ゲーム編



 私は普段と変わらない日常生活の中で、セフィロトを育てることにした。
 彼は数ヶ月で驚くべき成長を遂げていく。
 とりわけ表情が豊かになった。
 うれしい、悲しい、心地よいなどの原始的な感情も学んだ。正しいことと不正なことを見分けたり、ふたつの命令のどちらを優先するかというジレンマに悩んだり、相手のためを思って嘘をつくという体験もした。
 私が保育教師として働いている【すずかけの家】に連れていくと、彼はとても喜んだ。
 そしてその中で、アラタくんという心を閉じた少年との出会い。
「胡桃に必要とされているということが、わたしにはとてもうれしかった。アラタくんにも、きっと同じ経験があればいいと思うのです」
 誰よりもアラタくんの心を理解していたのはセフィだった。
 彼がすずかけの木の下に立っているのを見たとき、私は夫を思い出して涙ぐむ。

第3章 「秘密を知る者」

 ある日、犬槙さんから研究所に呼び出された。
 科学省の審査官による、セフィロトの面接審査があるという。
 そこで、待っていたのは血も涙もないお役人たちによる、非人間的で屈辱に満ちた検査の数々だった。
 緊張のあまり呆然としているセフィを私は抱きしめる。
 個別の面接審査の中で、私は「機械にそういうことをするのは、気持ち悪いとは思わないのですか?」と尋ねられ、激怒した。
 私の番が終わると、犬槙さんからセフィロトといっしょに家に戻っているように言われたのだが……。
 
 さて、胡桃は……
    言われたとおり、セフィロトと家に戻る。
    審査の結果が気になり、様子をうかがう。




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