去年の暮れからゲームショップに何度も走っています。といっても、子どものためでなく、両親のため。まさか70代、80代のシルバー世代がゲームをする時代が来ようとは思いませんでした。
実は私の身近に、認知症初期の年寄りが約2名います。
さっき交わした会話の内容をまったく覚えていない、ものをしまいこんだ挙句なくしてしまう、外出すると目的地への道がわからなくなるということが続きました。
身の回りのことは自分でできるので家族の実害はさしたるものでもなく、一日に何回も同じ会話を繰り返したり、探し物につきあったりしていればよいのですが、これも毎日だと、かなりの忍耐を試されます。
元に戻らぬまでも、なんとかこれ以上物忘れが進行しない方法はないか、と情報を集めた結果、たどりついたのが、任天堂の携帯ゲーム機ニンテンドーDSの専用ソフト、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」でした。
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」
東北大学の川島隆太教授の監修になるこのゲームは、簡単な計算問題や文章を声に出して読む訓練が脳を活性化させるという理論にもとづいたものです。
ニンテンドーDSは声を聞き取り、ペンで文字を書けるゲーム機なので、コントローラーをあやつれない年配世代にも扱いやすいのです。さっそく買ってあげたところ、実家の両親(70代と80代)は夫婦ともにハマってしまいました。
周囲にも「家族でやっている」という人が何人もおり、かなり浸透しているようです。
まず、「脳年齢チェック」という項目があり、最初にこれで脳年齢を測定します。画面に出てくる文字の色を声で答えたり、簡単な足し算と掛け算の問題を20問やるというものですが、最初はもたもたして、私なども「脳年齢70歳」と言われてしまいました。
それから、本格的なトレーニングのゲームが始まります。計算問題、文章の朗読、数字を瞬間的に記憶する、家の中に人が出入りして、最後に何人いるかを数える、短文が何文字あるか数える、などのゲームをやっていくと、その速さと正確さによって、「徒歩級」「自転車級」「自動車級」「新幹線級」「飛行機級」「ロケット級」の6段階に判定されます。
面白いのは、それらを毎日やっていると、やり方に慣れてどんどん級が上がっていくのです。そのことが励みになり、また続けてやると、新しいゲームが増えてくるなど、いつまでも飽きない工夫がされています。
物忘れが多くなった当の本人にやってもらうと、たとえば記憶ゲームはだめだが計算は速いなど、脳の働きは一律に衰えているのではないこともわかってきました。
セーブデータも4つ作れるので、夫婦や家族で競い合うこともできます。実際、うちの両親はふたり暮らしですが、競い合ってやっているうちに、毎日に張り合いが生まれたようです。
朝から晩までずっと夫婦で向き合っていると、どんなに仲の良い夫婦でもアラが見えてケンカが多くなってきます。このゲームを始めてからそんなこともなくなり、熟年夫婦の共通の話題作りに恰好のアイテムかもしれません。
昨年暮れには、同じソフトの第二弾、「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」 も発売されました。こちらは、漢字書き取りや音楽の演奏など、前回とはまた違ったゲームが収録されています。
さて、このソフトではテストをされているみたいで緊張して楽しめない、という方には、もっとクイズ感覚で楽しめる次のソフトもおすすめです。
「やわらかあたま塾」
これは、記憶、計算、分析などのいくつかのカテゴリーの問題を解いて、その結果のバランスを円グラフにして示してくれ、また級?段位で判定してくれます。アニメ絵がたくさん出てきて、はじめは子どものゲームのようですが、けっこう奥が深い。
実家の両親の場合、テレビを見ながら気軽に遊びたいときはこの「やわらかあたま塾」、真剣に取り組むときは「脳を鍛える大人のDSトレーニング」と、使い分けてやっているようです。
ただし、もうひとりの認知症の家族のほうは、これらのゲームであまり効果は出ていません。何回教えてもやり方を忘れてしまうのです。認知症になる前の予防、またはごく初期段階での訓練という意味でなら、これらのソフトはとても効果があると思います。