お知らせ

2012年11月30日

サイト年末進行

アルファポリスの「青春小説大賞」が、もうすぐ終わります。
私は「プラットホーム」で参加していました。せっかくだから、景気づけに一話か二話くらい書こうと思っていたのに、全然書けませんでした。
にもかかわらず、投票してくださった方、本当にありがとうございました。

さて、「伯爵家の秘密」の番外編「伯爵夫人の涙」を突発的に集中連載しています。
さすがに、このお話は拍手が多くて、びっくりします。前半はかなり、やきもきする展開でしたが、すぐに、いつもの展開に戻りますので、ご安心ください。

さて、この連載が終わると、いよいよ「月の戦士」の連載を始めたいと思います。
11月末に連載開始と言っていたのに、計画倒れで申し訳ないです。今度こそ、なんとか年内連載だけでも、こぎつけられればよいのですが…。このごろ「有言不実行」ばかりで、自分に自信がないなあ。

12月3日からは、いよいよ「OPP(Other's Plot Plan)」が始まります。
参加者が互いにプロットを交換して、どれだけ違いが出るかを比べるという企画です。しめきりが近づくにつれ、会場掲示板やツイッターが阿鼻叫喚の巷と化しておりましたが、なんとか皆さん脱稿にこぎつけたようです。
12月3日、ぜひ会場にお越しください。BUTAPENNも、人様プロットと自プロットの二作で参加します。
自プロットがどう料理されているか、今からわくわくしております。

OPP会場はこちら

「オンライン文化祭2012 ―熱―」も、まだまだ続いています。
「余燼」への感想もたくさんいただきました。
ご感想への返信を書きましたので、どうぞ、「続き」をクリックしてください。

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2012年11月11日

熱がテーマ

11月3日から始まった「オンライン文化祭2012 ―熱―」(吉田和代さん主催)が、盛り上がっています。


BUTAPENNは、小説部門には「余燼」という短編で、メディアミックス部門にはビデオポエム「熱」で参加しています。

 → 「余燼」  
 → 「熱」

「余燼」というのは

(1)火事などのあとに燃え残った火。くすぶり。燃えさし。
(2)事件などが片付いたあとになお残る影響。
三省堂「大辞林 第二版」より

という意味でして、事件が解決したあとに、なお判然としないものが残るというミステリを書いてみたくて挑戦しました。結果はご覧のとおりですが、こういう企画では、挑戦することに意義があるのですよね。

「熱」は、NHKが無料で素材として提供しているビデオライブラリの中からいくつかお借りし、自作の詩と音楽素材を重ねて編集してみました。1分30秒あまりの短いものです。
作っていて、とても楽しかったです。

例年にまして、積極的に感想が飛び交う賑やかなお祭りになっています。ツイッターでは、早くも全評を達成した方もおられます。
→ ツイッターのまとめがあります。togetter 感想まとめ
どうぞ、みなさまも会場をお運びになり、すばらしい小説、イラスト、マンガなどの作品をご堪能ください。

BUTAPENNへ、メールで感想をくださった方々への返信を、載せておきます。
「続きから」をクリックしてください。

最後になりましたが、アルファポリスの「青春小説大賞」への投票してくださった方、ありがとうございました!

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2012年10月29日

読書バトンです

「風花亭」のkoharuさんから、「読書バトン」をいただきました。
本当は、もう9月にいただいていたのですがまったく気づかず、GBさんが「読書バトンリンク集」を作ってくださったというツイートを今日見て、ようやく発見しました。ありがとうございます。

「読書バトンリンク集」はこちら。
koharuさんはじめ、他の方々のバトンもそこから飛べます。

さて、自分の恥ずかしい読書歴をさらす「読書バトン」。偏っているなあ。しみじみと。
子どものころから、日本のお話よりも海外のお話に夢中になるほうでした。日本の小説はあまり読んでいないのですよ。やっとまんべんなく読むようになったのは大学以降です。


