二ヶ月間続いた「オンライン文化祭2011 ―夜―」もいよいよ明日の大晦日で閉幕です。
これまで、少しずつツイッターで感想をつぶやいていたのですが、今日で小説部門、メディアミックス部門が終わったので、ブログにまとめておくことにしました。
本当は、それぞれのサイトを訪問して、直接感想をお伝えしようと思っていたのですが、如何せん、取り掛かるのが遅く、時間切れとなってしまいました。
本当に申し訳ありません。
(実はまだ、イラスト部門の感想を書き終えていません。閉幕までには、なんとか追加するつもりです) イラスト部門の感想も追加しました。
「オンライン文化祭」では、たくさんの方から感想をいただきました。ツイッターで140文字感想をくださったり、わざわざ訪問して長文のご感想を残してくださったり。また、イラストや、拙作の朗読を贈ってくださった方もおられました。
これらのいただきものは、閉幕後にギャラリーなどで展示します。
私もお絵描きBBSに何人かの御作に、ドヘタ絵を投下して、とても楽しかったです。途中で五十肩が再燃し、断念せざるをえなくなってしまいましたが。
主催の吉田和代さん、参加者のみなさん、楽しい二ヶ月間を本当にありがとうございました。
*メディアミックス部門
「星を見る夜」染井六郎さん
流れ星を助けて空に返す星見の話。水彩の絵がやさしい色合いで、童話調のお話にとても合っています。人の中に闇が移って来ているのではないか―なにげない言葉が心に残ります。星空が見上げたくなりました。
「秋一夜」カリキモトコ&梓猫さん
露散る待宵草と黒い雄猫に、恋人に去られた女性の涙がオーバーラップする。合作は先に書いたほうが存在感を得るものですが、これはどちらが先かわからない。文と絵がうまく溶け合っている証拠です。
「翠玉幻話」招夏さん
詩だけでもすばらしいのですが、写真が添えられることによって、さらに言葉が生きたものとなる。小さくはかない存在こそが、偉大で永遠で高貴なものであることを、やさしい視線で気づかせてくれます。
*小説部門
「ロード・オブ・ヘブン」吉田和代さん
一癖も二癖もある上官に、新米兵の初手柄。軍隊ものの醍醐味ですね。夜闇の中で敵に遭遇する恐怖と緊張が生々しい。読みやすく、しかも充実している。さすがに主催者さまの作品です。
「我が君は夜の王」中井かづきさん
徹底的に美しいものを美しく描こうと決めた筆致に酔わせていただきました。寓話であるとは知りながら、ふたりの王に愛される女性が、本当はどちらが好きなのかな、などと想像するのが楽しい。
「鬼人伝」 綾瀬翔さん
刑事、吸血鬼、鬼の力を持つ刀。こう私の好物ばかりが来るとヨダレを垂らさずに読むのがせいいっぱい(笑)。凪の父親と鈴との過去編や、後日談など、シリーズとして続けてほしいお話です。#オンライン文化祭
「コサライ」 染井六郎さん
死を受容すること、キリスト教の思想でもある「他の生のために自分を捨てる」ということは、人間にはとても難しい。それだけに主人公の潔さと、最後のコサライの答えに感動を覚えました。
「怪談 霊験屋備忘録より」らっきーからー。さん
シリアスなホラーだと思って読んでいたら、なんともユーモラスな展開でした。魅力的な登場人物たちに興味が湧き、つい本編が読みたくなってくる仕掛けもにくい。
「夜の夢こそまこと」らっきーからー。さん
教師と生徒、兄と妹。ありえないこの組み合わせが、なぜオンノベでは人気なのか、拝読して理由がわかったような気がします。そばにいて、全てを受け止めてくれる理想の恋人なのでしょうね。#オンライン文化祭
「アデルハイト・フォン・レーエンの手記」小林さん
手記形式を存分に生かした構成。ふたつの手記を付き合わせ、欠けている部分を想像する過程が、じわりと深い戦慄を呼び起こします。全部を書かないことも大切な小説の技法なのですね。
