ゲーム編



 私は半狂乱になって、犬槙さんの研究室に飛び込んだ。
「柏さんのところなら安全だ。彼は味方だから」
 謎のことばをつぶやく犬槙さん。
 そしてその直後、数人の男たちが乱入してくる。
 科学省の鏑木局長。大規模な軍事クーデターの首謀者のひとりだった。彼らは人間と寸分違わぬロボットの軍隊を作り、日本に革命を起こして軍事独裁国家にしようと企てていたのだ。
 あくまでも、奴らの要求を拒否する犬槙さんに危機が訪れる。
 そのときセフィロトが、助けに駆けつけてくれたのだ。
 しかし、彼は犬槙さんをかばって、光線銃に体を打ち抜かれてしまう。

「だいじょうぶ、セフィロトは直るよ」
 犬槙さんのことばに平静を取り戻した私に、事件の真相がおぼろげながら明らかになった。
 すべては元通りになるかに見えたが、セフィロトはそれから何週間たっても目を覚まさない。
 犬槙さんの顔に次第に焦燥の色が濃くなる。
 ある日、私は「セフィロトを初期化する」との彼のことばに打ちのめされた。
 そして犬槙さんに押し倒され、抗う気力もなくしかけたとき。
「やっぱりそうだったのか」
 聞き覚えのある声が聞こえる。
 それは目を覚ましたセフィだった。
 しかしそれは同時に、死んだ夫の樹だったのだ。

第8章 「再生への序曲」

 正気を取り戻した私に、犬槙さんが真実を語り始めた。
 セフィロトの人工知能には、「人格移植プログラム」が組み込まれていること。そこには死んだ樹の情報がことこまかにプログラムされていること。
 故障によって外界との連絡手段が途絶したとき、セフィは自分のすべてを樹の情報に書き換えてしまったのだ。
 今の彼は、自分が死んだ樹そのものだと思い込んでいる。
 そればかりか、自分の存在を認めない犬槙さんや私にまで敵意をむき出しにしていた。
 犬槙さんは、一刻もはやく彼を停止し、初期化しないと危険だという。
 ……私はどうすればよいのだろう。

 セフィロトを停止させようとする犬槙に、胡桃は……
   「ごめんなさい、犬槙さん」
   「ちょっと待って、犬槙さん!」




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