Skip to content

BUTAPENN DIARY

オンラインものかき・クリスチャン・兵庫県人のBUTAPENNのブログです

Menu
  • エッセイ
  • トップ
  • ABOUNDING GRACE
Menu

「オンライン文化祭2010」読書ノート(1)

Posted on 2010-11-08 by BUTAPENN

11月3日から開幕した「オンライン文化祭2010」(吉田和代さん主催)が盛り上がっています。
「音」を共通テーマとした競作企画。小説部門33作品、イラスト・漫画部門6作品、メディアミックス部門5作品という大規模な参加人数となりました。
参加者同士の感想交換も活発で、ブログやツイッターを使ったり、個別にメールをやりとりしたりしています。
私は、二回にわけてブログに、簡単な紹介と感想を掲載しようと思います。これを読んで興味を覚えてくださった方は、ぜひ会場にお越しください。
「オンライン文化祭2010」はこちら
紹介文はネタばれにならないようにせいいっぱい努力しましたが、場合によっては、ネタばれと感じられるかもしれませんので、ご注意ください。
またコメント欄に、今までいただいたご感想へのレスを入れています。どうぞご覧ください。


(作者の敬称略)
*小説部門
「その音を聞かせて」   吉田和代
引っ込み思案の奈菜と転校生の裕也は、本好きという共通点から会話を交わすようになる。しかし彼には秘密があって…。
前半のほのぼのと初々しい学園恋愛ものから一転して、後半は命というずしりと重いテーマが語られます。襟を正して読みたくなる力作です。

「耳をすまして…」  らっきーからー。

シリーズ短編「新説 若紫の恋と日常」のひとつ。シリーズ最初の「ワカムラサキ」を試しに読んでみると、面白さが倍増します。あの傍若無人な先生が意外に繊細な姿を見せるそのギャップに、乙女は弱いのです。
「愛の終わりはどんな歌?」  染井 六郎
結婚十二年目の仲睦まじい夫婦に、ある日突然妻から切り出された離婚。ちょっとショッキングな状況ですが、相手を思いやる愛情が次第にじわりと伝わってきます。とても複雑な生い立ちを背負った登場人物は、染井さんの別小説からの登場ですが、あえてそれらを読まずに楽しみました。
「魔女の嫉妬」  染井 六郎
かつては王弟陛下、今は女性となって、傭兵カイと幸せな結婚生活を送っているフェリア。しかし、彼女を誘拐しようとする陰謀がもちあがる。追いかけたカイは、どんどんと時をさかのぼっていき…。不思議な運命に導かれた人々の恋愛模様です。『王弟陛下の青』の登場キャラの番外編です。
「海女神 ムイ・ヤハィタ」  鈴子(りんこ)
化け物と呼ばれる異種族と戦いながら海で生きる漁師たちを、美しい歌で守る海の女神ムイ・ヤハィタ。海に落ちた少年テナドは、洞窟で不思議な声を聞く。ふたつの種族の交流が、しっとりした描写で描かれ、読後は、心に長く続く余韻を残します。
「その音楽家の結論」  楽遊
最高の音楽家の両親のもとに生まれた息子は、極度の音痴だった。「最高の音とは何」という息子の問いに答えるために、父は人生のすべてを懸けて最高の音を追い求める。寓話風の哲学的探求物語ですが、難解ではなく、ぐいぐい読ませます。人生のすばらしさを感じさせてくれます。
「サウンド×ノイズ」  あるるかん
引っ越してきた安アパートで、主人公の大学生は階下の住人・緒地と、隣室の少女・乙町と知り合い、楽しい日々を送り始める。しかし彼の日常は少しずつ綻びを見せ始めた。意識は途切れ、ことばはノイズにまみれて…。読み進めるほどに戦慄し、最後の乙町の独白が衝撃でした。
「鈴の音が聞こえる」   芹沢優希
新しい家に家族で越してきた綾乃は、引っ越し当日に窓から鈴の音を聞く。こうやって新しい世界に身を置くとき、人は異次元が垣間見えるのかもしれませんね。ホラーと分類できるかもしれませんが、恐くはなく、むしろ暖かい気持ちが湧いてきました。
「無音の響き」  GreenBeetle
「RはリドルのR」という短編シリーズの新作。男勝りの主人公ヒカリの友人が姉のオルゴールを壊したと言って泣きついてくる。しかし大学の原田先輩は、これは初めから壊れていたというのだが…。コミカルな文章、ミステリ好きのGBさんらしい練られた謎解きが楽しい。
「絶対保証の目覚まし」  ことなあやり
寝坊の佐恵子が、誕生日ブレゼントに彼氏からもらった目覚まし時計が鳴らない。彼氏は、お詫びにとレストランに連れて行ってくれたのだが…。うーん、策士の彼氏がステキです。読後、ほのぼの幸せな気持ちになれること、絶対保証。
「無音カウントダウン」  ジャッカロープ
あと五秒で爆発する時限爆弾に向かって、私は突進する! たった五秒のできごとを超スローモーションで描きだしてくれました。すばらしいギャグセンスに拍手です。
「これからと、キミへ」  ayu-i
誕生日にキミに歌を贈るから、いっしょに文化祭で歌おう。読んでいて、青春だなあと遠い目になる。最初から最後まで「キミ」に語りかけるモノローグ体の文章が心地よいです。ひとつの曲を作り上げるって確かに「奏者の化学反応」だと思います。
「無音剣 細波」  藤茶葉小平
「犬祭4」に引き続き、藤茶葉先生の時代ものが登場です。家のために剣の道をあきらめた男が、ふたたびふるう秘剣。そして夫婦の物語。隙のない確かな筆致にSFチックなスパイスが利き、エンターテインメントのてんこもりで楽しませていただきました。
「アルブレヒトとランツェ」   小林
出奔した兄の身代わりになることを強いられ、やむなく男装する伯爵令嬢アルブレヒトは、駐屯地の砦で不気味な咆哮を発する壺を発見する。男前な令嬢と、苦労人の少年兵ランツェとの息の合った軽快な冒険活劇。壮大な世界観に基づいて構築された物語の一部であるという味わいがします。
「午前2時の音戯話」  立神勇樹(たつかみいさぎ)
平凡で能天気な春海は、悩みがないと言われる楽天家。ある夜、街に流れるトランペットの音に惹かれて出かけ、ひとりの少年に出会う。人と比較されることの苦しみと、自分らしく生きることの喜びを丁寧な文章で描いていて、心を打ちます。
「このバカSFがすごい!」  茶林小一
考古学者が五百年前のオンライン小説を発掘し、見つけたものとは…。未来からの視点を据えることにより、今のオンライン小説界の閉塞感と、それを打開しようとする挑戦を描きます。守りの小説から攻めの小説へ。「彼らに失うものは、もう何もない」の一節をしみじみと実感中。

