バトルランナー(超短編)
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 各猫一斉にスタートしました。トップを走るのは若いチャトラン、チャトラン速い。おおっと? 塀の上から狙っているのは軽業師・タクローだ。チャトラン、ピーンチ。案の定飛び掛かられ、くんずほぐれつ乱闘だ。その彼らを乗り越えて四丁目のボス・ぶっちーが先頭に。が、ぶっちー鈍足、すぐ後ろに子分の大五郎としましまが迫って来ている。ああっ、ボスのひと睨みで後ずさった、ぶっちーさすがの貫禄です。そこへ四丁目の恋のハンター・ミケはん登場。泣かせた雄猫数知れず、産んだ仔猫も数知れず。ミケはん、ぶっちーにお色気攻撃だ、これにはぶっちーひとたまりも……うおっ? そこへタクロー、大五郎、しましまも乱入、相手がボスでもここは一歩も譲らない構えです。さては全員過去にミケはんと(以下自粛)。
 おおっと、なんと言うことだ、その隙をついてチャトラン抜け駆けーっ? 彼は去勢されているのでミケはんにはなんの興味もありません。「しまった!」みな焦っているがもう遅い。
 チャトラン、ゴール! ゴール!! ゴォォォォール!!!

 ――翌朝。四丁目の鈴木さんは、打ったばかりの駐車場のコンクリに梅の花のような猫の足型を見て、ため息をついていた。