(きゃあ、遅れる)
私は南北問題の特別講演に滑りこんだ。
「…SN問題は」
(ふう、間に合った)
「世界的な…」
しんとした会場では、マイクの雑音が目立つ。
「…Nの増加に対してSは対数 logN でしか増えない」
(マルサスの人口論ね。人口が爆発しても、食糧や資源はさほど増えない)
「…いかにSを…」
(さっそく本題ね)
「…温度を下げて…」
(食糧危機って地球温暖化のせい? あっ、投機の加熱って事か。確かに冷却が必要よ)
「…フィルター…」
(投機マネーをspamとして排除する訳ね)
「…サンプルを増やして…」
(品種を増やすってこと? そもそも代替燃料のせいでの食糧危機なのに)
「…Nを減らす…」
(げ、これは思わなかった。確かに少子化は地球には優しい。でも途上国の口減らしとなると……)
「…閾値を高くして切る…」
(ノイズとして殺すって事? …とすると、わざと食料を高騰させて、飢餓や内戦を煽り……悪魔!)
思わず席を立ち上がると、回りは理系の奴らばかりだった。次第にホワイトノイズに支配される頭の中に微かにマイクの声が聞こえて来る。
「…N=サイト数、エントリー数、レス数、文字数…」
はっとして、あらためて題目を見直す。
『情報学講座:ノイズレス設計 ―ネットのS/N比の改善に向けて』
――教室を間違えた!
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第78回タイトル競作参加作品を改稿したものです。
提出した作品はこちら(ノイズレス13)。逆選王をいただきました。