1:今読んでいる本は?
三浦しをん「まほろ駅前番外地」
実はこのごろ、ツイッターでつぶやかれている本を図書館で借りることが多いです。自分では絶対にたどりつかない本に出会えるので、とてもありがたいです。これも、そんな中の一冊。「まほろ駅前シリーズ」は、便利屋を営むワケあり男たちのコンビが出会う事件と、町の人たちの交流の様子がほのぼのと描かれていて、なかなかのおすすめです。

2:就学前にハマった本は?
これが難題でして。
自分が読んだ絵本と、子どもたちに読んでやった絵本をごっちゃになって記憶しています。
とりあえず、名作絵本と呼ばれるものは、だいたい読んだはずですが、その中でアンデルセンの「白鳥」は、「イラクサを編んでみたい!」と強烈に思った覚えがあるような。
印象が強かったのは、「ひゃくまいのきもの」。「ギャラクシー・シリーズ」でも登場させました。めでたしめでたしの絵本よりは、こういうほろ苦い終わり方のほうが、よく覚えているのはどうしてでしょう。

3:小学生の時にはまった本、作家は?
「少年少女世界文学全集」が家にあって、ひたすら読みました。あの全集を持っていたという方を、オンライン作家さんの中で見かけるのですが、あれはモノカキ養成装置か何かだったのでしょうか。
たくさんの小説でもとりわけ好きだったのが、フランス編の「十五少年漂流記」、ドイツ編の「ほらふき男爵の冒険」。
全集以外で愛読したのが、リンドグレーンの「やかまし村の子どもたち」と「名探偵カッレくん」シリーズ。しかし、何と言っても、「アルセーヌ・ルパン」は、一番のお気に入りでした。

4:中学生でハマった本、作家は?
ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」シリーズ。「トムは真夜中の庭で」。しかし一番強烈だったのは、エラリー・クイーンの「Yの悲劇」をはじめとするドルリー・レーンシリーズ。この後は、一生ミステリしか読まないと思っていました。

5:高校生でハマった本、作家は?
高校の友人が貸してくれた一冊のSFが人生を変えました。はじめは「ふふん、SFなんて」と鼻で笑っていたのに、大ハマリしてしまった、ラインスターの「第五惑星から来た4人」。それから、フレドリック・ブラウン、ハインラインを経て、生涯のモノカキの目標、レイ・ブラッドベリに出会いました。もう、この後は、一生SFしか読まないと思っていました(笑)。

6:大学生以上でハマった本、作家は?
実は大学時代の記憶があまりないのですが、けっこう心理学の本を好んで読んでいた気がします。あとはアメリカ文学専攻だったので、サリンジャーやホーソーンや、マーク・トウェインなど、専攻関係の本ですね。卒論はポーでした。ファンタジーを読むようになったのは、このころでしょうか。とにかく乱読でした。

7:現在オススメの本、作家
ローズマリー・サトクリフに出会ったのは大人になってからですが、ブラッドベリに次いで、モノカキとしての生涯の目標ができました。今一番ハマっている作家は、佐藤亜紀です。「天使」は今年一番の大当たりでした。そのほかのお勧めは、佐藤賢一、西澤保彦、東野圭吾、藤沢周平、光原百合などなど。

8:好きなジャンル3つ
ミステリ、SF、ファンタジーということで。

9:読んでいて大笑いしてしまった本は?
大笑いですか…。さくらももこのエッセイくらいでしょうか。マンガならたくさんあるのですが。

10:読んでいて泣いてしまった本は?
実は、かなり涙腺が頑固です。本を読んでも、じわりと来ることはあっても、泣くまではいかないかな。聖書を読んで泣いたことはあります。

11:読んでいて腹が立った本は?
これは、記憶に新しいのですが、村山由佳の「すべての雲は銀の...」。そのあたりの事情は、短編「舫い舟」のあとがきにも詳しく書いたのですが、兄に恋人を盗られ、傷ついた心を抱えている弟が主人公。罪悪感のあまり体調を崩して入院してしまった元恋人の見舞いに来てくれと頼みに来る兄。この場面は、あまりにも自分勝手で、ものすごく腹が立ちました。
まあ、でもこの怒りが短編一本になったのですから、よかったのかもしれません。

