切った木を束ねていると、木々の向こうから馬のひづめの音が近づいてきた。
乗っていたのは、血のように真っ赤な紋章をつけた騎士だ。
「ライムント」
彼は燃える瞳で、俺をにらみつけた。
「あんたは、誰だ。俺を知っているのか」
「裏切り者め。魔女の色香に迷い、惑わしの術にかかって、おのれの役目を捨てるとは」
「役目?」
「忘れたのか。おまえは魔女カトリーネ・ナイハンに裁きの鉄槌を下すために、大教区から遣わされたというのに!」
「何の話か、わからない」
俺はゆっくりと顔を背け、再び材木の上にかがみこんだ。
騎士は馬上でひらりと剣を放つと、俺の背中に斬りつけた。
「元同志としての、せめてもの情けだ」
地面に膝をつく俺のかたわらに、騎士は短剣を放り投げた。
「もし痛みゆえに自分を取り戻したのなら、最期にこれで魔女を刺せ。そうすれば、おまえの叛きの罪は赦され、魂には天国への門が開かれるだろう」
騎士は去っていった。かすむ目に、赤く「L L」のイニシャルが彫られた短剣の柄が映る。
「Lang Lebe unser Bischof ――司教猊下万歳」――異端審問官の紋章だ。
ああ、そうだ。かつては、俺もこの紋章を胸に帯びていた。
異端審問官ライムント・ツェルナーが、俺の名前。
魔女を殺すために森を訪れた俺から身を守ろうと、カトリーネは俺のすべての記憶を封印した。
そして、夫婦として、偽りの幸福の中で暮らし始めたのだ。
記憶を取り戻しそうになるたびに、カトリーネは何度も俺に忘却の術をかけた。俺の体の無数の傷は、その呪術のたびに彼女がつけたものだった。
泣きながら、赦しを請いながら、妻は俺の体に剣を突き立てた。
短剣を片手に握りしめると、俺は森の小屋を目指して亡霊のように歩き始めた。
「+創作家さんに10個のお題+」
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