TOP | HOME



EWEN

Episode 7
シュプール


§1

 空を染めていた最後の夕焼けが厚い灰色の雲に隠されたかと思うと、無数の粉雪が舞い落ちてくる。
 振りかえると、暖色の夜間照明に照らし出されたゲレンデの斜面に、たった今私たち2人が描いてきたシュプールは、みるみるうちにその新雪に蔽われていく。
「あーあ。この降りだと、今日はナイターは無理みたいね。裕二」
 私は、ボーイフレンドにそう愚痴りながら、ペンションの前のスキー置き場のフックにスキー板をかけ、軒下で靴を脱ぎ、アノラックに降り積もった雪を払い落とした。
 ちょうどそのときもう1組のカップルが、ゲレンデを滑り降りてきたのが見えた。やはりここの宿泊客らしく、ペンションの前で止まるとスキーの装備を外し始める。
 ブルーのウェアを着た背が高い男性と、オレンジ色のウェアのやや小柄な女性のカップルだ。
 2人は私たちのそばに近寄ると、同じように雪を払い落としながら、なにごとか睦まじく言い合っていた。
「プルークもできないのに、何で上級者用のコースについてくるんだよ。もうどうしようかと思ったよ」
「だって、せっかく来たのにいっしょに滑りたいやんか。そんなら私に合わせて初級者コースに来てくれたらよかったのに」
 聞くともなしに聞いてしまって、そのほほえましさに思わず笑みがこぼれた。女性の透き通るような声には関西のアクセントがある。群馬県で関西からのスキーヤーを見かけるのはめずらしい。
 男性が私の隣でニットの帽子とゴーグルを取るのを何気なしに横目にして、私はあわてて息を止めた。
 帽子の中からは、ゆるいウェーブのかかった輝くような長い金髪が、背中を流れ落ちてきたからだ。
 外国人だったのか。道理で日本人離れしたプロポーションだとは思っていた。
 だけど、話す言葉に全くなまりがなかったため、帽子を取るまではそうと気づかなかったのだ。
 斜め横からそっと見上げると、やはり、淡いはしばみ色の目をした西洋人の顔をしている。
 それにしても、半端じゃなくきれい。彼のまわりだけ、空気が違う色をしている感すらある。
 女性の方は日本人。こちらもきれいな子だった。頬がふっくらとして、美人というよりまだあどけない少女のかわいさがある。
 ふたりは、お互いの背中の雪をじゃれあうようにはたき落とすと、そのまま建物の中に入っていった。
「うわあ、裕二、カッコよかったねえ、今の外人。目の保養をしちゃったわ」
 彼氏の前で、他の男性をほめる無神経さに気づくと、私は舌をだして「ごめん」と謝った。


