皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上の感想
12世紀、ルネサンスに直結する近代的な理念の持ち主がすでにいたとは。信仰がすべてを支配する中世にあって、法王と皇帝の役割を明確に区別して考え、法による支配を目指す。十字軍ではアラビア語を流暢にあやつって敵と交渉、無血でエルサレムを奪還する。部下に恵まれ、痛快な人生を送った人物でありながら、長子とは心が通じ合わなかったのが哀しい。
読了日:9月1日 著者:塩野七生
舟を編むの感想
冒頭から結末までに十五年以上の月日が流れている。だからこれは、ひとりの人物に焦点を当てるというより、群像劇。辞書の刊行成った翌日から改訂の作業が始まる、その航路の果てしなさに胸を打たれた。
読了日:9月5日 著者:三浦しをん
ジロンド派の興亡 (小説フランス革命)の感想
ロラン夫人のサロンに集い、勢いを増しつつあるのは、戦争に肯定的なジロンド派。彼らを内閣に引き込むことで、ルイ16世は外国の介入による王政の復古を目論む。一方、左派グループは、合従連衡でますます混沌を深める中、主張がブレなかったロペスピエールが存在感を増していく。 王妃に対するロラン夫人の八つ当たりが、やがて時代の奔流となっていくのか。
読了日:10月16日 著者:佐藤賢一
皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下の感想
この人の地平は広い。東西の十字路シチリアで育ったゆえか。数か国語を操り、ルネサンス前夜の中世で法治国家と政教分離を掲げて、生涯幾度となく法王に破門され、鷹狩りをこよなく愛して専門書まで物し、11人の正妃と愛人のあいだに子をなしながら、トラブル一切なし。いったいどれだけのパワーと才能がひとりの男に集まったのだろう。まさに「世界の脅威」が彼の代名詞にふさわしい。
読了日:10月31日 著者:塩野七生