ゲーム編



 クリスマス・イヴ当日。
 さくらちゃんとのデートに出かけるセフィロトに、私は背中を見せたまま「いってらっしゃい」を言ってしまった。
 なんてイヤな女なんだろう。
 セフィが楽しいときを過ごすことを、素直に祝福できないなんて。

 ひとりでキャンドルの灯を見つめながら過ごすイヴ。
 去年のクリスマスはまだ樹は生きていたのに。
 樹。戻ってきて。こんな夜に私をひとりにしないで。
 テーブルに泣き伏す私の耳に、玄関の開く音が聞こえた。
 セフィロトがそこに立っていた。
「セフィ、いったいどうしたの?」
「さくらが、今すぐ胡桃のところに帰れって言ってくれたんです」
 彼は私を抱きしめ、そして言った。
「わたしは、胡桃を愛しています」

第7章 「憎しみの紋章」

 どうすればいいのだろう。
 セフィロトは、私に恋愛感情を持っていると勘違いしてしまった。
 思い余って犬槙さんに相談すると、
「僕の目から見ても、きみはセフィロトに恋している」
 と、とんでもないことを言う。
 違う。私が愛しているのは樹だけ。セフィは私たちの子どもなのだ。
 そう自分に言い聞かせながら、自分の心を偽る苦しさがどんどん私を追い詰めていく。

 その頃から、科学省の柏審議官が私たちの身辺につきまとい始める。
 セフィロトを科学省で引き取って、各方面の探査に使いたいというのだ。
 真実の理由なのだろうか。得体の知れない恐怖に心を乱される。

 新年の初詣に行ったときのこと。
 セフィロトは不思議なことを言った、「もし、その運命が変えられるとしたら、願いが本当にかなえられるとしたら、古洞博士が生き返ることを願いますか?」
 彼も私への愛に苦しんでいるようだった。
「胡桃を苦しめている古洞博士が憎くてたまらないのです。お願いです、古洞博士のことを忘れてください!」
 彼の有無を言わせぬ口づけを受けて、私はもう自分を偽ることができなかった。
 私は、セフィロトを男性として愛している。


 セフィロトの口づけを受けた胡桃は……
   もっとおねだりする。
   彼をつきはなす。




TOP | HOME
Copyright (c) 2003-2004 BUTAPENN.