ひゃあ、一月は去る、二月は逃げるとはよく言ったもので、このブログも二月にまったく何も書かないまま、三月になってしまいました。本当は、アルファポリスの恋愛小説大賞も応援したかったのですが、もうしわけないです。
気を取り直して、こちらもちょくちょく更新したいと思います。
久しぶりの記事は、きのう兵庫芸術文化センターで見た「錦織健プロデュース・オペラVol.5 セビリアの理髪師」です。
錦織健プロデュース・オペラは、前回はドニゼッティの「愛の妙薬」を見たのですが、けっこう私は彼のテノールが好きになってしまいました。コミカルな中にも情熱や悲哀を感じさせてくれる演技で、思わず涙ぐんでしまった覚えがあります。
錦織はアルマヴィーヴァ伯爵を演じ、彼の恋するロジーナは森麻季、理髪師兼なんでも屋のフィガロは堀内 康雄、ロジーナの後見人の医者バルトロを志村 文彦、音楽教師ドン・バジリオを池田 直樹という個性豊かな中年おじさま(笑)が脇を固めていました。
あらすじは、ロジーナにひとめぼれしてしまった伯爵が、彼女に求婚しようとやってきたのに、ロジーナの後見人バルトロに、ことごとく邪魔をされる。実はバルトロも彼女に惚れているらしい。伯爵はなんでも屋のフィガロを雇って、あの手この手で彼女の家に忍び込もうとするが、音楽教師ドン・バジリオや軍隊がからんで大騒ぎ。しかも、伯爵が身分を隠して偽名を使っているものだから、話はさらにややこしくなり…というドタバタ喜劇。
ロジーナは、決して待つだけの古風な女ではなく気の強い現代っ子。そのアクの強い役柄は、森麻季にぴったりだと思いました。
オペラ歌曲を習っている旦那さまが一生かかっても歌えるようにならないだろうという、すさまじい早口のイタリア語の歌曲の数々。コミカルな演技とあいまって、三時間近い舞台も飽きさせません。
実は恥をさらすようですが、私は「セビリアの理髪師」を長い間モーツァルトの作品だと思っていました。ロッシーニ作曲とは知りませんでした。
「フィガロの結婚」と同じ登場人物が出てくるのが原因です。実はこの二作は、もともと18世紀後半にカロン・ド・ボーマルシェの書いた「フィガロ三部作」のうちのふたつなのだそうです。
そのうち「フィガロの結婚」をモーツァルトが1786年にオペラ化、「セビリアの理髪師」はロッシーニにより1816年に初演されました。
時系列的に見るならば、「セビリアの理髪師」が先で、「フィガロの結婚」が後日談になります。これほど熱烈な恋で結ばれたアルマヴィーヴァ伯爵とロジーナですが、「フィガロの結婚」では、伯爵が起こした小間使いへの浮気心に、妻となったロジーナが悩まされ、バルトロはロジーナを取られた昔の恨みを晴らそうとし、ドン・バジリオは伯爵側についている…なんと、人間の心のうつろいやすいことでしょう。こちらを先に見たほうが、より「フィガロの結婚」を楽しめそうです。いや、幻滅するかも。結婚は決してハッピーエンドではありませぬ。
ちなみに、ボーマルシェの戯曲「フィガロ三部作」の第三作「罪ある母」では、彼らのその後はどうなったかというと、伯爵夫人ロジーナが「フィガロの結婚」で小姓役だったケルビーノと一度きりのあやまちを犯し、その不義の子を伯爵の子として育てているということらしいです。えー、ますます泥沼化の様相…。
錦織健プロデュース・オペラVol.5 「セビリアの理髪師」は、これから西日本、東京など4月初めまで全国で公演されます。
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