2013年11月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1558ページ
火宅の人 (上巻) (新潮文庫)の感想
不倫という言葉など、まだない時代だったろう。四軒の家を持ち、妻以外の女性を持つ。おそろしく破滅的な生き方を選び、死に急いでいるように見えるのに、その生き方には、常識人には持ちえない、すがすがしい解放感を感じさせる。途方もない筆力に、ときおり震えが来る。
読了日:11月1日 著者:檀一雄
93番目のキミの感想
合コンに連れて行って女の子にモテたいという動機でスマロボを購入した主人公。自分のことしか考えていない未熟な若者が、ロボットとの交流を通して、他人を思いやる心を持つまでの成長物語。ひとつの不祥事で全体が否定される結末が悲しい。今の社会がそうだから。作者についてよく耳にする、「小学生の作文程度の筆力」と取るか、平易で簡潔な文章と取るかは、読む者によって意見が分かれるだろう。
読了日:11月11日 著者:山田悠介
政と源の感想
三浦しをんの小説には、よく元気な爺さんが出てくるが、彼らが主人公だと、こんな話ができあがるのだ。いつものように、楽しくてハチャメチャで、でも心のどこかでいつも死や永遠を考えている老人たち。「来年の桜を見られるのか、俺たちは」というつぶやきは切ない。ふたりの若いころのイラストにちょっと萌えました。
読了日:11月26日 著者:三浦しをん
火宅の人 (下) (新潮文庫)の感想
読み終わって浮かぶのは、「旅」という言葉だ。主人公はいつも旅をしている。家への帰り方を忘れたかのように、がむしゃらに居場所を変え、食べることを追い求めている。家庭というシステムに馴染めなかったのだろう。絶対的な孤独の中に沈み込むラスト。自由と孤独は表裏一体のものなのだ。「天然の旅情」という言葉が頭に残る。
読了日:11月28日 著者:檀一雄
2013年12月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:743ページ
光の感想
過去におかした罪という絆があまりにも強すぎて、目の前にいる人を愛せない登場人物たち。ついに暴力から救われることはない結末は、暗い海の底に沈んでいくようだ。もし、その底に一筋の光が射し込んでいるとすれば、椿の咲く情景。夫の過去を知った妻が、彼を理解できる日は来るのか。愛することができず、愛するふりをして生きている人は、この世界にはとても多いのかもしれない。
読了日:12月6日 著者:三浦しをん
ほろびぬ姫の感想
自分の死期を知った夫は、生き別れになっていた一卵性双生児の弟を探し出してきて、若き妻を託す。「あなた」という二人称が兄なのか弟なのか。判断するには、舐めるように文章をたどるしかないという仕掛けの中に、読者は妻の混乱を共有する。夫の愛情の裏に、妻に楔をうちこむように自分の存在を遺そうとする死にゆく者の執着が見えてくる。結局、男たちに女の幸せを決めてもらう必要などないのだ。
読了日:12月9日 著者:井上荒野
ローマ帝国愚帝列伝 (講談社選書メチエ)の感想
時間がなくて全部は読めなかった。時系列ではなく、テーマごとに数人ずつをまとめてあるので、歴史書としては読めないかもしれないが、読み物として面白い。ローマ帝国について俯瞰的な記述も随所にはさみ、なかなか図表資料も豊富。
読了日:12月22日 著者:新保良明