「オンライン文化祭2010」(吉田和代さん主催)の応援を兼ねて、簡単な紹介と感想を掲載していますが、いよいよ今回で最終回です。小説部門の残り8作品と、メディア部門5作品を取り上げました。
これを読み、興味を覚えてくださった方は、ぜひ会場にお越しください。紹介文はネタばれにならないようにせいいっぱい努力しましたが、場合によっては、ネタばれと感じられるかもしれませんので、ご注意ください。
なおイラスト・漫画部門については、文でご紹介することがむずかしいと感じました。ぜひ会場へ行き、ご自分の目でご覧ください。
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またコメント欄に、11月18日から21日までにいただいたご感想へのレスを入れています。心当たりの方は、どうぞご覧ください。
コメント欄に追加して、25日までにいただいたご感想へのレスを入れさせていただきました。心当たりの方は、どうぞご覧ください。
作者敬称略
「新しい朝」 和
長編「君といた夏」の後日談。神社の娘ミナは大切なものを失ったばかりで、夏休みも時間の止まったような日々を過ごしていた。そんなとき吹奏楽部の真田先輩が、演奏会のソロを務める部員をテストで選ぶと言い出したときから、ミナの世界がふたたび動き始める。何かを捨てて一歩ずつ前に進む主人公たち。これぞ青春ドラマという雰囲気を味わいました。
「シンシア」 ツグ
善良な青年アーサーは、殺人犯の孫であるというだけで村八分になり、ひとりで住んでいる。ある日海岸で、不思議な少女を拾った。彼女は口がきけない代わりに、世界のすべてを音楽として感じるという。アーサーの隠れた心が次第にあらわになる過程が、巧みな筆致で描かれます。罪と赦し。自分の心を直視する勇気。深いテーマを内包する、心やさしい人々のお話です。
「少女綺霜」 冴島芯
王兵たちに追われ、必死で街を逃げる白い髪の少女。聖女としてまつり上げられるという抗えない運命の前に、彼女にはどうしても一目だけ会いたい人がいた。短い文章の連なりが、静寂を細やかに描きだし、凍てついた白い光のあふれる一幅の絵画を見ているようです。連作短編「The Beautiful World」の番外編。
「松ぼっくりたちのおしゃべり」 ナノハ
公園で拾われた彼らは、とある少女の部屋に置かれているが、少女はなにやら切ない恋をしているようで…。とにかく可愛いお話です。三匹(?)の動けない主人公たちが交わす、がやがやと楽しい会話を通して、初々しい恋の行方が綴られていきます。特に、足音を通しての定点観察が巧みです。季節も今にぴったりでした。
「パンドラの箱」 青波零也
街の広場で吟遊の魔女が奏でるは、不思議な歌を紡ぐ不思議な箱のお話。どんな権力をもってしても、自由な人の心までは捕らえられないという寓話のような掌編。サイトで展開している剣と魔法の世界「楽園」という共通世界観にもとづいたお話だそうです。
「BLANCA」 葉居スイ
囚われの異国の将軍を世話することを命じられた、奴隷の少女。粗末な食事と通じないことばをやりとりするふたりは、次第に心を通わせていく。セリフ括弧の中にあえて空欄を作り、ことばの通じないことを表現しています。キャラの魅力と隙のない構成にすっかり虜にされました。セリフありバージョンもありますので、ぜひそちらで再読を。
「天穹に雷雨轟き」 tomoya
ボルネオ島へ研究のためにやってきた僕は、樹林の中で激しい嵐に降り込められる。叩きつける雨とすさまじい轟音の中で、僕は見知らぬ日本人の少女に出会う。夢物語のようなファンタジックなお話ですが、体験したようなリアルさがあります。タイに住んでいた私にとって、ここに描かれている南国の暴力的なまでの生命力はなじみ深いものでした。
「音撃の双剣」 sleepdog
武器に音を練りこむ技によって、国を守っている「音撃の島」。武器工房の主のもとで音撃の剣の扱い方を学んでいる兄弟は、音撃に恨みを持つひとりの男が島の塔を破壊しようとする陰謀を知る。すっと頭に入ってくる読みやすい文章。すべて音楽用語で構築された世界は、景色が目の前にありありと浮かぶようです。ジブリでアニメ化希望。
*メディアミックス部門
「足音はひそやかに」 染井六郎