 群馬県嬬恋のスキー場のゲレンデ内にあるログキャビン風のペンションに、私と裕二は昨日から泊まっていた。
 部屋は、洋室ばかり8室、定員24名の小さいが有名なペンションで、週末は全部予約で満室なのだが、2月初旬の平日ということもあって、比較的簡単に取れた。
 夕食の席には、親子連れ、若いカップルなど計7組がそろった。昨日から宿泊しているのは、私たちと、もう1組の中年のカップル。あとは全て顔ぶれが入れ替わっている。食事は、オーナーご自慢のフランス風の創作料理。これ目当てのリピーターがいるほど定評がある。
 かくいう裕二と私もその口だ。1年前、最初の旅行で来て以来、ここの料理を味わえるのを楽しみにしていたのだ。
 一日滑ってお腹をぺこぺこに空かせて食卓に座ろうとしたら、若い騒がしいカップルが裕二の席をぶん取ってしまった。文句を言おうかと思ったが、裕二が何も言うなという顔をしているので、黙って席を移った。
 彼はこういうとき本当に鷹揚だ。すぐ頭にきてしまう私は、いつも見習わなければと思う。
 新しい席に座ると、その前に、さっきスキー板置場で会った外国人のカップルが座った。
「はじめまして。ていうか、さっき、外でお見かけしたよね」
 ショートカットの女性が、屈託なく話しかけてきた。
「うん、そうね。はじめまして。ここには、今日から?」
「そう。昨日の夜、西宮を出て、夜行バスで今朝着いてから、ついさっきまで昼寝してたの。今日は2時間しか滑れへんかったわ」
「残念ね。今日の夜は吹雪くってオーナーが言ってたから、もう多分ナイターは無理。明日は晴れるといいね」
「あなたたちも、今日来たの?」
「ううん。昨日。あ、申し遅れました。わたし、内海真奈って言います。隣にいるのは、岩間裕二」
「よろしく。私は、円香・グリュンヴァルト。隣は主人のディーター」
「えっ! あ、あなたたち、け、結婚してるの?」
「うん。去年の3月にね。もうすぐ一周年を迎える」
「へええ」
 私はどぎまぎしてしまった。こんなに若く化粧気もない子が外国人の奥さんやってるんだ。
 妙な気恥ずかしさに、話題を変えようと、私は隣の男性の方を向いて訊ねた。
「お国はどちらですか」
「あ、ドイツ」
「もう、日本長いの?」
「初めて来たのは3年前。日本にいるのは、正味1年ちょっとかな」
「すごい。それにしては、日本語おじょうずですね」
「ありがとう。でも、スキーに来ると話がしやすい。ドイツ語が多いから」
「そう言えばそうね。ゲレンデもシュテムボーゲンも、みんなドイツ語ですもんね」
 彼は、白い歯を見せてにっこり笑った。さっきスキー帽で隠していた長い金髪は、今は後ろでひとまとめにして括っている。露になった首筋は華奢で、肩幅もそう広くない。逞しさよりもむしろ、優しさを感じさせる男性だ。食堂の明かりで真正面から見ると、雪解け水をたたえた静かな湖のような瞳の色をしている。
「ねえ、聞いていい。あなたたちふたりは、どういうお知り合い?」 彼女が遠慮がちに聞いてきた。
「東京の同じ大学のサークル仲間なんだ。あ、良かったら名前で呼んでくれていいよ。わたしは真奈。こっちは裕二」
「よかった。私たちも、円香とディーターって呼んで。真奈ちゃん、大学の専攻は何?」
「私は、文芸専修科2回生。彼は法学部3回生」
「私も大学行ってる。K学院大文学部・教育心理専科1回生。ディーターは社会人」
「えっ……。あなた……大学生だったの?」
 隣で、ドイツ人の旦那さまがぷっと吹き出した。
「あ……、ご、ごめんなさい」
「いいよ、慣れてるから。たいてい中学生に見られる」
 彼女はおどけた素振りで、少しくせ毛の髪を掻きあげた。
「ケルンで結婚式挙げたんやけど、結婚証明もらうとき、市役所の人が3回も資格証明書見て私の生年月日確認するんやで。お化粧しない私も悪いんやけど。……ちょっと、ディーター、いつまで笑ってるの!」
 彼は片手で顔を隠すようにして、笑いをこらえている。
「もう、男どもはほっといて、ふたりだけで話そう」
 と、彼女は体をよじって、彼に背中を向けるようにして身を乗り出した。
「ねえ、文芸専修科のある大学って東京にいっぱいあるの? もしかして、W大?」
「そう。何でわかるの?」
「ほんとに! もしかして、高地瑠璃子って子知らない?」
「知ってる! 瑠璃ちゃん! 1学年下だけど、同じゼミだからしょっちゅう話してる。え、なんで?」
「瑠璃子、私と高校いっしょやったん。うわあ、こんなこともあるんやなあ」
「そうかあ。あなたの関西弁、なんだか親しみがわくと思ってたら、瑠璃ちゃんの口調にそっくりなのね」
 私は、運命のいたずらに感謝した。こんなところで、親しい友人の知り合いに出会えるなんて。
 それから私たちと円香たちはすっかり意気投合して、その日の夕食はとても楽しい時間になった。昨日は誰一人として、私と裕二に話しかけてくれる人はいなかったのに。
 それは、しかたのないことなのだけれど。


