MAP | HOME



夏休みスペシャル
3000マイルアメリカ西部縦断の旅(1)




BUTAPENN一家は、ロサンゼルス駐在中の1991年夏休み、
西部の有名国立公園を自動車でめぐるという欲張りツアーを計画した。
6州、全行程3000マイルをわずか10日間で回ってしまおうという大強行軍である。
参加者は、パパ(当時37)、私(33)、長男(8)、次男(6)、そして、日本から
遊びに来たおじいちゃん(67)、おばあちゃん(61)の6人。
炊飯器からやかん、虫取り網まで積み込んでの珍道中にいざ出発!




無謀な計画のはじまり

アメリカ駐在3年を過ぎようとしていたこの年。折りよく日本からパパの両親が来るというので、6人で思い出に残る旅行にしたかった。
実ははじめは、世界で最初の国立公園といわれるワイオミング州のイエローストーン国立公園に行くことだけが目的だった。
だから、行きは飛行機で、帰りはレンタカーという計画をたてていたのだが、レンタカーの乗り捨て料が高いうえに、希望するワゴン車がなく、 結局自動車中古販売のディーラーを営むパパの知人にお願いして、新品のトヨタ・プレヴィアを借り、全工程を車で走破することに なってしまった。その距離なんと3000マイル(4800キロ)!  

AAAでもらったルートマップ。
車が確保できたところで、さっそくルート作成。
今回も私の強い味方はAAA。

AAA(トリプルA)とは、日本で言えばJAFにあたる組織で、会員証を見せて行きたいポイントさえ告げれば、その場でモデルルートをぱぱっと作成、それに合わせて詳しいルートマップを棚から取り出し、組み合わせたバインダーをあっと言う間に作ってくれる。
おまけに、ホテルや州ごとの観光案内を載せたTravel Bookもくれて、いたれりつくせり。
もちろんこれらは、AAAの会員なら全部無料。JAFの会員でもOKだというから、利用しない手はない。
そのトラベルブックを頼りに宿泊先も決め、あとは出発を待つばかり。
6月23日 Home 〜 Zion National Park

朝曇りで、夏とは思えないほど涼しいカリフォルニア州・トーランス市の自宅を、6時半出発。
ロサンゼルス郡を抜け、東へ東へひた走る。
猛暑の低地、はげ山、岩山ばかりの景色が続く。

ラスベガスで有名なネバダ州に入る。
州境からいきなり始まる趣味のわるいカジノを横目に、ラスベガスも素通りし、12時ごろGlendaleにて給油。
なんとガソリンスタンドの中にまで、スロットマシンがある。さすがカジノステート・ネバダ。
ここで食べようと思っていたおにぎりは、もう車の中であらかた食べてしまっている。

駐車スペースで後部ハッチを開けたらなんと、積んでいたやかんがカランコロンと転がり落ちてきた。
とおりかかった人に笑われてしまった。
とにかく、やかん・なべ・カセットコンロ、果ては炊飯器まで積んでいる。
日本人の旅行は荷物が多いのだ。


やかんはカップラーメンを食べるのによく使った。
小一時間ほどの休憩で出発。ユタ州に入ると、急に大地が赤茶けてくる。
「Color Country」と呼ばれている由縁だ。
lここからマウンテン・タイム(山岳標準時)になるので、時計を一時間進める。

夕方4時ごろ、ついに第一目的地のZion National Park(ザイオン国立公園)に到着。
公園入り口のSpringdaleという町に、今夜泊まるコテージ風のモーテルがある。緑色のインテリアが基調で、グッド。

緑と赤のザイオン公園

夏至のころで、まだまだ日は高い。
一休みしたあと、ザイオン国立公園の中に入った。入り口はモーテルからすぐ。
ゲートでGolden Eagle Passportなるものを、ひとり25ドルで買った。これは全米の国立公園で年内有効という便利モノ。
今回の旅行は国立公園めぐりだから、十分元は取れるし、いちいち財布を開く手間が省ける。

木々の緑と、赤い岩のコントラストが美しいザイオン。
ザイオンは、赤い舗装道路に押し迫るように、赤い切り立った崖がそびえ立つ、奥へ細長い公園。
途中で車を降り、歩き始める。
絶壁が夕日を隠し、川におおいかぶさるように次第にせばまってくる。

山道のそばにきれいな湧き水のくぼみがあり、魚がいた。さっそく持参した虫取り網で、魚とりに夢中になる長男。
帰り道のロッジで、お土産えらび。友人にスプーンを頼まれていたのだ。
このスプーン、アメリカではお土産の定番と言えるもの。柄のところに観光名所の絵がはめこんである。
自分用には、錫製のThimble(指ぬき)の飾りを買った。
6月24日 Springdale 〜 Bryce Canyon National Park 〜 Salt Lake City

朝7時に起床。朝食のしたく。
部屋の壁にNo Cookingという張り紙がしてあるので、バルコニーにカセットコンロをだして、インスタント味噌汁、のり、梅干、ごはんの純和食。

今回の旅行は半分が自炊だ。田舎に行くとほとんど日本料理屋はないので、子どもも、主人の両親も耐えられないと判断した。
そのために、炊飯器、カセットコンロ一式持参したわけだ。バケーションに来てまで、なぜ人目をしのんで、おさんどんせねばならないのか…。


うしろが、今回の旅行の主役・トヨタプレヴィア。
9時出発。東に進路を取る。しばらく行くとトンネルがあり、レンジャーの人が車を停めて「9分待て」と言う。
キャンピングカーなどの大型対向車が通り過ぎてから、行ってよいと言われた。
かなり長いトンネルをぬけると、あきらかに景色がちがう。
岩の色はザイオンとおなじ赤いのだが、横や斜めに細かい断層の模様がはしり、道にたちふさがるようにそびえている。
なかなかの見ものだ。

しかし、もっと感動したのは、国道89号線に入り、突然目の前に紫の山々と緑したたる草原のパノラマが現われたときだ。
赤色ばかりに囲まれていた目には、痛いほど美しかった。
だが、州道12号線に曲がったとたん、また赤の世界!

いよいよBryce Canyon National Park(ブライス・キャニオン国立公園)だ。



(2)につづく


HOME