ゲーム編



「ちょっと待って、犬槙さん!」
 もしかして、まだセフィロトの心のかけらが少しでも残っているとしたら……。その可能性に賭けよう。
 私はセフィの思い出を語った。
 9ヶ月間彼と暮らして、どんなに私の心が癒されていったか。樹が死んで、もう誰も愛せないと思っていた私の冷えた心を熱くしてくれたのは、彼だった。
 いつのまにか彼を強く愛していた。
「私はセフィロトを愛している。彼に戻って来てほしいの。私のそばにいてほしいの!」
 彼はそのことばを聞いたとたん、自分から停止した。

 ふたたび目を覚ましたとき、彼はおだやかに言った。
「古洞樹はもう、死んでいるんだな。俺はここにいてはいけない存在なんだな」
 樹の意識は、自分から消えることを選んだ。
 ごめんなさい、樹。あなたを愛していた。
 でも、これから私がいっしょに歩いていくのは、セフィしかいない。

 人工知能に、元通りのセフィが復活していく。犬槙さんによると、一度消えたプログラムが復活するなど、普通はありえないことだという。
 セフィロトが起こしてくれた奇跡。
 私は彼に、キーボードを通して語りかけた。
[早く目を覚まして。いっしょに家へ帰ろう]
 ロボットが本当に人を愛する心を持てるのだろうか。そうためらう彼に、こうも言った。
[時間はたっぷりある。いっしょに考えていこう。あなたと私のふたりで]
 目覚めたセフィと私は、しっかり抱き合った。

 私たちは、もう一生離れない。



 No.12「トゥルーエンディング」 ―― そして第二部につづく  




ここまでお付き合いいただいて、ありがとうございました。
エンディングは12ありますので、どうぞすべてを制覇してください。
なお、いくつかのエンディングは、とっとさんとnyansukeさんにアイディアをいただきました。
深くお礼を申し上げます。

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