 夕食のあと、お風呂に円香と連れ立って行き、危うくのぼせるまでおしゃべりをした。
 彼女とディーターのなれそめである彼女の実家の古武道道場のことや、お互いの専攻の勉強のこと、裕二と私が属しているスキーサークルのことや、スキーの上達法など。
 下でお茶を飲もうと約束して別れてから部屋に戻り、待たせていた裕二といっしょに、一階のロビーに下りた。
 階段を降りると、自動販売機が並んでいるコーナーで、円香のご主人がビールを買っていた。
 彼は私たちに気づいて、にこっと笑った。
「冬でも、お風呂あがりはやっぱりビールに限るわね」
「そう。俺はどんなに寒くても、ビールがないと生きていけない」
 そうだ。私も、ビール好きの裕二に一本買ってあげようっと。
 財布から小銭を出そうとして、私は手をすべらせてしまった。百円玉がころがって、ディーターの足に当たって止まった。
「あ、いけない」と言いながら、彼の足元にかがんで硬貨を拾うとき、私は思わず「え?」と声を上げた。
 ジーンズの裾からのぞく彼の左の素足は、不自然な光沢のある人工物だったのだ。
「ご、ごめんなさい」
 不用意な声を上げてしまったことを謝って、身を起こした。
「驚かせた? ごめん」
 彼は逆に恐縮していた。
「こちらこそ、ごめんなさい。左足、義足だったのね」
「うん。膝から下がない」
「滑るのに、不自由しないの?」
「基本的にスキーは脚が一本あれば、滑れるから」
「……交通事故?」
「いや。手榴弾の暴発」
「え?」
 私は眩暈を覚えた。
 浴場で見た、円香の背中のひどい火傷。手榴弾。
 いったい彼らはどんな道筋を通って、今ここにふたりでいるのだろう。
 絶句している私に、彼はビールの缶を一本すっと差し出した。
「これ、裕二に。俺からのおごり」
「あ……、ありがとう」
 私はそれを受け取って、思わず深々と頭を下げた。


