絵板合作 『南遊記ペンギン編』
その2
文字ゲリラ+絵師

(これは絵描き掲示板に絵師の皆さんが独自のアピールを持って書いて下さった
絵の数々に対し、別のイマジネーションで絵のアップから数時間以内に
即興物語を付けたものです。絵は絵として、文は文としてお楽しみ下さい)



篁頼征 ●●● 渡世ぺん銀ちゃん
「あっしにはかかわりのねえことでござんす」といいつつ背中にペットボトル


 銀丸は耳寄りな話を聞いた。それは、三蔵ならぬ三匹の子豚が『ししょう』と共に、彼の本拠の近くを通るという話だ。そこで彼は思案した・・・
 ふふふ、御馳走が、食われる為にやって来るとはな。ご本尊の『ししょう』はもちろんの事、弟子3匹も御馳走と聞くぞ。その中の親玉は、食えばサド師になれるそうだし、二番目は、食えばネタ師になれるそうだし、一番大人しい奴だって、食えばCGが上手くなるって話だ。こんな御馳走が向かうからやって来るんだから、これを逃しては一生の恥、この網笠にかけて捕まえねばならぬ。
 もちろん、日本からわざわざやって来たぐらいだから、奴らだって腕が立つのだろう。だが、それでもあっしの宝貝には敵うまい。なんと、太上老君の新発明、ペット筒だからな。例の瓢箪は孫悟空が中に入って汚れてしまったので、廃棄処分になったそうだが、そこは太上老君、代わりに新しい奴を千年かけて練り上げたというんだから、これぞ天上界の至宝だ。この宝貝は驚くなかれ、透明なのだ。これなら、孫悟空も得意の『身代わり』手品を使えまいて。
 宝貝が変われば主役だって代替わりするもの。銀角の仇はこの銀丸が討ってやるよ。おっと、思案しているうちに連中がやってきた。さて、どうやって3匹の子豚を捕まえようかな・・・先ず、定石通り、ネタ師を狙うか。

 ちなみに、この銀丸、太上老君の弟子が下界に降りて妖怪になった所までは西遊記と同じだが、金角銀角よりも遥かに食い道楽である。というのも、天上界に上がるまでは、銀二郎という名の、大食い早食い道の求道者だったからだ。天上界に登って『食仙』銀二郎と呼ばれるようになった。大食い故に、丹を煎る竃仕事に熱心で、丹を練る助手として太上老君に抜擢された。そうして、彼はペット筒の秘密を知ったのだ。あとは運命に翻弄させるままに下界に下りて・・・、


夜野 月 ●●● 七夕

 銀丸は、金角銀角の失敗を繰り返すまいぞと、さっそく西遊記を研究した。それによれば、宝貝を使うのは二の次で、先ずは八戒を捕まえ、それから、計略で親分を山の下敷きにして、そのあとに瓢箪に押し込むという筋書きになっている。この構想自体に問題点が無いと判断した銀丸は、早速、八戒ならぬ斑猫のアザラシを捕まえるべく、罠を張った。

 一方のbutapennペンギン、斑猫アザラシ、とっと鼠の3人、地湧夫人の段での配役も一段落ついて、雪山の方を見ると、なぜかそこに
『平頂山』
 という立て札が建っている。それを見てペンギンの孫悟空が未配役の狐に尋ねた。
「ちょっとちょっと、鼠が出て来るのは第82回陥空山よ。平頂山って言ったら金角銀角じゃないの。とっとさんに金角銀角のような豪奢な役をやらせるつもり?」
『いや、この件に関しては僕は知りませんよ。でも、子煩悩丸出しのとっとさんが、太上老君の童子ってのは合いませんねえ。それに金角銀角ってとっとさんや女将さんに比べればぜんぜんサドじゃないし・・・』
 ラビン髭とbutapennの合意する所によれば、とっとの役はサドかマゾか平凡のどれかしか有り得ないらしい。
 となると、悟浄か三蔵って事になるが、この界隈において、三蔵並みに、突然フリーズしたり、我が儘をいったり、禁箍呪なみの突然の頭痛を与えたりする事が出来る
『高価なシショウ』
 といえば、某ms.社の支障品に決まっていて、とっと鼠の出る幕ではない。となると、残りは悟浄。実は河童の役は、茶林研究所長の某タコ氏にとっておきたかったのだが、寝坊なのか忙しいのか、まだ現れておらず、悟浄の役はとっとがやる事となった。うーむ、語り手として、こんなに残念な事はない。

