(6・終)
カラカラという奇妙なあだ名は、彼がガリア風のフード付きトゥニカを好んで着たからと言われている。
母はフェニキア人ユリア・ドムナ。母に似て肌浅黒く、高い額と濃い眉とちぢれた髪を持つ14歳になったばかりの少年は、幼くして父から副帝(カエサル)の称号を授けられ、次の皇帝になることを運命づけられていた。
「陛下」
レノスたち三人は、あわてて臣下の礼を取った。誰かの到着を待っているとは予想していたが、まさかそれがローマ帝国の皇位継承者であるとは。
「カルス司令官。何日もお待たせしたようで、すみません」
ことばは丁寧だが、ゆったりとした立ち姿と、会話に合わせて自在に動く長い指は、人を従えることに慣れた者だけが持つ、からかいにも似た余裕が感じられた。
「召喚の命令を出したときは、ロンディニウムからエボラクムまでこれほどかかるとは思ってませんでした。寒いのなんのって、一日に二時間も進んだら、足がかじかんで馬に乗っていられなかったんです」
レノスは戸惑いを覆い隠しつつ、答えた。「ここは、陛下がおられたパルティアとはあまりに違いすぎますから」
「そう。とても同じローマ帝国とは思えない。あちらは熱くて乾いていて、こちらは土も空気も、人までも冷たく湿っている」
カラカラは、自分で自分のことばに愉快そうに笑った。
「もう知らせは受けてますよね。あの古い国パルティアがついに、わが軍門にくだったんです。巨大な凱旋門を作らせて、いざローマに入城という段取りになったところで、ブリタニアからの報告が舞い込んできました。カレドニアの砦から全てのローマ軍が撤退したと」
カラカラは「やれやれ」と言わんばかりの調子で両手を広げた。「せっかくの戦勝気分を台無しにされましたよ。それ以前も、輸送隊が蛮族に襲われたとか、人質に取られたローマ兵のために身代金を払ったとか、ブリタニアからはろくな報告がなかったもんでね。撤退を命じた人間を極刑に処して、おしまいにしてしまえばよかったのに、文官が出しゃばって、撤退の責任者の名前を読み上げたんです。ええ、もちろんあなたの名前です。カルス司令官」
少年は玉壇にひょいと腰かけた。「父は驚いて、腰を抜かしそうになってました。あなたには何度か会ったことがあるとかで」
「お父君には、モグンティアクムで牢獄から救い出していただくという大恩を頂戴いたしました」
レノスは床に片手をつき、頭を垂れた。「さぞ恩を仇で返したと失望されたことでしょう」
「いえ、父が腰を抜かしたのは、あなたが女性であるのに今まで全く気づかなかったことです。母から『あなたは昔から観察力がない』とボロクソに言われて、それもかなり堪えたみたいで。それで、悔しまぎれに僕に命じたんです。カルス司令官を尋問して、何が起こったのかを徹底的に調べてこいと」
カラカラは座ったまま、バタバタと足を踏み鳴らした。「そういうわけで、僕ひとりだけが郵便吏並みに昼夜走り続けて、こんな北まで遣わされたってわけです。今ごろ両親と弟は、のんびりとパルティアからローマへの旅を楽しんでいるっていうのに、ねえひどいでしょう」
カラカラの笑顔はほんのわずか、注意して見なければわからないほどに小さく歪んだ。
「お手数をかけ、申し訳ございませぬ」
「さっきの尋問の方法を教えてくれたのは、実は母なんです。いきなりひどく罵倒して相手を追いつめてから、次に優しく語りかけてやるもんだって。それで大概の人の本性がわかるからって。ええ、母はとても賢い人なんです」
最後のことばを声をひそめるように言って、少年はクスクスと笑った。「でも僕みたいな子どもがいくら罵倒したって、あなたのような歴戦の勇者がひるむはずはない。だから、ヒエロミニアヌスを代理に立てたんです」
「陛下のご期待に沿えたとは申せませんな」
第六軍団の軍団長は、居心地悪そうに何度も咳払いをした。「わたしには俳優の才能がないようです。最初から芝居だとすっかり見抜かれていましたよ」
「いえ、そういうことではありません」
レノスは軽く頭を下げて軍団長に敬意を表した。「ヒエロミニアヌスどのがあんなことを言う方ではないと承知していたからです。スーラ元司令官は、古くからの知人をそのようにはおっしゃっておりませんでした」
「ああ、スーラどのからの書状は読んだよ。それ以前にも幾度となく手元に届いている。きみがいなければ、たくさんの生命が無為に奪われただろうと言葉を尽くして書かれてあった」
「じゃあ、小細工を弄するのはやめて、さっそく本題に入りましょうか」