 ロビーは、ログキャビン風の室内装飾が暖かな雰囲気を醸し出している、居心地のよい談話室になっていた。
 オーナーの奥様手作りのパッチワークカバーがかかったソファが暖炉の前に並んでいて、そこで円香が、もう1組のカップルとコーヒーを飲みながら、楽しそうに話している。
 同時に風呂から上がったはずだが、私はお化粧の時間だけ彼女より遅くなってしまったらしい。髪の毛が洗いざらしで、頬は湯上りで薄紅色に染まったすっぴんのままの彼女は、春の野花の美しさがあった。
「あ、真奈ちゃん。裕二君。こっちに座って」
 彼女は私たち2人分の席を詰めてくれると、そばにいた40代半ばに見えるカップルを紹介した。
「こちら、三島さん。結婚18年目のベテランご夫妻です。こちらは内海真奈さんと、岩間裕二さん」
 ふたりは、戸惑ったような表情で私たちにお辞儀をした。
「よろしく」
 ディーターの買ってくれたビールを裕二の前に置くと、私も挨拶を返した。
「おふたりも、昨日からいらしてましたよね」
「ええ。夫婦ふたりでのんびり旅行なんて、新婚旅行以来で……。スキーも学生時代から20年ぶり」
 三島さんの奥さんは、少しはにかんで答えた。ほっそりした体に若草色のハイネックのセーター。べっ甲色の髪留めでまとめたセミロングの髪。目じりと口元の浅い皺を除けばまるで少女のようだ。
 ご主人のほうは、対照的に年よりいささか老け込んで見えた。おなかが出て、髪には白いものが目立ち、地味な色目のウールのシャツにVネックのセーターを合わせている。
「新婚旅行、どこにいらしたんですか」 円香が訊ねた。
「ハワイよ。私たちの頃は、それがごく一般的な新婚旅行だったの」
「ハワイもいいなあ。私たち実は新婚旅行まだなんです。思いっきし早く結婚して、お金なかったから」
「おいくつで結婚なさったの?」
「私が18で、彼が21のとき。ちょうど1年前です」
 一方、三島さんのご主人とディーターは、ビール片手に仕事の話で盛り上がっている。彼の職業であるコンピューター・プログラマーの話だ。
「プログラマーと一口に言っても、いろいろな分野があると聞いたが」
「俺は医療関係が専門です。今は製薬会社の仕事が多いかな」
「そっちの方の景気はどうかね」
「よくありませんね。どこも経費を削減されてるから、こちらも単価を下げるしかない。一度入りこんでしまえば次の仕事もほぼ確実だから、それ目当てにただ働き同然になってしまうこともあります」
「いや、僕は経理担当なんだが、今真っ先に削っているのは、IT関連の予算だね。つい数年前まではほぼフリーバスで通していた付けが回って、ITの設備投資は軒並みばっさり切られている。隔世の感があるね」
「ちょっと、あなた。また仕事のことばっかり。せっかくの旅行の間くらい、やめましょうよ」
 奥さんが少し苛立った声を出した。そのことで何度も諍いを起こしてきたのに、という悔しげな声だ。
「……ああ、うん。そうだったな」
「そうそう。旅行はいいんですよ。脳内からセロトニンが出て、日頃のストレスがさっぱり取れて、リフレッシュできるんですって」
 円香が奥さんに助け舟を出した。
「男って、ほんとに仕事のことになると夢中になるから。これじゃ旅に来た意味がありませんよね」
「うちは、一人娘しかいないから……。若い男の子とお酒を飲めるのがうれしいのね、きっと」
「お嬢さんは、今日はお留守番?」
「ええ、あの……」


