「ぶた仙」名義で、山仙さんとの共作を「500文字の心臓」に投稿し始めて、はや数年(←何年か調べないヤツ)。
ついについに、正選王をいただきました。
今まで二度ほど逆選王をいただいていたのですが、正選王は初めてです。
ちなみに、「500文字の心臓」のシステムを知らない方に説明すると、
参加者は、共通のお題に基づいて500文字以内の作品を匿名で書き、読者は選評掲示板において選評とともに記名投票を行ないます。
正選は「もっとも良いと思う作品」に投じるもので、○でふたつ。あるいは◎をひとつでも可(◎は二点と数えられる)。
逆選は「もっとも悪いと思う作品」に投じるもので、×がひとつのみ。
次点は△で最大二つ。
このシステムの面白いところは、逆選は正選に次ぐ栄誉だとたたえられることで、逆選王はお題案を提示し、正選王がその中から次回のお題を決定するという権限を、それぞれ賞として与えられます。
で、今回「ぶた仙」は「鈴をつける」というお題の作品で、○5、△1 ×0をいただきました。
もうおひとり、○5、△1、×1を取られた方がいましたが、同数ならば逆選の少ないほうというルールにより、わたしどもが正選王を得ることができました。
受賞作品を掲載します。
すでにペンギンフェスタで頭がいっぱいだったことがよくわかります。
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「鈴は可愛い生き物がつけるものと相場が決まっている。もっとも、それは地上を移動する対象に限られ、魚や鳥は対象外だ。ペンギンはどうなのか? それが私の実験動機だ」
黙々と歩く彼らから、雪片が体の動きに合わせて零れ落ちる。しゃらしゃらと。
「黄色い識別リングの代わりに、ちろちろと」
生死をかけた行軍には、およそその軽やかな音色は似合わない。
「ヨチヨチ歩くたびに、楽しげな音が聞こえてくる」
身体をすり合わせ、互いの体温でわずかな暖を取る。零下60度の吹雪の中では呼吸すら困難だ。立ち止まるな。さもなくば死。個の死、子孫の死、種族の死。意識が遠のくたびに、高く鋭利な音色が、倒れずに歩けと鼓舞する。
「やがて、音が海に飛び込む。ちろりん、ちろちろ。餌を求めて、矢のように泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ」
嵐が止み、太陽の昇らない空から星くずが零れ落ちる。しゃらしゃら。沈黙の中で響くのは、
「南極海は、何千、何万もの天上の音色に満たされた。時速十キロの高速が作り出す奇跡」
清かな鈴の音。
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このブログでおこなっていた「500文字作品短編・中篇化」構想ですが、投票いただいた結果、「水溶性」がトップ、「ドミノの時代」「天空サーカス」が次点で、このうちから、山仙およびBUTAPENNがリライトすることになりました。
ペンフェスに掲載する予定ですので、しばらくお待ちください。