4 thoughts on “「オンライン文化祭2010」読書ノート(1)”

  1. butapenn より:
    2010-11-09 00:33

    染井六郎さま
    こちらこそはじめまして。たくさん出品されていて、多彩な方でいらっしゃると尊敬します。
    タイトルは、これはもう確信犯でして、このタイトルから想像されるストーリーをさらにひっくり返してやろうという目論見がこめられています。
    意外性を感じてくださってうれしいです。
    >私も、ウツミの性別が気になります!(笑)
    これは、もう皆さん気になっておられるでしょうが。私としては染井さまの小説に登場する「性差がフレキシブルな人間」というのが、このお話ではふさわしいのではないかと思っています。宇宙を翔ける友情には、男女の別はないのです。
    吉田和代さま
    お世話になりました。
    タイトル案を提出したのが、開催日の6日くらい前だったと思います。そのあいだホラーだと思ってくださっていたのですね。
    私は実は、吉田さんの「バディ・システム」のような近未来・軍人ものを、すごく意識して書いたのです。
    「音」というテーマをどう消化するか、とぎりぎりまで悩んで、無音状態から音によるコミュニケーションにのめりこむ話を思い付きました。そこを「さりげないテーマの消化」と言ってくださって、最高のほめことばです。
    いえいえ、もちろんあれは、もろにガンダムのハロですよ。私の脳内でも。
    ツグさま
    はじめまして、ご感想をありがとうございます。
    ホラーと思って読み始めてくださったということは、私のひっかけにハマりましたね(笑)。
    ピュアな青春ものだなと思ったとき、「隣に誰もいなかった」というセリフのところで、やっぱりホラーかと混乱してくださったのは、作者としてはとても嬉しいことです。ありがとうございました。
    GreenBeetleさま
    GreenBeetleさん! 不義理をしております。返信不要に甘えっぱなしで申し訳ありません。
    >世界観、主人公の置かれた状況、システム、そういったものが本当に過不足無く描かれていて
    みなさまの書かれたものを拝読し、六千字では足りなかった、もう少し書き込むべきだったと反省していたのですが、このお言葉に救われました。
    極限状態で知恵を絞って苦境を打開するというシチュが大好きな私にとって、こういう監禁状態でのコミュニケーションというのは、大好きな題材でした。ウツミはもう少しうろたえてもよかったとは思いますが、クールガイなのですね。
    あ、「ガイ」と書いてしまいましたが、ウツミの性別についてのGBさんのお考えは正しいです。でもこれは、言わぬが花ですね。
    りいさま
    感想ありがとうございます。
    >もしやウツミも囚人?嵌められた?
    おお、その手があったか。実はウツミは宇宙飛行士候補ではなく、囚人だったというのは、すごく面白そうなアイディアですね。このシチュは、いくつものバリエーションができそうです。
    最後の一行でにやりとしてくださったと聞いて、私もにやりです。
    香下若菜さま
    香下さん、ペンフェスのときはお世話になりました。もうあれから三年が過ぎてしまったのですね。こちらこそ、ご一緒できてうれしいです。
    意志疎通に苦労しながら、少しずつコミュニケーションの幅を広げていくという題材が、私はすごく好きなのです。外国語習得の過程にも通じるものがありますよね。
    まさかの結末と感じていただけて、うれしいです。ありがとうございました!