 ちょうどその時、階段を賑やかにばたばたと降りてくる音がした。
 若い高校生くらいのカップルだ。ふたりともチャパツというよりは金色にまで脱色した髪をしていて、男の子は鼻と口、耳にも5個くらいのピアス。女の子は、眉毛を全部抜いて、どぎつい化粧をしている。
 夕食のとき、裕二の席を横から掠め取った、あのにっくき二人だ。
 ふたりは自販機でごっそりビールを買いこんでいたが、談笑している私たちの方を向いた。
「うわあ、外人さん。チョーイケメン! こんばんわあ。日本語わかりますう?」
 女の子がディーターのそばにすりよってきた。
「こんばんは。良かったら、2人ともいっしょに座らない?」
 円香が、親しげに話しかけた。
「いや、いいっすよ。俺ら。別に……」
「はーい。失礼しますう」
 女の子はちゃっかりとディーターの隣に座ってしまった。男の子もしかたなくその隣に座る。
「こちら、三島さん。そっちが真奈さんと裕二くん。私は円香で、そこにいるのがディーター」
 円香の紹介に、女の子は口を尖らして私たちの方を見ると、ひとこと、「キモ〜い」と叫んだ。
 き、キモいと言われてしまった。面と向かって言われると、さすがに立ち直れない。
「私はユミリ。彼はカオル」
 外国語みたいな発音で自分たちの名前を名乗ると、彼女はディーターの腕にしなだれかかった。
「今晩ユミリとデートしません?」
 横にいるカオルくんは、そんな彼女におかまいなしで携帯ゲームを始めた。変な子たちだ。
 ディーターは困ったように、円香を見た。
 相手の子を傷つけたくなくて、優柔不断になってしまう。裕二とそっくり。
 女からすると、そんな優しさはずるいのに。強くはねつけて、断固とした態度を取ってほしいのに。
 円香はわざと知らん顔をしている。私は彼女の胸のうちを思って共感してしまった。
「きみ。彼はその人と結婚してるんだよ。離れなさい」
 見かねて、三島さんのご主人がふたりを引き離そうとした。
「えーっ。結婚してるんですかあ。チョーショックう」 と、口では言いながらも、ディーターのそばから離れようとしない。
「じゃあ、スワッピングしよう。ねえ、いいでしょう」
「あなたたちふたりは、高校生?」
 私はあわてて、話題を変えようとした。
「ううん。ユミリもカオルも中退で〜す。今はフリーターやってるの」
 彼女は超ミニで脚を組んだので、みんな目のやり場に困った。
「どうして、高校中退したの?」
 三島さんの奥さんが、母親のように眉をひそめて尋ねた。
「えーっ。勉強チョーかったるいし」
「でも、もう高校は行かないの? 通信制もあるし、高卒の資格だけは取っておかないと将来困るのよ」
「いいの。金はフリーターで稼ぐし、旅行行くときは、出会い系でおじさんからもらうし。困んないから」
 で、出会い系って。一同あっけにとられた。
 マスコミでは騒いでいるものの、本当にしてるって子に会ったのは初めてだった。
「ばかっ! 何が出会い系だっ!」
 三島さんのご主人が顔を真っ赤にしてソファから立ちあがった。
「きみのやってることは、れっきとした売春なんだぞ! ツーショットダイヤルだ、出会い系だって口当たりのいい言葉を使っても、自分の体を金のために売っているんだぞ!」
「なにぃ。このオッサン、マジギレ?」
 ユミリは、それでもあわててディーターのそばからどいて、カオルの肩にしがみついた。
「誰にも迷惑かけてないんだもん。ユミリが自分の体をどう使ったっていいでしょ!」
「きみは、自分のご両親に迷惑をかけてるのが、まだわからないのかっ!」
「親なんか、関係ないじゃん!」
「あなた! やめてっ!」
 三島さんの奥さんが、金切り声で叫んだ。
「よその娘さんなのよ。由布子じゃないのよっ!」
 ご主人は肩を大きく上下させると、やがてがっくりと腰を落とした。
「……すまない……」
 その場にいた者たちは、三島さんたちのあまりの剣幕に、息をするのも忘れていた。
「すまない。……僕たちにも同じ年頃の娘がいるものだから……、つい興奮して……」
 重苦しい沈黙が帳を降ろし、暖炉の薪のはぜる音が大きく部屋に響いた。
 かすかにヒューッという風の音がする。吹雪が横殴りに窓を叩きつけているのが見えた。


「カオルくん」
 私はなんとか会話をつなごうと、今まで口を開いていない男の子に話しかけた。
「あなたの意見を聞きたいな。ユミリちゃんの言うことをどう思う? あなたは平気? 彼女がふたりの旅行のために出会い系やってたって聞いて」
「別に……」
「別にって。意見、ないの?」
「別に、ユミリはオレのモノじゃねえし、誰と何しようと自由だし」
「責任もとる気はないってことだね」
「ナンすか、ここは。裁判所っすか。つまんねえ話ばっかりで。オレ部屋帰りますよ」
「じゃあ、あなたのおもしろいと思う、話をして」
「お、いいっすね。吹雪の夜、知らない同士が集まって話をするっての。なんか『かまいたちの夜』って感じで」
 ちなみに「かまいたちの夜」というのは、テレビゲームのことだ。吹雪に閉じ込められたスキーロッジで凄惨な連続殺人が起きるという筋立て。裕二といっしょに夜通し遊んだことがある。
「人殺しの話なんか、どうすか? 告白ターイム! この中で、人殺ししたことある人!」
「あのねえ、いい加減にしてよ!」
 私が叫びかけたとき、低い声が流れてきた。
「あるよ。人を殺したこと」


§2につづく
TOP | HOME

Copyright (c) 2002 BUTAPENN.