12:読んでいて気持ち悪くなった本は?
スプラッタやグロい本は徹底的に避けているのですが、最近は平谷美樹の「ヴァンパイア―真紅の鏡像」という小説が、「バイオハザード」系で、やや気持ち悪かったです。飽くまで資料本として読んだので、よいのですが。

13:本の中で出てきたもので、コレ食べたい!と思ったものは?
「ちびくろサンボ」のパンケーキとか「ぐりとぐら」のカステラとかはもちろんですが。
私が食べたいと思った第一号は、確か「ソロモンの洞窟」に出てきた(と思う)生肉。ひどく飢えていた主人公たちが、狩りをした獲物を雪の中に埋めて、ちょっと冷やしてからかぶりついた。美味しかっただろうなあ(おい)。

14:本の中でここ行きたい!と思った場所は?
「やかまし村」。「ゲド戦記」の闇の神殿。「ツバメ号とアマゾン号」に出てくる湖水地方。

15:本の中で好きな登場人物
惚れっぽいほうなので、たいていの小説の男主人公には恋ができます。「カッレくん」にも恋していたくらいです。

16:続編を出して欲しい本
佐藤亜紀「天使」「雲雀」に出てくるジェルジュの後日談あるいは番外編が読みたい。西澤保彦の「タック」シリーズのタックとタカチはどうなったか、とか(結局、自分が読んでいないだけかもしれませんが)。なお「まほろ町」はもうすぐ三冊目が出るそうです。

17:内容は別にして、この題名はうまいことつけたなとおもうもの
司馬遼太郎の「竜馬が行く」や「坂の上の雲」の題名はさすがだと思う。
タイトル翻訳の妙というべきものは、オリバー・サックスの「レナードの朝」(原題:Awakening)。
ちょっと変わったところでは、高校の図書館で「殺す側の論理」というタイトルの本を見つけて、かっこいいノワール小説だと思って喜び勇んで借りて、がっかりしたことがありました(笑)。

18:近年の出版業界に一言
今年あたりは、いよいよ紙から電子書籍へとシフトする分岐点なのかもしれません。絶版を減らすという点は期待できるのですが、一冊も手に取られることなく埋もれていく本が圧倒的に増える恐れもありそう。双方の利点を生かす戦略を立ててほしい。

19:オススメの書店
ここいらだと、紀伊国屋書店、ジュンク堂あたりでしょうか。

20:あの人は何を読むんだろうという人にバトン
今のところ、リンクを見ると女性ばかりなので、ぜひ男性にバトンを拾ってほしいです。

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2012年10月24日

40日ぶりの更新です

本日、「魔王ゼファー」の短編を更新しましたが、前回の更新が9月13日だということで、40日あまりのご無沙汰となってしまいました。
サイトをほっぽりだして、本当にすみません。ひそかに心配されていた方もいるようで、近況報告くらいしておけばよかったです。

とは言え、サイト放置の理由が自分でもよくわからないのです。数年前なら、どんなに忙しくても更新は欠かさなかったと思うのですが、年ごとに、心身ともに頑張りが利かなくなってきたのかもしれませんね。

いまさら言い訳を連ねてもしょうがないのですが、まず9月に入ってから体調不良がありました。
残暑の中、更年期のホットフラッシュが一気に来て、とうとう産婦人科へ行って、ホルモン補充療法を始めました。それが効いたのか、それとも涼しくなったせいか、今はだいぶマシです。

あとは実家の父が、9月の半ばの夜中に緊急入院して、十日ほど入院していました。原因は認知症特有の誤嚥性肺炎。「プラットホーム」でミチコさんが患った、あの病気です。
父の誤嚥性肺炎はこれで二度目で、そのときの体験からあの話を書いたわけですが、さすがにミチコさんが亡くなった結末を書いてしまったことを、これほど後悔したことはありません。
幸い、健康を取り戻して退院できたのですが、また誤嚥の危険があるということで、通常の食事ではなく、レトルトのとろみ食や刻み食を食べています。今は、レトルトや冷凍の介護用メニューも豊富に出回っていて(それこそ、ヴァルの相模弁当でも開発中ですし。笑)、バラエティに富んでいて、しかも美味しくて、助かります。