カラカラはのびやかに身体を伸ばし、まっすぐな視線をレノスに注いだ。それまでのからかうような表情は消え去り、瞳は黒々と深い井戸の底を覗き込んでいるようだった。今までかぶっていた無邪気で放逸な少年という仮面を取り去ったのだと、レノスは直感した。
「僕は、女性を軽蔑してはいません。女でも男よりずっと賢く分別のある人もいる……僕の母のようにね。でも、ローマ軍の司令官となると話は別だ。あんなに命がけの過酷で血なまぐさい職業を、女性のあなたがなぜ選ばなければならなかったのか。僕はまず、そこに興味が湧きました」
彼はふたたび玉壇に腰を下ろして、ゆったりと足を組んだ。「よければ、その理由を教えていただけませんか」
この広間にいるすべての人間が、近衛兵、文官、入り口を守る門番にいたるまで、すべての人間が耳をすましているのを感じた。
「副帝陛下に、卑しい口から申し開きができる光栄を感謝いたします」
レノスは身を起こし、息を深く吸った。自分の生命のすべてを懸けて、腹の底から声を張り上げた。
「わたしはこのブリタニア、長城の向こう側で生まれました。父は北ブリタニア辺境部隊の司令長官としてこの地の平定に当たりつつ、氏族とローマとの平和を心より望み、双方の融和に力を尽くしました。ですが、不幸な行き違いが起こり、勃発した戦乱の中で命を落としました。そして、そのとき9歳の子どもであったわたしは……氏族の男たちになぶられた挙句、瀕死の状態で救い出されました」
背後で、ラールスとセリキウスが息を飲むのが聞こえる。彼らに真実を打ち明けるのは初めてだっただろうか。
「わたしは、おのれが女であることを憎みました。男として生き、自分の人生に暗黒の影を落としているものを取り去りたいと願いました。父の遺志を継ぎ、氏族との平和を取り戻したいと願いました。そして女であることを秘して、ローマ軍に入ったのです」
ヒエロミニアヌスが信じられないと言わんばかりに小さく首を振って、あとは食い入るようにレノスを見つめた。
「忠実な部下に恵まれ、わたしは北の砦で第七辺境部隊の司令官として実り多い生活を送りました。そしてひとりのクレディン族の若者と出会い、友情を結びました」
アイダン、助けてくれ。わたしがおまえのことを正しく話すことができるように。
「そして知ったのです。彼らは決して野蛮で好戦的で、理解を拒む獣のような民ではない。自分たちの生き方に誇りを持ち、それを力ずくで侵す者には牙をむくが、ひとたび手を伸べる者に対しては懐深く、熱い友情をもって報いてくれる……ローマ人に劣らず、いやそれ以上に信義に篤い、勇敢で愛に満ちた民であると」
カラカラは、自分のフードの端をいじりながら興味なさそうに聴いている。
「氏族とローマのあいだに、双方ともが望まなかった戦争が起き、わたしは友であった若者をこの手で殺し、その弟を捕虜としました。その弟、セヴァンをわたしは自分の奴隷として打ち叩き、服従することを教え、文字を教えました。彼とわたしとの間には、長いあいだ憎しみと負い目がありました。彼はわたしを殺したいと願った。当然でしょう。わたしは彼の兄を殺したのですから。終わりのない苦しみと葛藤の中でいつしか、わたしたちふたりは互いを想い合うようになり……」
セヴァン、どうかそばにいてくれ。弁明の途中でわたしが無様に泣き出すことのないように。
「わたしは彼とともに生きたいと願いました。自分がとうに捨てたはずの『女』として生きたいと心から願ったのです」
「おっしゃることはよくわかりました」
カラカラは、不服そうに口をとがらせた。「では、なぜいきなり舞い戻ってきたのですか。さっきヒエロミニアヌスに言ってもらったことは、僕の正直な疑問です。あなたはローマを捨てて蛮族の族長と結婚して、子どもまで設けた。氏族連合の王となった夫とともに、ローマに敵対した。逃げてきたふりをして、ローマを追い出す計略だったのではないかと疑うのは当然でしょう?」
「おそれながら、陛下。それは誤解です」
レノスは答えた。「夫は、氏族のひとりに裏切られて殺されました。夫はローマの叡智にならって国を豊かにし、対等な関係でローマと平和を結ぶことを夢見ていました。その改革をよく思わない人々がいたのです。彼らは、ドルイド僧にそそのかされて、すべてローマに与する者を殺すように焚きつけられました」
「ローマと対等な関係? 馬鹿だな。ローマはそんなことを許すはずはありませんよ」
副帝カラカラは口の中でつぶやくと、大儀そうに立ち上がり、トゥニカの裾を払った。
「あらましはわかりました。ヒエロミニアヌス、あなたはどう思いますか。僕はこの件をどう裁けばよいのかな」
「陛下。おそれながら私見を申し述べます」
第六軍団の軍団長は、少年に軽く一礼した。