    返信
  2. 招夏 より:
    2010-11-09 15:16

    こんにちはー
    感想をどこに残そうかなーと思っていたのですが、ここをお借りしたいと思います(^^)/。
    「ここから出して」拝読しました。おお、SFだぁと思いつつ読み進んでいると、むむ、ミステリーっぼくなってきた?ひぇぇホラーっぽい?ホラー?ホラーなのか?と思って背筋を凍らせかけていると、SF再びっ!ってところで心がフンワリと温かくなって読了致しました(^^)。満足感ずっしりです。さすが!お見事(^^)/。なんだか単語の羅列な感想でごめんなさい^^;。要は、面白かったです。そーゆーことです。

    返信
  3. butapenn より:
    2010-11-09 23:01

    招夏さん、いらっしゃいませ。どうぞどうぞ、ここはオンライン文化祭用の感想掲示板がわりにしていただきたいと思います。
    おお、SF→ミステリ→ホラー→SFという、いくつものジャンルまたぎを楽しんでくださったわけですね。書いているほうは、あまり「ホラー」という意識はなくて(真相を知ってるのだから、当然ですが)、なるほど、壁が叩いていたのが、数十年前に自殺してしまった候補生なんかだったりしたらと思うと、ぞっとしますねー。
    いろいろな展開を考えていると、分岐点ありのサウンドノベルにしたくなってきましたよ。
    メディアミックス部門までたどりつくのは、まだ時間がかかりそうですが、なるべく早く「銀色夜話」をご紹介したいです。

    返信
  4. butapenn より:
    2010-11-09 23:34

    >ナノハさん
    メールで感想をありがとうございます。
    音がテーマということで、たくさんの案を練ったのですよ。たとえば、階下の住人の出す音から、犯罪をあばくとか。
    でも、結局、ことばではなく音で会話をする場面を描きたいと思って、これにしました。
    強制収容所などで囚人同士が壁を叩いて会話を交わすというのは、実話です。旧ソ連やベトナムの収容所で実際にあった様子が書籍や映画などに描かれているみたいです。たとえば、下のサイトなどは参考になります。
    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20081220/p3
    アルファベットを5×5の暗号表にする(KはCで代用)もの、モールス信号を使うものなど、いろいろあったそうです。
    キーボードの配列を使ったのは、一応自分のアイディアのつもりですが、もうすでに誰かが書いているんだろうな。

    返信

コメントを残す コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

←前の記事へ | 次の記事へ→

オンラインものかき・クリスチャン・兵庫県人のBUTAPENNのブログです

  • 500文字の心臓
  • おすすめ
  • クリスチャン
  • サイト情報
  • ダイエット
  • ペンギンフェスタ
  • メディア
  • 掌編
  • 旅行
  • 未分類
  • 海外
  • 観劇
  • 認知症
  • 読書
  • 身辺雑記
  • 震災復興

アーカイブ

  • 2024: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2023: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2022: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2021: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2019: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2014: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2013: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2012: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2011: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2010: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2009: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2008: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2007: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2006: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2005: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  • 2004: 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
© 2025 BUTAPENN DIARY | Powered by Superbs Personal Blog theme