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ゲームノベル
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誰かに尋ねる前に、もう少し部屋の様子を調べてみたほうがいいだろう。 ディーターは義足をはめると、もう一度聖の寝ていたサークルベッドに戻った。 特に目新しい発見はない。ただ掛け布団がくしゃくしゃに投げ捨てられている。よほど短時間に、急いで聖を連れ出した証拠だろう。 葺石家の人たちなら、そんなことはしない。ひとこと声をかけていくか、メモくらい残していくだろう。 そうすると。残る可能性は。 誘拐。 合鍵を持っているはずのない者が、わずかな隙に鍵を開けて、真直ぐに聖だけを狙ったと考えるしかない。 そんなことができる人間は限られている。 ディーターの握りしめた拳が、震えた。 彼がユーウェンの人格を持っていたときに属していた国際テロ組織なら、可能だ。 4年前、九州・沖縄サミットを襲撃する計画を立てていた彼らは、神戸の倉庫で警察の包囲を受けた。 あのとき、その場から逃げ出した仲間はふたり。国際手配されている彼らが捕まったという話は聞かない。このところの世界中での一連のテロに対する警戒措置で、ずっと身を潜めていたのかもしれない。 しかし、ほとぼりが冷めた今になって、彼らがひそかに日本に戻ってきたとしたら。 その目的はただひとつ、彼への報復だろう。密告した裏切り者への復讐。 でも、それなら何故、彼らは無防備に居眠りしていた彼を直接襲わなかったのか。 聖を誘拐した理由は何なのか。 そこまで考えたディーターは、慄然として立ち上がった。 もし彼の予想が当たっていたら、次に狙われるのは円香だ。 次に進む |
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