正しい教育によって国際競争における日本の位置を高める事は、国および関係諸機関の果たすべき最大の使命である。教師の資質の問われる昨今、学級経営と学力指導の両方を一教師に求める事は困難であろう。学校の評価が試験結果並びに進路に強く依存している事を考えるならば、教師は学力指導に専念すべきで、故に学級経営の簡易化が急務である。
特定生徒に対する徹底的差別により集団が鎮静化する事は、経験的に広く知られている。弱者に人権は存在しない。
……公には存在しない通達だな。校長以上で、しかも真意を理解出来る者しか読んではいけない。君のように読解力の無い教師は特にね。
学力なんてどうでも良いんだ。欲しいのは、企業や政府にとって善良な羊となる生徒だ。黒い羊を白く染める調教、その為の独裁教育なんだよ。だからスケープゴートは白羊から選ばなくちゃならん。白を黒と言いくるめてこそ秩序が保たれる。
君は愚かなことをした。本物の黒い羊を選んでしまったんだからな。マスコミ沙汰となり、皆が困っている。心的傷害も立派な傷害罪だ。
まあ一度の失敗にめげないで頑張ってくれ。今度は君が黒い羊だ。檻の中を経験すれば立派な教師になれると言うぜ。 ……もっとも、教師の口が有ればだがな。
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第81回タイトル競作参加作品を改稿したものです。提出した作品はこちら(黒い羊21)。
この短編の発想の経緯については、BUTAPENNが「黒い羊」というタイトルでブログ記事を書いたことがあり、そこに書いた事件を根底としています。
→ →ブログの記事「黒い羊」へ。