卑怯なコウモリのその後
海仙




 コウモリを村八分にするきっかけとなった戦争・・・決着がつかないまま和平となった事からも分かるように無駄な戦争だった・・・に反省した鳥と獣が、誤解よる戦争を回避するべく鳥獣連盟をつくって久しい。ただし、鳥獣連盟が本当に戦争を廃絶させようとしているかについては、世の中の常として、疑わしかった。事実、唯一非戦を貫いたコウモリは、発展途上動物として蔑視されていたが故に、未だに名誉を回復していなかった。
 そんな或る年、孤独なコウモリは格好の仲間を見つけた。念には念を入れ、コウモリはその動物に尋ねた。
『君は鳥かい』
『鳥? それなに?』
『君は獣かい』
『獣? それなに?』
 まさにコウモリ的答えではないか。コウモリは喜んだ。
 このサイトをご覧の読者なら、それがどのような姿をしているか直ぐに分かるだろう。コウモリにとってこんな心強い味方はいない。人の価値は顔や愛らしさで決まるものでないとお偉方がいくら説いた所で、それが絵に描いた餅である事は、就職活動をした十人並みの容姿の女性であれば、身にしみて感じている筈だ。この動物こそは、その愛らしい姿により鳥からも獣からも好まれるに違いない。それは、コウモリの名誉回復を助けてくれる筈だ。
 そう思ったコウモリは、さっそく、この動物を鳥獣連盟に連れて行った。

 結果は上々だった。鳥獣連盟は全会一致で、この新しい動物を連盟に加える事を認め、更には、連盟の中でも最も力のある理事会の非常任理事にすら推薦した。上々の成果だ。かくして、コウモリは理事会で演説する機会すら与えられた。というのも、この愛らしい動物を紹介したのがコウモリだったからだ。長々とその中庸かつ温厚な性質を説明したあと、コウモリはこう結んだ。
『この愛らしい動物こそ、私に最も近い動物なのです!』
それはある種のレトリックに従えば事実であろう。しかし、世の中はタブーというのがある。そして、かの愛らしい純粋無垢な動物・・・戦争とか猜疑、弁明と言う言葉を知らない・・・が、コウモリの為に弁明する事など有り得なかった。
 かくて醜い平和主義者は村八分を解かれず、洞窟をねぐらとするしかなかった。コウモリにとって、鳥獣連盟とは所詮、二重基準の身勝手な組織に過ぎなかったのだ。




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