くわしい事情を書くのは差し控えますが、本年度の国勢調査に関係している人が私の身近にいます。
国勢調査は10月1日から全国一斉に行われているので、もうすでに書いたという人も、いやまだ手元にあるという人もいるでしょう。開封が原則ですが、個人情報保護の高まりを受けて、今回は自分の手でシールを貼って封入することもできるようになりました。
質問項目は、名前・生年月日などのほかに、家の床面積、勤務先・通学先、勤務時間などを尋ねる項目もあるのはご存知の通り。
国勢調査員の選出方法は地方や自治体によってもさまざまで、中には公募するところもあると聞いていますが、うちの地域はだいたいその地区の自治会にかかわりを持つ人で、地域に長く住んでいる人、民生委員などの経験者が推薦されることがほとんどです。
自治会などに代表される日本の自治組織はかつては、ご近所のどこにどんな家族が住んでいるか、お年寄りが何人いるかなど把握している場合がほとんどでした。
しかし、今年の国勢調査は5年前、10年前とはまったく様変わりしているらしい。
近所の情報がほとんど調査員の手元に入ってこないのです。特にうちの周辺地域は、阪神淡路大震災で住居図が大きく塗り替えられ、マンションが次々と建っています。新しく越してきた住民の中には、集合ポストに名前を書かず、表札も掲げない人が驚くほど多く、空家との区別がつきません。日中ほとんど家にいない家庭には、夜の8時、9時になってようやく会うことができる有様。もちろん、回収にもう一度来なければなりません。報道などによると、平然と居留守を使う家もあるといいます。
調査員は老齢の人も多く、マンションの階段を毎日何度となく登らなければならないは、不備を指摘されて怒鳴られるはで、へとへとになってしまっているようです。
国は国勢調査の必要性を強くうたっています。私はそれに反対するつもりはありませんが、これだけの綿密な調査を、臨時の国家公務員とは言え何の力もない、ほとんど善意の民間人にゆだねるのは、もう限界に来ています。他人に関わりたくない関わってほしくないという今のプライバシー主義の傾向がますます強くなっていけば、これから国勢調査というものが、この委託方式で存続していけるとはとても思えないのです。
電話やインターネットの利用も考えられますが、私は全部郵送にすればよいと思っています。どこに人が住んでいるかを一番把握しているのは、普段から各戸に郵便を配達している郵便局職員であるはず。国が郵便局に委託して、彼らに配布・回収にあたってもらうのが、もっとも効率がよいやり方ではないでしょうか。郵政民営化が実現する可能性が大である今、郵便事業にも収益の確実な新事業が生まれることにもなります。