 配役が再度決まった所で、早速斑猫アザラシの八戒が好奇心を抑えきれずに雪山に向かった。決してペンギンの悟空に尻を蹴られた為でないところが西遊記との違いだが、この際そんな事はどうでも良く、ネタアザラシは小山を向うに早速素晴らしいものを見つけた。なんと、筋肉男のマッチョ!
「キャアー」
 一体、斑猫アザラシの好物が、第一にネタ、第二に筋肉で、普通なら冒頭に出て来るべき美男子が第三位以下になっている事は、彼女のサイトを知る者には常識であろう。なんせヒロインすらをも筋肉娘にするネタ師の鏡だ。とすれは、ここ、雪の上で斑猫アザラシを釣るのに最適のエサは雪男以外に有りまい。というのも、雪男は、第一にマッチョであり、第二にネタそのものだからだ。そう看破した銀丸は、自ら雪男の着ぐるみを着てアザラシの八戒の前に現れたのだった。
「サインちょうだいー」
 といいつつ追いかけたアザラシの八戒、そのまま、すとんと落とし穴に落ちのは誰もが想像出来る結末だった。かくて、八戒はお決まりどおり、いの一番に捕まった。


夜野 月 ●●● and so on

 残されたペンギンの孫悟空と鼠の悟浄が、そろそろと歩いて行くと、今度は銀丸が自らやってきた。それはそれは美しい乙女の姿で。まるで、地湧夫人の段と同じ登場である。
 えっ? 銀丸は男の筈だって?
 とんでもない。銀角は男かも知れないなし、銀二郎も雄かも知れないが、妖怪になって地上に降りた銀丸は絶世の美女かもしれないのだ。真相、これ、すべて闇。そもそも、西遊記には美人でありながら孫悟空といい勝負のかっこいい悪役がぞろぞろ出て来るではないか。もちろん今日は七夕なので、若干の変装をしているかも知れないが、その程度の誇大広告はイラストには良くある事なので、読者は単純にイラストを楽しめばよろしい!
 もっとも、美人とは言っても、そこは道士。しかも、もとの銀二郎はペンギンだから、この温暖化のご時世、服を着てクーラーを付けると言う馬鹿な事をする筈も無く、しょっちゅう平気で裸になるのが、玉に傷、じゃなかった、偉い!.

 その半裸美人が一行に
『もし、旅のお方、足を無くしてしまったので、近くの海までおぶって行って下さいませんでしょうか』
 と声を掛けた。海に行きたがるは人魚という謎なのかも知れないが、話の筋には関係ない事で、要は誰かがおぶらなければならない。
 声をかけられてとっとが振り向くと、セミヌードの上半身が目に入った。鼠といえども、いや、悟浄といえともそこは男だから、ぼうーっとなっるのは当たり前で・・・いや、待て、これが、御茶林研究所長の某タコ氏であったら、嬉々としておぶって、1000文字の超短編を書くに違いない。だが、某タコ氏は未だに登場していないので・・・茶林さーん、貴方の大好きな父ですよー!
 ともかく、この半裸美人に、とっと鼠の悟浄は、ぼおっとして、しばらく「養女に欲しい」とか訳の分からない事を言った挙げ句、やがて、正気をとりもどしたのか、
「いやいや、悟浄ならちゃんと目を背ける筈だ」
といいつつ顔を背けた。見事、悟浄の役に徹しているが、それゆえ、とても、美人に化けた銀丸をおぶる余裕は無い。もっとも、西遊記では孫悟空がおぶる事になっているから、ここでは悟浄はどうでも良いのだ。
 一方のbutapennのペンギンは、美人であるかどうかよりも、贅肉の全くないプロポーションに方に目が行った。そして、
「これはダイエット法を聞き出さなければ」
 と考えて、銀丸の体脂肪率を測るべく、さっと背を出した。
「どうぞ、私におぶりなさいな」
 軽々と持ち上げる・・・つもりが驚いた。
「重ーい!」
 それも当然で、西遊記にもあるように、銀丸は「山移し法」という体重を重くする技を持ってるのだ・・・って事は全然なく、単に銀丸が重いだけの事だったようだ。体脂肪率、もしかしたらマイナスかな?
 困ったのはペンギンの孫悟空、重くて重くて汗がどんどん出て来て、体がどんどんほてってきた。そこで、放熱代わりに羽をバタバタさせたら・・・