「鬼灯」招夏さん
「ゾンビ祭り」で登場したふたりの出会い編。食べたものがそのまま血肉になるという設定がユニークです。招夏さんのラブストーリーはなぜか読んでいて幸せになれる。マザーテレサの言葉に熱いものがこみあげました。
「金魚売」六条鎬さん
金魚という儚い存在に邪気が取りつく。他の人間から疎んじられながら、妖を救うために妖を祓う退治屋、四季一門の凛とした生き方がかっこいいです。シリーズ番外編なので、和風FTが好きな方は本編もどうぞ。
「星落ちる夜が明けるまで」祭歌さん
目隠しをされ囚われた少女が主人公。視覚以外の五感を用いた描写が生き生きと印象的です。そしてラストの解放感と美しさ。底抜けにお人よしな少女の言動が、読者をやさしい気持にしてくれます。
「猫と灰かぶり」都鳥さん
感情のない暗殺者が、人を愛することと罪悪感を知っていく過程がじっくりと描かれています。決して安易にハッピーエンドにしない最後まで丁寧な筆致。動きや匂いなどの描写も秀逸です。
「夜行剣 一番星」 藤茶葉小平さん
最初の一行でずっこけなければ(笑)、ハードボイルドな時代劇の世界にとっぷりハマれます。僧と剣客の会話に漂う含蓄、立ち回りの緊迫感。言葉のひとつひとつが味わい深いです。
「夜風は囁く」GBさん
長編の番外編だけあって、短編の枠を超えた広がりと奥行きを感じるのは、やはりしっかり構築された世界観に基づいているからでしょう。もちろん単独で楽しめるようになっています。
「夜の脱け殻」かみたか さちさん
暴力にさらされた者が、自分の意志を失って無気力になる描写がせつないです。タイトルにこめられた意味が、最後の文章を読んでわかりました。明かされた真実の中にも救いを感じるラストでした。
「竹林に香る」 菜宮 雪さん
人を想うことの強さとすさまじさ。乱世に生きる女性の、与えられた境遇でせいいっぱい夫を愛そうとする姿に心を打たれます。竹のさやさやという音が聞こえてくるようでした。
「月下の舞姫」芹沢優希さん
戦国の世、ただ一晩だけ素の自分となった男女の運命。しっかりとした時代考証に基づいた骨太な歴史ものでありながら、妖艶な夜の雰囲気にすっかり酔わされました。
「VAMPIRE」芹沢優希さん
やはり吸血鬼は古き良きロマンの中の住人なのですね。彼らに現代日本はすっかり生きにくい国になってしまったのだとあらためて思いました。伯父上のエピソードがぜひ読んでみたいです。
「〈ローズ〉の末裔」suzu3neさん
太陽をさえぎる〈ローズ〉によって夜と氷の世界と化した世界に生きる現人類と旧人類の葛藤。種族の壁を超える困難、そして互いを信じて歩むラストが感動です。世界観の構築がみごとな本格SF。
「夜を越えて」鹿の子さん
「夜を越えたい」という言葉にこめられた意味が最初と最後で違う。主人公の心の成長が鮮やかに描かれています。ふたりの女性があこがれと憧憬をもって互いの中に自分を見ている姿に、胸がきゅっとなりました。
「森の夢」古深 ろっかさん
失踪した父の行方を追い、夢幻の地へとやってきた娘。愛する者のために、愛されることを犠牲にする潔さ。家族の絆について考えさせられました。幻想の光景の描写が美しいです。
「常夜の帳」ジャッカロープさん
仲がいいのか悪いのかわからない兄妹のバーリトゥードな日常。コンテストでご一緒してからのファンです。息をつかせぬノンストップギャグは、一度笑いのツボにはまると止まりません。
「アーミン・プレストン卿と聖なる夜の友人(猫)」早瀬千夏さん
おなじみのビクトリアンコメディ。主従ものの醍醐味は、使用人たちの丁寧な物腰と陰でささやく本音のギャップですね。この後も楽しい展開が待っていそう。ぜひ続きを!