「オンライン文化祭」に参加する二作と「OPP」に提出する二作品もそれぞれ脱稿していて、あとは開催まで推敲を重ねる日々になります。

あー。やっぱり、言い訳になってしまった。でも、ようやく、自サイトの作品に取り掛かる心の余裕ができてきました。
これからは、通常営業に戻れると思いますので、どうぞまた、ちょくちょく覗いてやってください。
11月になると、「オンライン文化祭」、12月からは「OPP」で、また賑やかな日々が始まると思います。

あ、それから、アルファポリスの「青春小説大賞」に「プラットホーム」で参加することにしました。自分へのカツを入れるつもりで行ってきます。

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2012年9月26日

第31回阪神女性の集い

キリスト教会、特にプロテスタントと言えば、漠然と「多くの教派に分かれて争っている」というイメージをお持ちの方も多いと思います。
実際に、多くの教派に分かれてもいるのですが、それは争った結果ではなく、むしろ自由さのゆえであると感じます。つまり、人間にも、外向的内向的など多くの性格があるように、教会にも多様性があるということです。

幕末以降、日本に入ってきたキリスト教の宣教師たちは、英国、米国などそれぞれの国に属する団体から遣わされていたために、礼拝のスタイルには、民族の性格や歴史が色濃く表れました。
第二次世界大戦のときは、無理やりひとつに統合され、治安維持法のもと国家の弾圧を受けましたが、戦後になると、ふたたびいくつもの団体に分かれました。
しかし、分かれているからと言って互いに争っているわけではなく、ときには協力し、交流をもちます。

その典型的な例が、今年で31回を数える「阪神女性の集い」です。阪神間六市の、50近いプロテスタント教会が分担協力して、毎年十月に、誰でも参加できる音楽と講演の集会を開いています。

これまでは、各地から有名な講師を招くことが多かったのですが、今年は、48年のあいだ西宮の地で伝道してこられた下條末紀子先生(活けるキリスト一麦西宮教会 主任牧師)を講師として迎えます。
地元出身の講師ということで、準備の集まりにも熱がこもります。

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案内のチラシです。画像は、一麦教会のホームページからお借りしました。

BUTAPENNは、今年も聖歌隊として参加します。お近くの方、よかったら覗いてみてください。



第31回阪神女性の集い
日時:10月4日(木) 午前10:15から12:00まで
会場: 芦屋市民センター・ルナホール
  阪急芦屋川駅下車南へ徒歩約7分、JR芦屋駅下車西へ徒歩約6分、阪神芦屋駅下車北へ徒歩約7分

講師: 下條末紀子先生(活けるキリスト一麦西宮教会 主任牧師)
音楽ゲスト: デュオ・フィリア(マリンバアンサンブル)
主催: 阪神協力キリスト教会
手話通訳、託児もあります。入場無料(席上自由献金あり)

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2012年9月21日

「本のまくら」マイバージョン

少し前に、紀伊国屋書店の新宿本店で「ほんのまくら・書き出しで選ぶ100冊」フェア、別名「本の闇鍋状態」と題した企画が催されたことをご記憶の方も多いと思います。

本に、「まくら」(=出だしの文章)のみをプリントしたオリジナルカバーをかけ、本の著者もタイトルも分からず、客はカバーに印刷された文章だけをたよりに購入するという試みでした。
さすがに著名な作品ぞろいだけあって、ぱっとわかるものもあれば、出だしだけではわからないよというものも多いです。