「カルス司令官を罰する理由はどこにも見当たりません。もし撤退しなければ、援軍が到着するまでに失われたであろう人命は、軍人民間人ともに相当な数に上ったでしょう。反対に、もしこれが陰謀だとするならば、撤退の途中で氏族の胸中に突っ込ませるほうが、よほどよかったはずです。カルス司令官はそうしなかったどころか、砦を焼き払い、氏族に一切の戦利品を与えなかったのです」
「なるほど」
カラカラは、頭を掻いた。
「けれど、それは困ったな。できれば父には、関係者を厳罰に処したと格好よく報告したいんです。パルティアでの戦勝を台無しにされたわけだし、わざわざブリタニアまで足を運んで、誰も処罰しないというのでは、回りに示しがつかない。父は僕のことを女々しいやつだと思うでしょう」
黒曜石のような瞳をきらめかせながら、レノスを見る。
「誰かひとり、生贄になってもらわないとね」
「陛下!」
セリキウスが耐えきれなくなって立ち上がった。「カルスどのはすでに司令官を辞めておられました。撤退を決めたすべての責任は、北の砦の司令官であったこのわたしにあります。撤退命令にカルスどのの名前を勝手に使っただけ……」
語尾は途中で消えた。隣のラールスが、彼の脇腹を殴りつけて、代わりに大声で叫んだからだ。
「セリキウスに無理やりそうさせたのは、筆頭百人隊長の俺です。罰するなら俺を罰してください」
「やめろ」
レノスは静かな、しかし力強い声で彼らをたしなめ、ふたたび副帝の前に頭を下げた。
「わたしは自分の成したことを、毛の先ほども後悔はしておりません。むしろ誇りに思っています。しかしながら、この命は一度は軍人としてローマにささげたもの。陛下のお役に立てるのなら、いかようにでもお使いください」
「さすがですね。カルス司令官」
カラカラは軽やかな声を上げて、笑った。「さすがです。器が違う。それで僕も気が楽になりました」
近衛兵たちがあわてて、セリキウスとラールスを両側から取り押さえた。いまにも副帝に殴りかからんばかりに見えたのだ。
「レノス・クレリウス・カルス司令官。あなたをローマに対する反逆の罪で拘束します」
南の要塞の町は、大勢の人でにぎわっていた。春の陽気に誘われて往来を歩く人々の笑い声がここかしこに聞こえ、作物を山積みにした市場は、威勢の良い店主たちの掛け声が満ちていた。
あちこちで尋ね回り、ようやく町の一角に、北の砦から撤退して来た人々の住む新しい区画を見つけた。
馬を引いて歩いていると、ひとりの男が幽霊でも見たかのような悲鳴を上げ、持っていた杖を落として、尻餅をついた。
「セヴァン!」
「フラーメン」
ようやく昔の知己に出会ったセヴァンは、かすかに笑った。何日も人と言葉を交わさず、表情を変えることもない旅を続けてきたため、うまく笑えたとは言えないが。
フラーメンは杖を拾い、それをたよりに立ち上がった。「まさか、おまえ……死んだと聞いたぞ」
「こうして、生きている」
セヴァンは答えながら、あたりを見回した。フラーメンがいるということは、あの人もそばにいるはず。
「レウナも何も知らないのか」
「知るわけない。完全に死んだと思ってるよ」
「あの人はどこだ」
フラーメンは笑顔を消した。「ひとあし遅かった」
「どういう意味だ」
「……いや、なんでもない、司令官どのはエボラクムの第六軍団本部に出かけた」
「ルーンは?」
「いっしょにエボラクムにいる。リュクスとユニアが面倒を見てる」
セヴァンは黙り込んだ。どういうことだ。リュクスはレウナに何も言っていないのか。
「俺も、エボラクムに行く」
「まあ、待て。下手をすれば行き違いになるだけだ」
フラーメンは向かいのローマ風の建物を指し示した。「司令官どのがルーン坊やといっしょに暮してる家だ。食い物を持ってきてやるから、とりあえず中に入って少し休め。おまえ、ずいぶん疲れてるぞ」
抗うことはできなかった。彼の言うとおり、セヴァンは今にも崩れ落ちそうなほど疲れ、腹をすかせていた。
扉を開けて中に入ると、埃の匂いにまじってかすかに甘い香りがした。なつかしい、あの人の香り。中に立ち尽くし、ぼんやりとあたりを見回す。大卓の上に食器が積まれ、隅の柵の中には、木を削って作った赤ん坊のおもちゃが転がっていた。
堪えきれぬ不安が胸の中を覆い尽くしていく。また会えなかったのか。俺はこうやってレウナと永遠にすれ違い続ける定めなのか。
外に飛び出ようとして、フラーメンとぶつかるところだった。
「やはり、行く」
「いいから座れ」
片脚とは思えないほど、ぐいぐいと強い力で押し戻された。
「そんな青い顔で旅を続けたら、途中でぶっ倒れちまうぞ。おまえだけじゃない、馬もだ」
