「オンライン文化祭・2010―音―」が昨日で閉幕しました。
充実したお祭りでした。一読、一見に値するすばらしい作品が集まり、たくさんの方から感想をいただいたし、自分も読書ノートを書きました。
しかも最後のほうに、掲示板で参加作品にインスパイアされた絵を、有志で投稿して大盛り上がりしました。私も久し振りに、ペンタブを持ってお絵かきしました。
さて、ここからは、後書きめいた自作語りになります。ネタばれになりますので、未読の方はご注意を。
私は「ここから出して」という短編を出品しました。
これがまた、とても難産でして、父の入院ということもあり、一週間前まで何も浮かばず。
ようやく構想し始めたのが、「メイドに雇われ、屋根裏部屋に住みこみ始めた少女が、階下の物音におびえる。夜になると屋根を散歩している謎の青年といっしょに事件を解決する」という19世紀ミステリ風ファンタジーだったのですが(笑)、プロットが進まず、あえなくボツ。
そこで、主催者の吉田和代さんの作風でもある「SFミリタリー」な短編へと急遽差し替えました。
そのとき苦肉の策で選んだのは、隣室との壁を叩いて通信するという題材です。
実際に、ロシアの強制収容所や、ベトナムの収容所でも、囚人同士が壁を叩いてコミュニケーションを取っていたという話も聞きます。
実は私は、「言葉が通じない同士が、次第にコミュニケーションを深める過程」を書くのが大好きなのです。今までにも外国人と日本人、異世界人と地球人、ロボットと人間、幽霊と人間など、いろいろ書いていますが、これからも懲りずにちょくちょく出てくると思います(笑)。
ああいう結末になったのは、やはりモロ趣味ですね。《SEDI》とは、「セフィ」をもじっただけだったりします。
ところで、ウツミが男か女かという謎に、みなさんの感想の中でも大きなウェイトを占めていました。いろいろ推理してくださった方もおられて、本当にありがとうございます。
結局どちらでもいいのですが(笑)、作者としては、「ウツミは女性」であると想定して書きました。
《SEDI》は、宇宙局全体を統括するコンピュータであり、当然宇宙飛行士志願者のデータも全部保存する役目を担っています。その《彼》が、ウツミの性別を知らないはずはありません。ウツミの入浴姿もきちんとカメラアイに焼きつけ、そのうえで画像処理しているはずです。
そのうえでのラストのセリフですから、きっと《彼》は、わかっていても男にしか見えないウツミをからかっているものだと思います。もちろん、女性にしか見えない男性をからかうということもあり得ますが。
作品はいったん発表された以上、すでに読者さまのものでもありますから、ウツミが男と受け取ることも、また正解です。性別のあいまいさを最後まで残せることが、日本語の一人称の便利なところですね。
さて、会期中に、同じ参加者の立神勇樹さんが、なんと「ここから出して」のイラストをくださいました!
ひゃあ、描いてくださったウツミの、中性的でいて、なんとも艶のある表情とポーズ。鼻血ものです(笑)。
立神さん、ほんとうにありがとうございました。後ほどギャラリーにも飾らせていただきます。
今年は「犬祭4」もあったし、たくさんの方と交流できて、本当にいい一年だったなあ。