小さいとき、沢庵のしっぽが私のおやつだった。巻き寿司は端から切り落とされる穴子のしっぽが一番好きだった。トランプの豚のしっぽが得意だった。
美味しいばかりでない。謎と神秘も備え持つ。ほうき星のしっぽでは、太古のアミノ酸が蒸発しているという。狐狸が化けるのもしっぽの力だ。オーロラだって今でも狐の尻尾の仕業かも知れない。
そして何より機能的。塀の上の猫を易々と歩かせ、サルの序列と示し、トカゲの身を守り、オタマジャクシの動力を担い、馬からハエを追い散らし、アリクイに日陰を与えるのだ。だから犬もしっぽをふる。
今でもしっぽは私の大好物だ。
そろそろ急がないと。今晩は彼と二度目のデート。余裕の笑みの下に、どんなすごいのを隠しているのだろう。私のが食べられる前に、早くいただきたい。
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第93回タイトル競作参加作品です。会場はこちら(しっぽ13)