セヴァンを無理やり長椅子に座らせると、フラーメンは肩にかけていた籠から凝乳を入れた壺とパンの塊を出し、卓の上に置いた。
「さあ、これでも食ってろ。妻が今、美味いスープを作ってる……馬は近所のやつに頼んで、たっぷり水と飼い葉をやってもらってる」
フラーメンも長椅子の隣に、よいしょと腰を下ろし、セヴァンの背中をぽんと暖かい手で叩いた。
「エッラは変わらんな。さすが俺の家の馬だ。もうかなりの歳だろうに」
「ああ」
「司令官どのは今、キグヌスに乗ってる。エッラの息子だ。良い葦毛馬に育った」
「アラウダは?」
「死んだよ。撤退中にクレディン族の追手の矢に射抜かれて」
彼は鼻をすすり、天井を見上げた。「俺たちの身代わりになってくれたのかな。第七辺境部隊はひとりも死ななかった。カルス司令官のおかげで、多くのいのちが救われた」
その後、フラーメンは物思いに沈み込んで、ひとこともしゃべらなくなり、やがて出て行ってしまった。凝乳にパンを浸して食べ、彼の妻ローリアが持ってきたスープを飲み干し、セヴァンはいつしか、卓の上に突っ伏して前後不覚に眠りこんでいた。
突然の物音に意識を取り戻したのは、開け放った窓から夜が忍びこむ頃だった。部屋の壁の棚にランプが置かれ、そのぼんやりした光で、入り口から入ってくる人々の影がゆらゆらと揺れていた。
「久しぶりだね、セヴァン」
かたかたと鳴っていたのは、スーラ元司令官の杖の音だった。妻のフィオネラが彼を助けて、椅子に座らせた。フラーメンはふたたび彼の隣に腰かけた。
「俺は、おまえに嘘をついた」
フラーメンがぼそぼそと言った。「カルス司令官どのは、もうここには帰ってこない。撤退の責任を問われ、副帝陛下の命でエボラクムで拘束された」
「拘束だと?」
椅子から立ち上がったセヴァンを、彼は「まあ待て」と引きずり戻した。
「司令官はいわば人質だ。解放の条件として、辺境部隊は解散を命じられた」
フラーメンは苦いものを噛みしめるような顔で説明を続ける。
「セウェルス帝は、今回の撤退をローマの敗北だとみなして、関係者の厳重な処罰を求めている。だが同時に、今度の撤退がなければ、北ブリタニア辺境部隊は、住民もろとも全滅していたはずだということもご存じなのだ。それならば、なかったことにしてしまえばいい。ある日突然、歴史から消え去った第九軍団のようにな」
事の次第が飲み込めて、セヴァンはぶるりと肩を震わした。ローマは自らの敗北を決して認めない。都合の悪いことは文書から消し去って、決して後世には伝えないのだ。
「辺境部隊は初めから存在しなかったことにされる。昔もこれからも、ハドリアヌス帝の長城がローマの防衛線であるということに歴史は書き換えられる。その向こう側にローマの砦はなかった。俺たちは初めから存在しなかった」
悔しさのあまり、フラーメンの語尾は涙にかすれた。スーラが重々しい声で後を引き取った。
「辺境部隊は解体され、およそ半数が別の土地に移動する。残りの半数は分散して、この長城の警備に当たることになった。一昨日の夜、セリキウスとラールスがエボラクムから戻ってきて、皆にその命令を伝えた。兵士たちからも住民たちからも怒りの声が沸き起こったが、どうすることもできん。レノスが拘束されている以上、命令に従うしか道はないのだよ」
苦渋に満ちた沈黙が、部屋に帳を降ろした。
フラーメンが大きく震える息を吸った。「セリキウスたちは、第四部隊から第七部隊までの二千人をまとめて、港の辺境部隊司令本部へと発った。つい昨日のことだ」
「どこへ」
「何も聞かされていない。地の果てだろうと激戦地だろうと、副帝陛下の言いなりだ」
金髪の元百人隊長は卓に寄りかかりながら、自分の足元に視線を落とした。
「俺は……行けなかった。もともと正規の兵士じゃないし、身重の女房も父親もいる。脚が二本ありゃ、何もかも捨ててついて行ったかもしれねえけどよ」
「わかった」
セヴァンはマントを手に立ち上がった。「今からエボラクムに発つ」
「どうする気だ」
「レウナを取り戻す。どんな手を使っても」
「相手は副帝陛下だぞ。正気か?」
セヴァンはうっすらと笑った。「いろいろと世話になった」
「待ちなさい」
スーラ元司令官の大声が、狭い部屋に響きわたった。
「レウナを取り戻して、どうするつもりだ。また氏族の地に連れ帰るのか」
老将の強い睥睨に、セヴァンは静かに応えた。
「いや、そのつもりはない。俺は故郷を捨てて来た」
しばらく、セヴァンの心を探るように見つめたあと、スーラは杖の握りをつかんで、立ち上がった。