「歩く姿は」 茶林小一さん
小さい頃から群れることになじめない少女がはじめて経験する、大切な人といっしょにいる喜び。うん、私も同じだった。私もふくめてたくさんの人が共感するはず。胸が痛くなるほどなつかしい青春ストーリー。
「鵺が来たりて」ろくさん
今回サウンドノベルでも参加した私ですが、「文字だけでサウンドノベルが書けるんだ!」と思いました。鐘の音が、鵺の声が今にも聞こえてきそうな緊迫感。エネルギーの激突に酔い痴れました。
「ゆずり葉の系譜」koharuさん
奔放に育った公家の姫には、正体を見せぬ影がいつも付き従う。主従の固い絆の物語。側室とのお世継ぎ争いが迫真。血脈をつなぐための、したたかな権謀術数は、歴史ドラマとしても秀逸です。
「夜の記憶」五部 臨さん
逃避行を続ける子どもたちと幽霊騎士との一夜。適確な言葉を選び、短めの文章を用いて描写を厚く重ねていく、硬派ファンタジーです。老騎士がしぶい。彼の魂が少年に引き継がれていくラストに痺れました。
「夜顔」空蝉さん
白い洋館で夜、白い花とともにたたずむ美しい女性を少年は盗み見ていた。恋というのは、まさに生きるエネルギーそのものですね。狂いうねるような渇望の果てに、静かな結末が待っています。R15性描写あり。
「夜の「キミ」と、今宵オニごっこでも。」唯胡しょうみさん
毎夜、不思議な少女に会いに、僕は階段を上っていく。他愛ない夜遊びの描写から、次第に暴かれていく真相に鳥肌が。ラスト一文で染め替えられていくような余韻が残りました。
「カントコトロ」桐原さくもさん
アイヌ民話風のファンタジーです。情景を文章で読み解く快さを味わわせてくれる佳編。寒さと暖かさ、鋭さと柔らかさ、藍と白。五感がおおいに揺さぶられます。
「パンダ騒動」auroraさん
「魔王」少女に振り回される少年のお話。いきなりパンダが登場してくるなど、マンガちっくなナンセンスギャグです。「魔王」というのは、何も悪いことをしていなくても自称できる不思議な役職ですね。
「似非宗教」auroraさん
悪魔が人間を利用して大教団を作り上げる。その本部にロゼという謎の少女とその相棒が乗り込んでいく。キャラがそれぞれいわくありげで、背景に興味を引かれるのですが、本編が公開停止中で残念でした。
「今宵、メン・イン・グレイが」青波零也さん
本格SF長編の幕開けという趣き。超能力に目覚めた主人公を通して、強大な力を持つ功罪を考えさせられる…などと堅苦しく考察するより、純粋にバトルアクションを堪能するのが正しい読み方。
「おいしい夜食の作り方」楽遊さん
スランプ中の天才小説家が食べる夜食には、家族の壮絶な歴史と、生きる喜びと、たっぷりの肉汁がある。ユーモラスな筆致の中に、長編を読んだような充実感があります。ただし夜中厳禁。
「ハロー・バイバイ」あるるかんさん
僕と顔がそっくりな少女とのドッペルゲンガー的過去と現在。昨年も感じたのですが、この方の一人称はすごい。読んでいくうちに物語世界がねじれ、読者の足元を崩して、空間に浮遊させるようです。
「精霊術師のたまごと息吹」咲闇 紅羽さん
落ちこぼれの精霊術師の少女と精霊との攻防。主人公がけなげで可愛くて、つい応援したくなりました。淡い色彩の幻想的な情景が魅力的です。祖母視点のラストが物語に余韻を。
「月の夜、私は赤いドレスで」まあぷるさん
おなじみ「デビイ&レイ」シリーズの番外編は、仲間はずれにされた少女の青春グラフィティ。永遠に生きる吸血鬼と人間のつかの間の交流と別れは、せつなくも暖かく胸を打ちました。
「ヒイラギと夜の君」モギイさん
茶林博士流に言えば、すごいものを読んだ! 孤独な魔女が、閉じた闇の中で得体の知れない存在と心を通わせていく。人間の利己心を巧妙についてくる呪いとの戦いを経て、ふたりが結ばれる場面は美しい。
「Talkative Seawall」楠園冬樺さん