ツイッターでも、ひところその話題で持ちきりでした。
いまさらの感はありますが、遅ればせながら、わがサイトの長編小説の「まくら」を集めてみました。

これで、何の小説かすべて当てられた方は、ABOUNDING GRACE通。と言っても、人生で何も得なことはないのですが。


それでは、いきます。


★ 春は引越しの季節。

★ 何と表現すればいいのだろう。 彼を見たときの私の驚きを。

★「地球にようこそ。こちら、クシロ航宙ポート管制ステーション。白鳥管制官です」

★ それは、なんとも奇妙な三人連れだった。

★ うらぶれた街のうらぶれた路地で、俺は死んだ。

★ どれくらい逃げ続けただろうか。

★ 大陸を貫くラトゥール河に面した交易の町ポルタンスは、水路の町として知られている。

★ さびしい……。 いとしい……。 にくい……。

★ 冬の青空にむかって伸びている巨大なノズルの先が、もわりと透明な湯気を吐き出している。

★「たとえ何千年、何万年かかったとて、必ずおまえに復讐してやる。精霊の女王」

★「今のところ、紹介できるのは、これだけかな」


        答えは、「続き」をクリックしてください。

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2012年9月 6日

CLOSE TO YOU第4章あとがき

「夏休み企画」と題しておきながら、すっかり9月にずれこんでしまいましたが(あ、でも、大学生はまだ休みだよね)、やっとどうにか「CLOSE TO YOU」の第4章が完結しました。
まず、すばらしいお題を提供してくださった、ひょーたんさんにお礼を申し上げます。
数年前に、このお題を三里さんのブログで最初に見たとき、都市に関するお題がいくつかあったので、ちょうど考えていた彩音のニューヨーク滞在編に使いたいなと思っていたのですが、なかなか果たせずにいました。

「彩音がニューヨークで新作の絵に熱中するあまり、琴音さんのことを忘れてしまう」という大筋は、そのときから決まっていたのですが、そのドキドキ感を表わすようなお題もあって、それをどうストーリーにはめこむか。ジグゾーパズルのような楽しさがありました。

版画に関しては、西宮にある版画家・笹倉鉄平の美術館に二度ほど通いました。A.P.や、P.Pの意味についても館員の方に親切に教えていただきました。
すっかりシルクスクリーンものを透明な美しさに惚れ込んでしまい、一枚買いたいなと思っているところです。私にとってはかなり高い買い物になるので、二年計画くらいでがんばります。

アンジーとのキスシーンの回では、彩音に轟々たる非難をいただきました(笑)。
みなさん、やはり浮気がお嫌いなのだなと思いました。もちろん私もですが。
実は、わがサイトの小説には、ヒーローがヒロイン以外の女性に言い寄られる場面が、とても多いのです。一作品に一回は出てくるのではないでしょうか。
でも、言い寄られて多少は心が揺れるものの、きっぱりと拒否する。時には相手への気遣いも忘れない。これが私的には、萌えポイントなのですね。

恋をしても結婚しても、異性との接触はあります。まったく誘惑がないというのは現実的なことではありません。魅力的な男女である限り、誘惑、互いへの疑惑や嫉妬とは、決して無縁ではいられないでしょう。
そういう葛藤にどう対処するかに、人間の本性が試されるのだと思います。

彩音も、まだ二十歳になったばかり。今回の過ちは赦していただいて、これからに期待してくださいますように。いつか、また第五章でお会いできればうれしいです。

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暁の真ん中で

 部屋に入ったとたん、なつかしい匂いに包まれた。
 甘やかな、琴音さんの匂い。俺はようやく、自分の居場所に帰ってきたんだ。
「疲れたー。もう飛行機なんか、二度と乗らねえ」
「はいはい。とりあえず、ご飯にしようか。受賞祝いのご馳走よ」
 台所に立とうとする彼女を、俺は引き戻して、背中から抱きしめた。
「ただいま」
 記憶にあるより細くて小さな体に愕然とする。琴音さんは、この一カ月でこれだけ痩せたんだ。
 電話の向こうの泣きそうな声を思い出す。俺はちゃんとその声を聞いたはずなのに、頭の隅に追いやった。絵に夢中になって、大事なことを忘れていた。
 一生離れないって約束したのに、俺は約束をやぶった。琴音さんがいなければ生きていけないのは、俺のほうなのに。
「ごめん」
「彩音。泣いてるの?」
「ひとりぼっちにして、ごめん」
 彼女の良い香りのする髪にキスした。存在を確かめるように、うなじを幾度もたどった。
「いいの、ちゃんと帰ってきてくれたから。それに」
 琴音さんは背中をのけぞらせ、両手を伸ばして、俺の髪をくしゃくしゃに乱した。
「ふたりでいるときは、全然回りを見ようとしていなかったのだと思う。面倒なことは全部うやむやにして放っておいて、そのツケが、いっぺんに押し寄せてきた感じの一ヶ月だった。でも、ひとりで問題に立ち向かうために、私には必要な時間だったの」
 彼女は魚みたいに体をするりとひるがえし、俺をまっすぐに見上げて毅然と、女王のようにほほえんだ。
「彩音。おかえりなさい」

