同胞の存亡を一身に担って、A国との会談に臨む。
「我が国は常に君たちの味方だ」
バーボン同様に口当たりは良いが、我々をただの金づると見ているだけ。だが背に腹は替えられない。
次のF国とはワインをがぶ飲みして終わった。死の商人の出る幕がないせいだろう。
幸先よいと思った瞬間、意識がすっと遠くなる。
そうだ、今は博士の新しい催眠治療装置の試験中だった。点滴と電磁刺激の組み合わせで悪夢を快夢に変えるという画期的発明。助手の私は強制的に起こされては、状況を報告して夢に戻る。
「君たちの目的は、決議かそれとも共存か。米越が事実上和解した歴史を勉強し給え。正義を振り回すのは馬鹿のやる事だ」
原則論のR国とも、ウォッカを十本空けた挙句に意気投合。「我が領土と権益が守られる限り静観する」との譲歩を引き出す。
最後の強敵は鍵を握るC国。失敗続きで、諦め半分に設けた会食で大逆転した。杯を交わすごとに相手の理解度が良くなり、経済特区の要人と会う頃には大歓迎を受けた。紹興酒で乾杯し食卓につく。
「広東名物、蛇の唐揚げです」
「ぎゃあっ」
八つの口から泡を吹いてぶっ倒れた。遠くで博士の声が聞こえる。
「こいつめ、ウワバミだったのか」
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第86回タイトル競作参加作品です。会場はこちら(たぶん好感触10)