「リュクスときみのことを話していて、ふと思ったのだよ。きみは自分が奴隷のままでは、レウナを愛する資格がないと考えたのではないかね。対等の立場で、いや対等以上の立場でレウナを自分の元に迎えたかった。だから、きみはどうしても、王にならなければならなかった」
セヴァンは眉をひそめたが、何も答えなかった。
「きみがレウナを追いかけることを決めたのなら、お願いしたいのだよ。レウナは人の上に立つことを運命づけられた人だ。これからも、兵士を率いて、多くの人々を救うために戦うことだろう。きみは、一歩後ろに退いて彼女を助ける覚悟があるかね? レウナより下の立場を甘んじて受ける覚悟があるかね?」
老スーラは苦しそうに咳き込み、フィオネラはあわてて彼の背中をさすった。
「もし、その覚悟がないのなら、きみはレウナを追いかけてはならない。互いに不幸になるだけだ」
セヴァンは手にあったアカシカのマントを羽織り、短剣を腰に差して身形を整えた。
「覚悟はできている」
スーラに言っているのではない。自分自身に、自分の奥底にいる自分自身に向かって、彼は宣言した。「俺はクレディン族、オオカミの子孫だ。俺はいつでもレウナとともに戦いに出て、危険を知らせ、敵に噛みついて、彼女を守る」
「ありがとう、セヴァンくん」
スーラの目にはすでに涙があふれていた。「その答えが聞きたかった。ここに、ユニアからの手紙がある。送り元の宿屋を訪ねれば、ルーンもそこにいるはずだ」
セヴァンは、老人の手から羊皮紙をひったくるようにして受け取った。
『スーラさま
レウナさんが拘束されてしまったことを知らされました。この手紙を急いでしたため、いつもの兄弟に託します。
リュクスとわたしは、もうそちらには戻りません。ルーンを連れてレウナさんについて行くことに決めました。どこに行かれようとも、レウナさんが我が子を抱くことができるように、そばにいて仕えます。
それがわたしたちの、せいいっぱいの償いです。
セヴァンさんは生きています。けれども、リュクスとわたしはそのことを黙っていることに決めました。
もし、セヴァンさんがスーラさまの前に現われることがあれば、どうか赦してほしいとお伝えください。
落ち着いたら居どころを知らせる手紙を書きます。もし私たちにその自由があればですが。
スーラさま、フィオネラさま、どうかお元気で。教会の皆さまに、主クリストゥスの守りがありますように。』
「セヴァン」
フラーメンが右腕をぐいとつかみ、青空のような瞳で覗きこんだ。
「司令官に伝えてくれ。俺はここに残って、みんなの帰りを待っていると。何年かかってもいい、帰ってきてくれ。俺たちはここを守りぬいて、辺境部隊が歴史から消し去られないように、いつまでも帰りを待っているから」
「ああ」
セヴァンはフラーメンの手に触れ、強く握り返した。「必ず、伝える」
「セヴァンくん」
スーラがフィオネラとともに立ち、ほほえみながら腕を差し伸べ、指で十字を切った。
「われわれクリストゥス信者は自分のことを『主の奴隷』と呼んでいる。しかし奴隷でありながら、わたしたちは誰よりも自由なのだよ。氏族の王よりも、ローマ皇帝よりも……きみもそうあってほしいのだ。何が起ころうと、どこへ行こうと」
「セヴァンさま。あなたに主の祝福がありますように」
セヴァンは、黙って深く頭を垂れた。
わずかな蝋燭の光の中で、少年は片肘をついてローマ皇帝の玉座に座っていた。
近衛兵たちは、敬礼して広間を出て行った。
「お呼びだとうかがいました」
レノスの声に、ようやく眠りから覚めたとでも言うようにカラカラは顔を上げ、にっこり笑った。
「僕を怒っていないのですか。いきなりあなたを幽閉してしまったのに」
「いえ」
「もっと近くに来てください」
玉壇の下まで来ると、壇を登ってさらに近づくように促された。
「あなたに、僕の味方になってほしいんです」
耳をすまさなければ聞こえないほどの小声で、少年は言った。
「すべてのローマ軍人は陛下のお味方です」
と答えると、カラカラは黒い瞳を細め、首を横に振った。「そうでしょうか。父帝に忠誠を誓ってはいても、僕の代になったとたん、叛乱の狼煙があちこちから上がらないとは限りませんよ。属州の軍団長たちは虎視眈々と皇帝の座を狙っている……あのルグドゥヌムの戦いが起こったときのように」
レノスは息がうまく吸えなくなった。
「父は、家族をどこへだって連れて行くという妙な癖があるんです。あのとき僕は9歳にも満たなかった。遠くから見た戦場は、まさに血の海だった。死臭が丘の上まで立ち昇っていた。それから一ヶ月、まともに食事ができませんでした」
昏い奈落の底を見つめるような目をして、カラカラは続けた。
