「日本沈没~希望のひと」をわくわくしながら見ています。いよいよ次が最終回ですね。第7話で、石橋蓮司演じる里城副総理が、日本沈没の事実を突きつけられたとき、「国民は裸同然で言葉も通じぬ異国に放り出される。そんなことあっていいはずがない」と叫ぶのですが、7年間の海外生活を送ってきた私にとっては、あまりにも切実なことばでした。言葉を習得し、現地の人との交流にたどりつくまでの苦労は、多少なりとも経験したなあと思ったのです。
もちろん、「裸同然」ではなく、駐在員という企業のしっかりした後ろ盾をもらっての生活ですから、比較にはなりませんけれど。
もう20年以上前のことですから時効だと思いますが、私の夫は、タイの地方都市に支店を設立するという任務のために、赴任しました。当時は新聞に「支店設立」のかなり大きな広告が出たものです。支店といっても、日本人の支店長以下、現地スタッフ数人。夫はバンコクから車で片道2時間(当時のバンコクの道路は超渋滞で、時に3時間以上)の支店に毎日通って業務に勤しみました。
ところが、それからまもなく、あれほど景気のよかった東南アジアを経済危機が襲います。いわゆるアジアバブルの崩壊です。
アジア通貨危機(アジアつうかきき、英語: Asian Financial Crisis)とは、1997年7月よりタイを中心に始まった、アジア各国の急激な通貨下落(減価)現象である。東アジア、東南アジアの各国経済に大きな悪影響を及ぼした。
Wikipediaより
震源地であるタイの経済は一気に冷え込み、夫はその数年後、日本に帰国するときに、その支店を閉鎖する羽目に陥ってしまったのです。わずか4年、初代支店長であり、最後の支店長でした。自分で開いた支店を閉鎖して帰るのは、どれだけ悔しかったでしょう(悔しいなんて顔は全く見せませんでしたけどね)
そして、その後、夫を派遣した会社も、幾度かの統合を経て、社名さえ消え去ってしまいました。
今の日本、新型コロナ禍による不況の底が見えるのは、これから先のことでしょう。始めた事業を心ならずも閉じなければならない苦しみを味わう人が、きっとこの日本にはあふれるに違いありません。
どうか、その方たちが希望を失わないように祈ります。件のドラマ「日本沈没」の副題が「希望のひと」というのは、今の時代に「希望」が何よりも大切な、誰も奪い去ることのできない財産なのだという思いが込められているのでしょう。