 俺たちはそのまま体を重ね、琴音さんの用意したご馳走を腹いっぱい食べて、それでも満たされない飢えを満たすために、もう一度体を重ねた。
 琴音さんの寝物語は、何度も俺を崖の底へと突き落とした。
 たとえば、智哉に電車の中で偶然会って、昔話がはずんだこととか。ご両親と和解して、久しぶりに実家に帰った席で、結婚は当分しないと宣言したこととか。
 俺はまだまだ、智哉の幻影に勝てない。結婚にふさわしい男じゃない。暗黙のうちに、そう宣言されているようだった。
 琴音さんの心と体を完璧に自分のものにするまで、俺はあとどれだけ崖をよじのぼり続けることになるんだろう。

 夜が明けるころ、旅の荷物を開けた。
「ニューヨークって、何もないところなんだ。踏切もないし、飛行船がビルのてっぺんに引っかかって、ときどき落ちてくるし」
 俺は持ち帰った版画を取り出し、体を椅子がわりにして、彼女を座らせた。
「でも、この朝焼けを見たとき、これだけは絶対に琴音さんに見せたいと思った」
「きれい」
 と琴音さんは、うっとりとため息をつきながら丹念に見てくれる。「自分で見るよりも、彩音の目を通して見たほうが、きっと何倍もすてきよ」
 ああ。俺のこの絵は、やっと今ここで完成した。
「いつか、本物のセントラルパークを、いっしょに見に行きたいな」
「さあ、いつのことかしら」
「いつだっていい。俺たちは一生いっしょなんだから」
 琴音さんは、俺の腕の中にゆったりと身を預けた。「うん、一生いっしょだね」

 俺は彼女の手の甲に口づけてから、版画にサインするように、指文字を書いた。


            『Zion/K   1/1』


 「CLOSE TO YOU 第4章」
 お題使用。「瓢箪堂のお題倉庫」http://maruta.be/keren/3164

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2012年9月 5日

第5回ファンタジー大賞ご紹介

夏休み企画があと一回で終わるというときに、ぶったぎって申し訳ないのですが、ここで、9月1日から始まった「アルファポリス第5回ファンタジー大賞」の記事をはさみます。
BUTAPENNは今回参加していないのですが、お知り合いの方がたくさん参加していらっしゃるので、せめて、ここでご紹介することで応援させていただこうと思います。

相互リンクの方はもちろんですが、過去の企画でご一緒しただけ、ツイッターでフォローさせていただいているだけという片思いの方も含みます。もちろんペンフェスに参加してくださった方も、せいいっぱい応援したいと思います。

ページ移動するたびに順位が入れ替わるので、かなり見落としもあるかと思いますが、気が付いたら追加していきます。
なお、ご紹介は、お名前のアイウエオ順です。タイトルからリンクしています。


加上鈴子さん
海女神 ムイ・ヤハィタ」 ファンタジー長編 連載中 
【内容】海(ムイ)には人間を脅かす、化け物が棲んでいる。王子の願いは化け物の殲滅、海の平和である。が。

勇者で候」 ファンタジー長編 完結
【内容】異世界の、しかもマッチョな爺に取りついちゃったデブオタニート珍道中、トホホな完結でございます。おまけ話いっこ追加。


鹿の子さん
ブライド」 ファンタジー短編 連載中 
【内容】天使のティムは、とある事情から悪魔のバートンにお金を借りた。そしてその返済のために、自らも高利貸しを生業とすることに。