 いったい、此処は雪山の横、そこで熱風を放射したら次に来るのは雪崩に決まっている。ゴーという轟音とともに雪崩がbutapennのペンギンを雪に埋めてしまった。
「ひえー、女将さん、何するんですー」
 そう、雪崩に気付かなかったとっとの鼠までも巻き込んだのは云うまでもない。もちろん鼠だから、穴を掘って出ては来れるが、その正面で銀丸が待っていたという『お決まり』の不幸を経験するだけの事であった。南無阿弥陀仏。
 鼠の悟浄を捕まえた銀丸は、一行が大切に持っていた某ms.社のシショウ品を奪い取って雪山の向うのアジトに戻っていく
『ふふふ、宝貝を使うまでもなかったな』


夜野 月 ●●● Light

 意気揚々と戻って来た銀丸、確認の為に西遊記を見直して、はたと気付いた。そう、悟空は山に押しつぶされた後も山神の叱りつけて移動させたのだ。しかも、その悟空を瓢箪に閉じ込めようとした所、部下を送ったのが間違いで逆に悟空にだまし取られている。これはいけないと、早速、本人みずから、ペット瓶を持ってbutapennのペンギンの元にやってきた。
 しかし、埋もれた筈の所は水になって誰もいない。どうやら、体熱で溶けてしまったようだ。これだから人工雪じゃダメなんだと、舞台設定のとっとを理不尽に罵った。その時、向うの雪丘から
「わっはっは』
 というペンギンの高笑いが聞こえてきた。
 ここで逆上しては負けである。早速、2個のペット瓶のうちの1つを取り出して、
『悟空!』
 と呼びかけた。ペンギンは答えずに身振りで『あっかんべー』とやっている。そうなのだ、銀丸が西遊記を読んでいるという事は、butapennもまた読んでいるという事なのだ。

 そこで銀丸は考えた。ここはモルモットの悟浄に化けて、親しみを込めて呼びかけるのがよかろうと。さっそくピカチュウの着ぐるみを着て、『沙悟浄』のプラカードを垂らして出直した。そして、大型の透明樽をペンギンの立つ丘の麓にセットして
『悟空役の女将さん』
 と声を掛けた。
 その声に応じて
「あ、誕生日おめでとう。これで私と同年代ね♪」
 と答えたペンギンは、喋った勢いで雪の丘から滑り落ちて、大型の透明樽にポトンと落ち込んだ。かくてペンギンの悟空を捉えた銀丸
『ふふふ。これで安心して某ms.社のシショウ品を使う事が出来るぞ』
 さて、吸い込まれたbutapennのペンギン、中をみると、1000人吸い込む事が出来る宝貝とあって、先客がいる。
『きゃあ、かわいい! こんな美男子が欲しかったのよねえ、、、看板のヒロインたちを誘惑させちゃおうかしら』
と、さっそくサドな事を考えて悦に入るのであった。おいおい、悟空の役はどうなったんだ?


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