2011年10月31日

ハロウィン小話(6)

なんとか六話まで来たところで、力尽き、寝てしまっていました。
うちのサイトには、どんだけ長編があるんだということを、あらためて思い知りました。
最終回は、絶対にハロウィンが似合わない、あの話です。
作者のお遊びにお付き合いくださって、ありがとうございました。この小話は、短編集として、後日再録する予定です。

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「はい、おみやげです」
 東京に出張していた久下が小太郎と藤次郎に差し出したのは、クッキーやキャラメルがいっぱい詰まったプラスティックのカボチャだった。
「うわあ。ハロウィンね」
 詩乃が受け取った紙袋には、頼んでいた冬物の子ども服が入っている。
「東京の繁華街はオレンジと黒のディスプレイ一色でした。ハロウィンも、この数年でずいぶん日本に浸透したみたいですね」
「はろいん?」
 小太郎がカボチャを抱きしめながら、聞き返した。
「もともとは、火を焚いたり、人々が仮装したりして、家々から悪霊を追い払おうとした祭りなのじゃ」
 物知りの草薙が、説明する。「やがて、子どもたちが悪霊やお化けに扮し、一軒ずつ訪ねて回ってはお菓子をねだるようになった。祭りというのは、楽しくなければ意味がないからのう」
「けれど、悪霊を追い払うなんて、うちじゃ日常茶飯事ですね」
「矢上村は毎日がハロウィンなのじゃ」
「まいにち、かぼちゃーっ」
 久下と草薙と小太郎の漫才のような会話に、統馬はあきれ果て、いろりばたから立ち上がった。
「牛の様子を見てくる」
 この季節の戸外は、すでにしんしんと冷え込んでいる。
 近所に住民はおらず、矢上家以外の明かりはまったくない。統馬は懐中電灯を使って牛小屋を見回り、異常のないことを確かめて、小屋を出た。
 敷地の中を牛の頭をした男が、男の顔をした牛を引いて横切った。
 反対側から歩いてくるのは、鳥の頭をした女。老女の顔をした火の玉も飛ぶ。
 一つ目のもの。一本足のもの。化け傘。片車輪。
 まさしく百鬼夜行だ。
「叢雲(むらくも)」
 統馬は手を伸ばし、愛用の神刀を呼び出そうとした。だが思い直して、だらりと腕を下げる。
「確か、はろうぃんと言ったな」
 と笑みを浮かべた。「今夜は見逃してやろう。明日からは、こうはいかぬぞ」
 妖怪たちは、きいきいとうれしげな声を上げて、矢上家の家の回りを輪になって踊り狂い始めた。
 家に戻ると、
「どうしたの」
 妻が、気配に気づいて出てきた。
「遅かったのね。外が騒がしいけど、なにかあった?」
「別に」
 統馬は、妻の肩を抱き寄せた。
「いつもと同じ夜だ」