「ティトス戦記」
ギュスターヴ・カレル
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「お宝だ!」
 すでに半分盗賊に転職した感のある黒魔導士は、万歳して喜んだ。
「見ろよ、保存状態も良さそうだ。この神殿は気に入ったぜ。守護者を倒さなくても、お宝が手に入っちまうんだからな」
 しかし、ギュスターヴのことばが終わらぬうちに、小刻みな振動が彼らを襲った。それはまるで部屋全体が少しずつ動いているような感覚だった。
 そして、まさに部屋は回転していた。
 その証拠に、彼らを招じ入れた入り口の扉は、今は押してもびくともしそうもない石壁にふさがれている。
 とどめとばかりの大きなきしみとともに、左側の壁が縦二つに割れた。
「お、おい。まさか……」
 アシュレイが心底イヤそうな顔をして、ルギドを見た。
「ああ、そうだな。他の神殿は、守護者を倒すと宝が取れる仕組みだったが、ここは反対に、宝を取ると守護者が現れることになっているらしい」
「待ってくれよ、それじゃ罠じゃないかよ!」
ギュスターヴはそれでも素早く袋に宝物を詰め込むと、アローテやジルたちの後を追って、部屋の隅に退避した。

   (第16章より)
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