。
父:(近寄って)おまえは、こんなにいつも私のそばにいたのに、私の気持ちがちっともわかっていなかったんだね。お父さんはおまえを愛しているよ。たとえ、おまえがおまえの弟と同じように、罪をおかしてどんなにみじめな姿になっても、お父さんはきっと同じようにおまえを赦して、おまえを抱きしめるよ。
(抱きしめる)さあ、いっしょにお祝いしよう。
(まわりの人々が、さんびをうたいはじめる)
(さんびの中、父が兄息子と弟息子を握手させる)
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