「僕は戦争が嫌いです。父は僕を強い軍人に育てたいらしいけど、僕にはそういう才能は微塵もない。弟のゲタは甘やかし放題のくせに、僕を見るときは、あからさまに失望した目になるんです。こいつはダメなやつだと。回りの軍団長たちも同じことを思っているでしょう。まったく、やってられません」
少年が言葉を吐き出したとき、レノスは背筋にぞっと冷たいものが走るのを覚えた。愛してほしい人から愛されぬ恐怖。認めてほしい人から認められぬ怒り。
「だから僕には、味方が必要です。それも戦争が大好きな軍人ではなく、まして僕の後釜を狙う軍団長ではなく、あなたのように賢い人が」
カラカラは玉座から腰を浮かすと、レノスの肩に手を伸ばした。
「ローマに入城したら、父は数年は動かないと思います。中央の政治体制をまずしっかりと固めてから、帝国最後の激戦地ブリタニアにやって来るつもりでいます。僕に前もって偵察を命じたのは、そのためです」
レノスの肩をゆっくりと撫で回しながら、カラカラは母親に甘える幼子のような声を出した。「そのとき僕は父の隣にいて、次の皇帝にふさわしいことを父に見せつけなければなりません。だから、カレドニアの地を知り尽くしているあなたの助けが必要なんです。あなたならきっと、蛮族を手なずけて戦争を回避する手段を見つけられる。女のあなたなら、野心に邪魔されて僕を裏切ることはない」
「陛下、あなたは……」
レノスは肩の感触に怖気を震いながらも、直立不動の姿勢のまま14歳の少年を見つめた。
「恐れながら、わたしはあなたによく似た御方を存じ上げておりました。その御方も、偉大な父君の存在の大きさに押しつぶされそうになり、ご自分の生き方を思い定められずに苦悩しておられました。わたしはその御方に、このエボラクムに宮廷を開くようにお招きしておりました。不幸なことに、それはかないませんでしたが」
「誰のこと?」
「コンモドゥスさまです」
「ああ、あの筋肉バカね」
カラカラはたちまち不機嫌になり、玉座にどすんと座った。「僕は、あの人よりは多少はマシですよ」
レノスは後じさりで玉壇を降り、副帝に向かって敬礼の姿勢を取った。
この御方は残忍で狡猾で、人を翻弄することに長けている。レノスの本能が、彼に関わることは危険だと告げていた。けれども、もし戦争を嫌うお気持ちに偽りがないとすれば、望みはある。ならば、この故郷を戦乱の渦に巻き込まぬために、わたしができる唯一のことは。
「陛下」
レノスは胸に手を当てた。「わたしは女である身。すべてが解決すれば軍を退くつもりでいました。ですが、もし、あなたがこのブリタニアに争いではなく平和をもたらすと固く約束してくださるならば、わたしはもう一度、軍人としてあなたにお仕えいたしましょう」
「約束しますよ。もちろん」
カラカラは、不機嫌の仮面をさっと脱ぎ捨て、破顔した。「うれしいな。一個大隊の近衛兵団よりも、あなたは頼りになりそうだ」
「そのためには、大勢の部下が必要です」
レノスは慎重に尋ねた。「辺境部隊は今、どうなっていますか」
「ああ、解体して、その半数は下ゲルマニアのトライエクトゥム(後世のユトレヒト)に送りました」
「トライエクトゥム……ゲルマニア長城の西方の砦ですか」
「あの辺は副帝の僕の管轄なんだけど、ゲルマン人の侵入がひどくてね」
少年はうんざりした表情で続けた。「兵力補強のために入ってもらうことにしました」
「承知しました。さっそくわたしもトライエクトゥムに向かいます」
「というのは、表向きの話」
玉座に背をあずけると、カラカラはふんと鼻を鳴らした。「現地で将校や兵士に接触して、ひそかに探ってほしいのです。下部ゲルマニア州の総督や軍団長に謀反の意志がないかどうか」
レノスは目を見張った。
「それが終わったら、順繰りに東に移動してもらいます。もちろん、父が総督をしていたパンノニアにも。ヒスパニアは最後がいいかな。行く先々で、できるだけの情報を集め、僕の敵を減らし、味方を増やしてください」
「……わたしに密偵になれとおっしゃるのですか」
「そんな無粋な命令はしませんよ」
カラカラは頬杖をついて、含み笑った。「あくまでも遊撃部隊として活躍してほしい。文書にはあなたたちの痕跡は一切残しません。だって、存在しないはずの女の司令官に率いられる、存在しないはずの部隊なんですから」
手紙に書かれていたエボラクムの宿屋を探し当てたとき、すでにリュクスたちの姿はなかった。
「赤ちゃん連れのご夫婦なら、早朝あわただしく旅立たれましたよ。ええ、もう取るものも取りあえずって感じで。行き先? 聞く暇もありませんでしたよ。知り合いなら、残った荷物を引き取ってくれません?」
レウナに何かがあったのだ。
