タイで軍事クーデターが起きたと大きく報じられています。
テレビで、バンコク市内を走る戦車などのものものしい映像が流れ、テレビ局の占拠、市内の会社・学校の臨時休業、外務省からもタイ渡航自粛の情報が出たりと、かなり緊迫した状況に見えますが、現地にいる人は案外のんびりしているのではないかと思います。
現に、第一報は日本からのニュースで知ったという在留日本人も多いそうな。確かにタイ語があまり話せない日本人にとって、頼りは日本からのNHKのニュースと新聞、ネットと口コミですから。
だいたい軍事クーデターというと、日本人は二・二六事件のような緊迫した流血の惨事を思い浮かべてしまいますが、1932年に立憲君主国になってから16回もの軍事クーデターが起きているタイは、実はクーデター慣れしている国なのです。そして、おだやかな国民性(必ずしも一概には言えませんが)を反映してか、シナリオどおりに運んでいく、静かなクーデターが多いのです。
クーデターの首謀者たちが、テレビカメラの前で両手を合わせてワイの挨拶をするのを見ると、なんだか微笑ましくさえ感じてしまいます。
過去あったクーデターでもっとも最近のものは、1991年、当時のチャチャイ政権に対して軍が起こしたもの。そのときは、プミポン国王がクーデター首謀者を一喝して終結したとか。
時の政権の腐敗 → 国民の不満高まる → 軍部の蜂起 → 軍事政権 → 国王の調停 → 文民政権へ移行
という構図が今回もあてはまると言えそう。
タイ人にとって、現在のプミポン国王に対する敬愛と信頼は絶大なものがあります。ほとんどの家や個人商店に行くと、国王ご夫妻の肖像画がかかげてあります。
「国王がそうお考えになるのだったら正しい」と国民も軍人も政治家も素直に受け入れてしまうので、よほどのことがないかぎり、タイの国情がガタガタになることは、まずありえないと言っていいでしょう。と言っても、今の国王がご存命中の話です。次の国王になる皇太子はかなりアホだといわれているので(笑)、タイが不安定になるとしたら、未来のことでしょう。
ただし、国王は現在のタクシン首相がもともとお嫌いのようなので、今回のタクシン政権に対するクーデターは、国王自らが事前に承認していた可能性もあります。
いずれにせよ、民主主義の原則を無視した政権移行はあまり誉められたことではないのは間違いありません。