先週土曜日、佐渡裕がプロデュースするウィンナ・オペレッタの名作「こうもり」の兵庫県立芸術文化センターでの初日を見てきました。
「蝶々夫人」「メリー・ウィドウ」と、毎年ハズレなしの佐渡裕プロデュースオペラ、今年は19世紀ウィーンの雰囲気をたっぷりちりばめたワルツ王=シュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」です。
「こうもり」といえば、ウィーンをはじめとしてヨーロッパでは大みそかに上演することが多く、華やかなお祭り騒ぎの楽しさが全編にあふれています。舞踏会のシーンでは本筋から外れて、バレエや歌手の独唱など、さながらガラコンサート風の出し物が挿入されたりして、脚色自由、「なんでもあり」のお芝居なのです。
あらすじは、いわばドタバタ喜劇、
明日から刑務所に八日間入ることが決まったアイゼンシュタイン侯爵は、うさ晴らしにと、公爵の舞踏会に偽名で出かけて、若い女の子をナンパしようとたくらみます。
一方、元カレに言い寄られて良い気分になっている妻のロザリンデも、変装してパーティ会場へ。さらに、一家の女中アデーレも、主人夫婦に内緒で、あこがれのパーティへ向います。
実はこの偶然の裏には、アイゼンシュタインにちょっぴり恨みを持つ友人の「こうもり男爵」のいたずらがあったのです。
三人が、それぞれ別れを惜しむふりをしながら、ついパーティを思ってウキウキしてしまうという「別れの三重唱」は、思わず笑いのこぼれる聞かせどころです。
初日のキャストは、ロザリンデに塩田美奈子、アイゼンシュタインに黒田博、アデーレは森麻季。
パーティの主催者であるロシアのオルロフスキー公爵役は、メゾソプラノの女性が充てられることも多いのですが、この公演では、世界的なカウンターテナー歌手のヨッヘン・コヴァルスキーが演じています。
そして、関西公演ということもあって、桂ざこば、宝塚歌劇出身の剣幸も出ているのです。ざこばの味のあるセリフ回しは、まるで吉本新喜劇のよう。
オケピと客席のあいだに花道が設けられ、また出演者は客席通路を駆け抜けるなど、全体的に観客との一体感がとても大切にされていました。
カーテンコールのあとにもう一度、たっぷりとダンスや歌があるところも、お得感いっぱいの演出です。
侯爵夫妻の夫婦仲の危機も、「すべてはシャンパンの泡のせい」とハッピーエンドになってしまうわけですが、最後の舞台挨拶のときに、桂ざこばが「私の両親も離婚したけれど、今晩はみんな家に帰ったら、夫婦仲良くしてや」という意味のことをおっしゃったのが印象的でした。
演出は「メリー・ウィドウ」の広渡勲、指揮者は、5月にベルリンフィルハーモニーとの共演を果たし、まさに油の乗っている佐渡裕。やはり、このコンビはハズレがありません。
開演15分前から、会場を走り回っていた謎の「怪人こうもり」と「蝶々」
4 thoughts on “喜歌劇「こうもり」”
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写真の男の人の頭は、まさかだんなさんでは?
うん、禿げ具合が似てるけど違うのです。旦那さまは私の隣の席でしたから。
コメントするのは初めてです。よろしく。2日目に観て来ました。はっきり言って、今回は全然ダメ。Merry Widow のときは面白かったのですが、今回は吉本新喜劇の「お笑い」になってしまって、ドタバタし過ぎ。日本語訳も曲のメリハリを無くしていて楽しさ半減、うるさく聞こえました。関西の大衆の笑いに媚びた感じがますます。。ヨッヘンコワルスキーは聴けてよかったし、部分的には面白かったけど、全体的に楽しめませんでした。今回はハズレでしょうね(少なくとも2日目は)。。。
an opera viewerさん、はじめまして。こんなド素人の記事を丁寧に読んでくださって、ありがとうございます。
今回はハズレだったとお感じなのですね。舞台はナマものですから、初日と二日目では違うということもありえますが(特に、ざこばさんはオペラは素人ですから、そういうことも考えられますね)、ドタバタ感が裏目に出たのかもしれません。
日本語上演に関しては、コヴェントガーデンロイヤルオペラのDVDを見たことがあるのですが、セリフは英語とドイツ語が入り乱れて、アドリブ満載だったので、母国語での上演がこのオペレッタの主流なのだと思います。
けれど、せめて歌だけは日本語訳でなく原語で楽しみたかったというのは、私も感じました。歌手が歌いにくそうに思えたのです。
オペラについて語り合えるのは、とてもうれしいです。またぜひいらしてください。