人生は重くて苦しい。でも、重荷を受け止めて癒してくれる存在がいる。自分が赦せなくても赦すと言ってくれる。題名はTalkativeですが、無言の持つ包容力を感じました。
「ぎんいろ」ナノハさん
落ち葉を拾う主人公が呟く謎のことば。その意味がわかったとき鳥肌が立ちました。二度目を読み返して、最初よりさらに感動する、そんなお話です。ナノハさんの書くヒーローは、いつもイイ男です(笑)。
「さよなら、銀河バスの夜」城之崎 灰流さん
バス停で十年前に別れた恋人に会った――静かに、ストーリーが運ばれていきます。「大丈夫、またいつか会えるから」の言葉がせつない。私たちは、人生に何回か、このバス停に立つのですね。
「カセイジンとしし座流星群」楠沢朱泉さん
皆既月食を見たばかりなので、共感もひとしお。こんなホームドラマみたいな火星人との同居生活、いいな。塾の生徒や火星人とのかけあいがユーモラスで面白い。ほのぼのと心が温かくなりました。
「桃の鬼」tomoyaさん
細部まで整った典雅な文章が紡ぎ出す光景は、まさに粋、まさに絢爛な色街、虚と実入り混じった鬼の世界。静から動への展開のあざやかさ。しぶい節回しの啖呵。美しい男たち。まるで歌舞伎の舞台を見ているようでした。
「僕と星の君」空凪燈莉さん
妖精狩りが行われている世界で、美しい囚われの妖精と彼女を助けようとする人間の少年の交流。悲しいお話ですが、悲劇を悲劇のままで終わらせない人間の意志と、作者の暖かい視線が救いとなっています。
「良夜のパレード」泉水藍夏さん
十五歳になった少女を迎えに窓からやってきたのは、夜の闇をまとった白いピエロ。彼とともに旅立っていく少女を、読者は一抹の恐怖を抱きながら見送る。きゅんと切なく胸が痛むような不思議な読後感のある短編です。
*イラスト部門
「今日の気分」鵜川さん
最初見たときは、けばい夜の女らしきネーチャンがいるなと思って、スクロールしていったら、あららびっくり。ウェブの特性を存分に生かした意外性が面白かったです。
「曇り空を変えた輝きは」鵜川さん
なるほど。きれいな星空は夜空の恋人たちの幸せのおすそわけだったのですね。では星の見えない曇り空のときは、離れ離れ? いつもふたりが幸せであってほしいです。
「月を見てた・月が見てた」カリキモトコさん
夜空を見上げる猫たちの可愛いこと! 彼らの目に映る月を、月も見ているのでしょうか。キャンバス地に描かれた絵のような画像加工がステキです。
「女神坐す星」カリキモトコさん
金星をテーマにした二枚組みの美しいイラスト。朝焼けと夕暮れの色、空気の透明感は、まさにこんな感じだなと思いました。影絵風のお城もファンタジックでステキです。
「水鏡月」Kさん
木の枝の一本一本の細かさ。ぼうっと淡く光る光と水面の影が幻想的です。メイキングがあるので、どのようにしてCGが作られるかもわかり、複雑な工程にあらためて感心します。
「ランプ」yamanunさん
幻想的な光景。金属の質感、景色の遠近感がすばらしい。真鍮のうさぎが入っているランプとは、もしかすると月の暗喩でしょうか。見ているうちに、自分も空に遊んでいるような気分になりました。
「鬼の灯りが照らす間だけ」橘高 有紀さん
水の底のような色合いと静けさの中で、人と鬼が手をつないでいる。禁忌を犯したふたりが穏やかな時を過ごせるのは、今だけかもしれない。イラストから次々と物語があふれだしてくるようです。
「仕事だよ♪」かみたか さちさん
夕暮れ時の空の美しさは、どんな絵の具でも表せないなと思うことがあります。彼らがせっせと塗り替えていたのですね。躍動感あふれる絵が楽しげです。
「あまりに月が綺麗だったから」都鳥さん
煌々たる月は、実際よりずっと大きく感じます。月に身を委ねる恍惚感。闇に生きる少女も、無意識に光を求めて踊っていたのかもしれませんね。小説のいろいろな場面がよみがえってきました。