06. 明確なアイマイ
いくら考えても、曖昧なことがある。
俺の名前は何だ。どこで生まれたのだ。この体の無数の傷は、どこでできたのだろう。俺はずっと昔から木こりだったのか。
考えるまでもなく、確かなこともある。
ふたりで静かに暮らしていけるのは幸せだ。平和なこの暮らしを壊したくない。戦いや憎しみで傷つけあう毎日は、もうごめんだ。
考えれば考えるほど、曖昧になっていくことがある。
俺と妻は、どこで知り合ったのだろう。いつから所帯を持ったのだろう。なぜ妻はときどき俺を、不安な目で見つめることがあるのか。この血で錆びた剣は、誰のものだ。
俺は何か、忘れてはならない大事なことを忘れているのではないか。
そして最後に、たったひとつだけ残った確かさがある。
俺はカトリーネを愛している。
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