セヴァンは、軍団本部の門を叩いた。皇帝のしるしである紫の御旗が掲げられている。副帝がまだこのエボラクムにいる証拠だ。
「レノス・クレリウス・カルス司令官に会わせてくれ。大切な用件がある」
門兵が、胸壁の上から胡散くさげな目でセヴァンをじろじろ見た。
「ここにはいない」
「十日前に中に入ったはずだ。副帝の召喚を受けて」
「そんな者は、この本部の中には存在しない。帰れ」
存在しない。
そのことばを聞いたとき、セヴァンの目の縁は火照り、頭の中は真紅に染まった。
――俺はあの人とすれ違い続け、もう永遠に会えない。
セヴァンはアカシカのマントを脱ぎ、それを裏返すと、門兵の前で旗のように高々と掲げた。
「紫のマントを裏打ちにしてる男って、おまえ?」
眠そうに目をこすりながら、少年は寝所から出てきた。
「聞いたことがある。父がルグドゥヌムの戦場で敵の司令官付き奴隷の手に落ちたって。そいつは、父のいのちを救う代わりに紫のマントを持っていったって。それがおまえのことなのかな」
「そうだ」
「奴隷。蛮族の王。そしてカルス司令官の夫」
目をこするふりをしていた手を下ろすと、カラカラの漆黒の瞳は、近衛兵に両脇から抱えられて床にひれ伏している男をひたと見据えた。彼の視線はセヴァンの額に、うっすらと残っている刺青の痕に注がれた。
「妻に会わせてほしい」
「残念だね。今朝ここを旅立ったばかりだ。僕も明日ローマへ発つつもり」
「どこへ?」
「教えない。教えたら連れ戻してしまうつもりだろう。司令官には大切な任務を任せたばかりだから、それは困る」
「邪魔はしない。俺はただレウナに会いたいだけだ」
「それに」
床についたセヴァンの手を、カラカラはサンダルの先で踏みにじる。「おまえがいると、蛮族にローマ領内に攻め入る大義名分を与えてしまうからね。死んでいてくれたほうが、何かと都合がいいと思うよ」
少年は微笑みながら片手を持ち上げ、親指をぐいと下に向けた。近衛兵のひとりが剣をはらう音がした。
首筋にひやりと冷たいものが当てられたとき、セヴァンは顔を上げ、睨んだ。その瞳の蒼白い炎を見た副帝は、笑みをゆっくりと凍りつかせた。
「副帝陛下、あなたと取引がしたい」
レノスはドゥブリスの港で、もう二日間も足止めを食らっていた。
リュクスが何度も波止場に様子を見に行くが、そのたびに「海が荒れて船が出せないと言われた」と帰ってくる。窓から見る限り、海はおだやかに見えるのに。
そして、三日目の朝。
「いよいよ船が出るぞ、レノス」
リュクスが宿の部屋に飛び込んできた。猟犬のドライグは起き上がり、うれしそうに尻尾を振った。
すでに軍服に身を包んでいたレノスは、腕の中で寝てしまったルーンをそっとユニアに渡した。
「頼む」
「おまかせください」
「本当にいいのか。リュクス」
剣帯にグラディウス剣を差しながら、レノスは振り向く。「あてどのない旅になるぞ。そんな運命にきみたちを巻き込んでしまってよいものか」
「いいんだよ。遠慮するな」
二千人の部隊を率いて、砦から砦へ、属州から属州へと渡り歩き、国境の治安維持にあたる。気の遠くなりそうな難事業だ。しかも、その裏で、各地の陰謀の気配を探らなければならない。行く手にいったい何が待ち受けているのか、レノス自身にもわからなかった。
「これは、主が私たちにくださった召しなのだと思っています」
ユニアは、赤子の頬に張りついた金茶色の毛をそっとはずした。「危険は覚悟の上です。どうか、あなたのそばでルーンのお世話をさせてください」
レノスは赤いマントを羽織り、ブローチで留めた。百人隊長の兜をかぶり、あご紐を締め終えると、羽根飾りを揺らして頭を下げた。「ありがとう。どれだけきみたちに感謝しているか、ことばでは言い表せない」
「いいってことよ。さあ、船に乗るぞ」
部屋を出るとき、リュクスは妻にそっと目配せをした。
船着き場にはガレー船が停泊し、大勢の荷運びの奴隷が渡し板の上をせわしなく往復していた。荷は、属州ブリタニアからローマに運ばれる貢物だ。錫、羊毛、穀物、馬、猟犬、そして人間の奴隷。
ドライグを先頭に、レノスたちも乗客用の階段を登って乗船した。水夫たちが甲板をせわしなく行き来して、出帆の準備に勤しんでいる。
(あの人はいつも、船に乗るたびに顔色をなくしていた)
舟べりからゆらゆら揺れる海面を見下ろしていると、思いはまた懐かしい幸せな日々へと戻っていく。(わたしは、そのことをよく、からかいの種にしたものだ)
――ルーンはおまえと違ってきっと船には強い。毎日、ゆりかごで揺れても平気で寝ている。
――そうだ。暇ができたら、三人でフリスランに行かないか。
――フリスラン?
