2014年3月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1680ページ
倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)の感想
大戦末期という時代の中にあり、学徒動員や空襲に翻弄されながらも、学校というのは、やはり密室なのだなと思う。リレー小説と手記が交互に来る構成で、妄想と現実が分かちがたく蔓のように絡まり合う。甘美で退廃的で、次の瞬間には脆くも崩れ去ってしまう砂糖菓子のようなはかなさの中で、「べー様」のたくましさが物語を最後までつなぎとめる。個人的には戦時下のミッションスクールのエピソードが興味深かった。
読了日:3月3日 著者:皆川博子
カエサル『ガリア戦記』―歴史を刻む剣とペン (書物誕生―あたらしい古典入門)の感想
本書は大きく二部に分けられる。まず最初にガリア戦記が同世代と後代に与えた影響、また歴史書、文学書としての価値の評価から始まり、文民統制、戦争における慎重な手続き、境界線と国家のありかたなど、ローマを形作る基本的な理念まで話はおよぶ。第二部では、カエサルがガリア戦記において、それらの手続きを踏みつつ、常にガリアの蛮勇に対比してローマ的武勇、つまり作戦と自制と忍耐をもって勝利を収めたことを描いていることを明らかにする。
読了日:3月6日 著者:高橋宏幸
優雅でみだらなポンペイ―古代ローマ人とグラフィティの世界の感想
ヴェスヴィオの大噴火により一夜にして火山灰に埋もれてしまった古代ローマの町ポンペイ。この町の壁に残された落書きに注目して、選挙、見世物、恋愛模様など、当時の人々の生活風景を描き出す試みが興味深い。エピローグの古代ローマ人の識字率など、やや学術的な論文が、気軽な読み物と混在している。
読了日:3月15日 著者:本村凌二
シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))の感想
原作はチベットの民話だそうだ。貧しい国の王子が国民を救うために、苦難の旅の果てに神人から麦の種を盗む。しかしそのことにより罰を受けてしまい…。カラー絵が柔らかく美しい。主人公たちの容姿はナウシカやアスベルを思い出させるほか、その後の宮崎アニメにつながる要素がいっぱい。
読了日:3月15日 著者:宮崎駿
ローマの道 遍歴と散策―道・水道・橋の感想
古代ローマの史跡を訪ねて、ヨーロッパの各都市をめぐる旅紀行。道、橋、水道橋、都市建設などに関する豊富な知識を披歴しつつ、ほほえましい夫婦模様や食べ歩きのメニューが織り込まれている。これだけ多くの現代の都市にローマの遺跡が保存され、ときには住人がまったく存在を知らないまま住んでいるのが印象的。
読了日:3月21日 著者:藤原武
ピカルディの薔薇 (ちくま文庫)の感想
読んでからシリーズものだと知った。鼠や寄居蟲などの生き物の話はグロテスクなのだが、不思議に嫌悪感は感じさせない。もの悲しく、ひやりと冷たく、夢と現のはざまをさまようような文章に酔いしれる。あとがきどおり、「真珠」のような佳品ぞろい。前作も読んでみたい。
読了日:3月29日 著者:津原泰水
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