GBさん
天穹に詩う」 ファンタジー短編 完結 
【内容】癒やし手見習いの娘が出会ったのは、落ちこぼれの魔術師だった。

夜風は囁く」 ファンタジー短編 完結
【内容】ひょんな事から礼拝堂の屋根に登る羽目になった警備隊員が、そこで見たものは。


小高まあなさん
調律師」 ファンタジー長編 完結 
【内容】人外と人の間を調律する“調律師”沙耶に助けられ、一目惚れした龍一。でも沙耶には龍が憑いていて封じるため記憶が必要となる。

ひとでなしの二人組」 ファンタジー長編 連載中
【内容】神山隆二が拾ったのは、自称記憶喪失の幽霊少女だった。そして、その幽霊には秘密があって。現代オカルトファンタジー。


Julesさん
Paradise FOUND」 ファンタジー長編 連載中 
【内容】王に命を捧げると予言された少女と、冷徹なその王。決して相容れるはずのない二人の不器用な恋の行方。

太陽と月の終わらない恋の歌」 ファンタジー長編 連載中
【内容】夜を駆ける謎の義賊、『黒の怪盗』と、彼に拾われた少女マノンの繰り広げる、年の差プラトニック純愛活劇。


招夏さん
魔緑幻話―Maryoku Genwa―」 SF短編 完結 R15 
【内容】突然勃発した植物の爆発的増殖は、首都圏を中心として同心円状に拡大していった。街を呑みこむ緑の津波。一体何が起こったのか…


スイさん
蒼穹、その果て」 ファンタジー長編 連載中 
【内容】領主一族の少年橘雪瀬は手負いの少女を拾う。無表情・無知・拙い言葉の少女は逃げ出してきた帝の夜伽であった。和風恋愛FT。

ユグドラシル」 ファンタジー長編 連載中
【内容】「あなたは私のものなのよ」名無しの青年と、彼を拾った勝気王女ルノの織り成す西洋主従FT


鈴鹿美雪さん
猫耳巫女はオオカミ男とお受験します」 ファンタジー長編 連載中 
【内容】現代で高校生をやっている猫神社の跡取り、猫又少女の曜子と、絶滅危惧種の人狼こと仁さんのお受験の日々


芹沢優希さん
封印の守護皇家・1 真実は全て闇の中」 ファンタジー長編 完結 R15
【内容】神の血を引くアウストレイラ皇国の新皇帝アレクサーはヴィゼット公国のフィアナ公女に求婚。だがそれは謀反のきっかけになった

封印の守護皇家・2 闇に生きる者たち」 ファンタジー長編 連載中 R15
【内容】帝の命を狙う動きあり──帝を影から守護する御所忍びと、他国の忍びが人知れず戦いを繰り広げる。

失われた記憶」 SF短編 完結
【内容】その少年は空から突然現れ海に落ち記憶を失った。少年に接触する謎の美少女は、驚くべき事実を告げた─。5/12 最終話 更新


茶林小一さん
バブルダイバー」 SF長編 完結 
【内容】ロボット海洋SF冒険譚。海に沈んだ世界。残された者たちは生きるため、着繰身(シェラフ)と呼ばれる潜行艇を身につけ深海へ潜る。


tomoyaさん
二輿物語」 ファンタジー長編 連載中 
【内容】「おまえたちは俺が怖いのか」悪魔と呼ばれる王子と政略結婚することになった世間知らずの姫様。最初は彼を拒絶しましたが……


ぷんにゃごさん
ビースト・ラヴァー 野人の恋人」 SF長編 連載中 R18  
【内容】近未来の異世界。見た目はやや派手だけど真面目な研究者の娘と野人との、異種間の恋と冒険! SF要素は薄いです。


ページのPさん
これが出会いのチャンスですか?」 ファンタジー短編 完結 
【内容】彼氏いない歴=年齢の20代女子。占い師のお告げに従ってみたらとんでもないことに。見料返せ。