――メルヴィスと一緒に、洪水を止める手だてを考えたいのだ。ローマ式のコンクリートの堤防なら、きっとうまく行く。
――どうせ行くなら、ゲルマニアの森にも立ち寄ろう。ウォルムスたちは、まだ第七辺境部隊の分隊を名乗っているだろうか。
――クロベルトたちも元気だとよいが。何とか探し出して、彼らの馬車を借り切ってローマに行こう。
そうだ。わたしはフリスランに行かねばならぬ。ゲルマニアの森にも。ローマにも。
あのとき約束したように、ルーンと三人で世界を巡ろう。おまえは、いつもわたしと一緒にいるのだな。たとい、目には見えなくとも。
海に、水滴がひとつ落ちる。ブリタニアの海はおだやかにすべてを受け入れる。
(さようなら、故郷。わたしは、いつか必ずここに戻ってくる)
頭に布袋をかぶった奴隷が乗り込んだのを最後に、渡し板と階段は取り外された。
水夫たちの大声が響きわたり、錨が巻き上げられ、もやい綱が放り返される。その騒ぎに驚いたのか、ドライグがしきりに吠え始めた。
ガレー船は、岸からゆるゆると離れ始めた。
「レウナ。あのな」
気がつくと、神妙な顔つきでリュクスがレノスの前に立っていた。
「話しておくことがある」
「なんだ」
「驚くな」
「だから、なんだ」
「セヴァンは生きている」
レノスは一瞬の沈黙ののち、くっと笑った。「何を馬鹿なことを」
「嘘じゃない!」
冗談のつもりではないことは、リュクスのまっすぐな目を見ればわかった。
「大けがをして、一冬のあいだ森の中でかくまわれていた。俺はルエルからそのことを聞かされていたが、あんたには言えなかった。話せば、あんたはセヴァンを助けに戻ろうとするだろう。それが恐くて、言い出せなかった。すまない」
身体の芯がざわざわと泡立ち、膝が自分のものでなくなったようだ。
「セヴァンは怪我が癒えてすぐに、あんたを追いかけてきた。でも一足違いで俺たちはエボラクムに行ってしまっていた。セヴァンがエボラクムに着いたときは、もう俺たちはロンディニウムに旅立ったあとだった。あいつはエボラクムの軍団本部に乗り込んで行って、そこでわざと捕えられ、副帝陛下の前に引き出された」
ドライグがレノスのマントを口にくわえて、ぐいぐい引っ張った。なぜさっきからそんなに吠えている。何があったというのだ。
「第六軍団の軍団長の配下の兵士のひとりが、クリストゥス信者なんだ。秘密のうちに、スーラさまとの手紙のやりとりも全部頼んでいた。その兄弟が俺に早馬で知らせてきた。セヴァンが捕まって、こっちに護送されて来るって」
「セヴァンが……」
「だから俺は船が出ないと嘘をついて、あんたに内緒であいつの到着を待っていた……だって、ぎりぎりまで本当かどうかわからなかった。副帝陛下と取引をして無事だとか、普通はありえないだろ」
ドライグが引っ張る方向に目を向ける。最後に乗り込んだ奴隷、布袋で顔を隠された奴隷がこちらを見ていた。奴隷の印である鉄の腕輪と紐で両手を縛られ、裸足で、着ているのは粗末なトゥニカ一枚。布袋の穴から覗くハシバミ色の目を見たとたん、レノスの喉に、声よりも速く涙がせりあがってきた。
隣でユニアがわっと泣き出した。その腕の中に抱かれたルーンは、きょろきょろと不思議そうに皆の顔を見ている。
「セヴァンは副帝陛下に、取引を持ちかけたんだ。生きてあんたのもとに行かせてほしいと……あんたのそばで仕えさせてくれと……そのかわり、セヴァンは自分で自分を副帝陛下に売った……奴隷となることを選んだんだよ!」
第12章 終 (エピローグへ続きます)
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