2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1210ページ
まぐだら屋のマリアの感想
生きることに疲れた人を引き寄せるエアポケットのような食堂「まぐだら屋」。ネットもテレビもない環境で、ただ食べることが究極の癒しとなる。聖母を思わせる店主のマリアだが、聖書のマグダラのマリアは娼婦と呼ばれる罪深い女だ。彼女の謎を縦糸に、最後までぐいぐい読ませる。聖書をもじった人名、地名が出てくるのは、食品偽装、引きこもりという生々しい題材を扱っていながら、寓話、ファンタジーとして読んでくれということなのだろう。
読了日:4月4日 著者:原田マハ
コロッセウムからよむローマ帝国 (講談社選書メチエ)の感想
コロッセウムで行われた試合や剣闘士の生活について書かれているかと思いきや、この本の大半はそれを見ている観客席に焦点を当てている。戦士共同体であるローマ社会の本質、元老院と解放奴隷などの階級制度を論じて興味深い。
読了日:4月16日 著者:島田誠
シャイロックの子供たち (文春文庫)の感想
ひとつの支店を舞台にした時系列ばらばらの群像劇……と見せかけて、実は長編ミステリ。商業誌の連載に書き下ろしを付け加えて、きちんとまとめている。出世の本線からはずれて引き込み線に入っていく銀行マンたちの焦りと怒りと家族愛に胸が痛くなる。夫の自殺や過労死、うつ病は、銀行員の妻が絶えず恐れていること。身につまされる。
読了日:4月17日 著者:池井戸潤
新バイブル・ストーリーズの感想
神ということばが一度も出てこない聖書物語。作者のあとがきには、聖書の人物たちが「なぜ、そうふるまったのか」を書きたかった、とある。むしろ、聖書をモチーフにして想像の翼を働かせた寓話であり美しい散文詩である、と言ったらよいだろうか。他人を暴力で支配し、自分と異なる人に非寛容な生き方と、すべてを受け入れる穏やかな生き方を対比させている。まさしく現代への警鐘である。
読了日:4月23日 著者:ロジャー・パルバース
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