護符」 ファンタジー短編 完結 R18
【内容】【R18】女が護符に込めた願いとは。異類婚譚風の薄暗いファンタジーです。原稿用紙19枚で完結。


モギイさん
モギイ童話集」 ファンタジー短編 連載中 
【内容】『童話』と呼べるほど子供向きではありませんが、民話をモチーフにしたお話や、作者が気ままに創作したお話を集めてみました。


由紀さん
月の白さを知りてまどろむ」 ファンタジー長編 連載中 
【内容】神話を継承する享楽街。妓館の主でもある巫女と外から来た剣士の出くわす事件譚。和洋異能ファンタジー。


吉田和代さん
バディ・システム」 SF長編 連載中 
【内容】ブライアンの計略で護衛任務を引き受けざるを得なくなったエリニュスたち。その裏で暗躍するテロリストたちは……

ノルグ村の吸血鬼」 ファンタジー長編 連載中 
【内容】お人よしなアーレンの前に現れたのは武闘執行官のマイア。彼女の目に映るのはお人よしな吸血鬼だった!?

ガンダールヴ」 ファンタジー長編 完結
【内容】永遠の新人と揶揄される闘剣士のクレイは、最後の望みをかけて「魔法を使わない魔法使い」に会いに行くが……

咎人は腕を広げ」  ファンタジー長編 完結
【内容】奇跡の魔術師の弟子であるリンデ。しかし奇跡の魔術師は、すべてを裏切る行動に出る。残された弟子たちは師を討つ覚悟をする。

星宿照らす道なれど」 ファンタジー長編 完結
【内容】維摩皇国にやって来た吟遊詩人のタツキ。傭兵集団炎儀団の蓮華たちとタツキは再会を果たす中、意外な人間を匿うことに!?

ロード・オブ・ヘブン」 SF短編 完結
【内容】イヴァンが国境警備隊として初めて配属された場所は国道326号線国境検閲所。通称ロード・オブ・ヘブンと呼ばれる場所だった。

幻影綺譚1 光神子」 ファンタジー
【内容】素質だけはあるのに、おちこぼれ状態の光神子候補の陽雲は、最後の望みを託して降臨の儀に挑もうとするが……

ウィズ・ロボット」 SF長編 完結
【内容】手先の器用なフェイが、人間の女の子そっくりのアンドロイドを拾った日から、フェイの周りでは様々な事が起こり始めて……


綿子さん
宮廷舞踏会 -芙蓉-」 ファンタジー長編 完結 
【内容】東方王宮総取締役として東方王宮に入宮した芙蓉。逸材と名高い王宮人達に悪戦苦闘しながら、彼女は宮廷で独自の地位を築いていく

MAGNA MATER (マグナ・マター)」 ファンタジー長編 完結
【内容】モンスターが蔓延る〈バイオ〉と、守護者に護られた〈ノウア〉二つの星の狭間で、彼女達の覚悟の真価は問われる




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2012年9月 4日

増殖する愛

『琴音さん、今ニューヨークの空港に着いたところ。愛してる』
『今、成田に着いた。すぐ電車に乗るから、あと一時間。愛してる』
『機内食、ゲロまずかった。琴音さんの作ったご飯が死ぬほど食べたい。愛してる』
「愛してるの大安売りだね。版画だって、印刷枚数が多いと、それだけ値打ちが下がるんでしょう?」
『限定枚数一枚、絶対にそれ以外は刷らないから』
「あ、そうそう。新作の版画を全部向こうの工房に譲ったって聞いて、若林さん悲鳴あげてたわよ。工房には、別刷りを渡す契約になってるんだって」
『あー。そういえば、P.P.(プリンターズプルーフ)っていうのにサインした』
「すぐにニューヨークに飛んで、取り戻してくるって。彩音、そういうの、もっと慎重にならなきゃダメだよ」
『どうでもいい。琴音さんさえ、そばにいてくれれば』
「調子いいんだから」
『愛してる、愛してる、琴音さん、愛してるーっ!』
「ちょっと待って……そこ、どこ?」
『東京駅のど真ん中』


 「CLOSE TO YOU 第4章」
 お題使用。「瓢箪堂のお題倉庫」http://maruta.be/keren/3164

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