小説部門で「魔女の嫉妬」に登場したイシク=フェリアが男だったころのイラストです。少しだけ拝読すると、型破りでナルシストのとんでもない王弟陛下だったようで…。そんな彼の意外なつぶやきは、内面の苦悩を垣間見せてくれます。
「月に恋した兎」 吉田和代
まさにタイトルどおり、月に恋する兎のお話。シンプルな絵とシンプルなストーリーですが、ページをめくる楽しみとともに、手の届かぬものへの限りないあこがれを歌いあげ、深い余韻を残してくれます。
「銀色夜話」 招夏
バッタの旅の物語。ご自分で撮りためた写真をもとに作られたそうです。リズムが心地よい文章。自分に与えられたものを大切に、最後まであきらめない勇気を、と説くメッセージ性の高いストーリーには、思わず涙が出そうになりました。「アンタを心に詰め込んで」のことばにノックアウト。
「季節の音」 楽遊
日本の四季おりおりの音を表わす美しいことばを、美しい写真とともに見せてくれます。良い意味で敷居が低く、お手本のようです。これなら来年、私もメディアミックス部門で参加したいと思える作品でした。
「ゆめしち」 吉田和代/立神勇樹
客の望みをかなえるという、不思議な質屋・夢。そこに絶望した三味線奏者がやってくる。クライマックスは津軽じょんがら節が聞こえてくるような迫力ある描写でした。タイトルのイラストが、小説の雰囲気とぴったり合っていて素晴らしいコラボです。
butapennさま
こんばんは!
拙作「松ぼっくりたちのおしゃべり」を紹介していただきましてありがとうございました!メールでのお返事も、もったいないお言葉満載でとても嬉しかったです。
butapennさんがおっしゃる通り、本文中で松ぼっくり本人たちは自分の正体を明かしていませんでしたので、タイトルはネタバレなんだけれども、これで良かったのかなと嬉しくなりました。彼らの毒舌おしゃべり(笑)を楽しんでいただいて良かった!
それにしてもbutapennさんは読むのが早いなぁ。。。。羨ましいです。
いつも素敵な企画をbutapennさんが紹介して下さるので、私も楽しんで参加させていただいています♪これからもどうぞよろしくお願い致します。
ナノハさん、いらっしゃいませ。
短い紹介文で、ほんと申し訳ないです。
読むのが早いのは特技なのでしょうけど、その分、味わって読んでいないのかもしれません。感想を書くときは、多少でも熟読するので、やはり感想書きは自分にとって必要だなと思います。
ところで、松ぼっくりを水で濡らすと、別物に変身するのですね。こないだ、何十年前の松ぼっくりのゴミを取ろうと洗ってみたら、ペタンコになってしまったので、あわてました。乾くと元通りに開きますが。
よかったら、続編を書くときネタにしてください(笑)。
>立神勇樹さま
いらっしゃいませ、感想をありがとうございます。
おお、FTだけではなくSFもお好きでしたか。よかったです。私も「宇宙局」なんて言葉だけで、空想の世界に飛び立ってしまえるほうです。
音のない生活って今の時代には想像もできませんが、自然の静けさならともかく、密室と無音というのは、かなり堪えるだろうなと思います。まして何もすることがない状態だから、一日中、壁の向こうの相手と交信することを考えていたのではないでしょうか。
ひとり暮らしになると、まずしゃべらない、笑わないということになると思います。頬の筋肉が垂れてしまいますよね。私もなるべく笑わねば。
とにかく、二回はストーリーをどんでん返ししたいと考えて書いたので、そこに注目してくださってうれしいです。ラストにさわやかな読後感を抱いてくだされば、それにまさる喜びはありません。
>道三さま
「犬祭4」ではお世話になりました。なんと、わざわざ感想を届けてくださって、ありがとうございます。うれしいです!
謎の人物の正体について、冒頭でどれだけ伏線を張るかは悩みどころでした。この書き方では、鋭い人にはすぐバレてしまったと思います。
けれど、
>綺麗に並んだドミノが寸分の狂いもなく倒れていく
と感じてくださったということは、きっと話が作者の意図したとおりに流れていったのでしょう。短編を得意とする方からのおほめの言葉は、とてもありがたいです。
>らっきーからー。さま
わざわざお越しくださってありがとうございます。
最初は「陰謀もの」だと思われましたか。確かに、軍の陰謀ものに転ぶか、幽霊話に転ぶかわからない、とらえどころのない話だったと思います。「絆」のお話と感じてくださって、まさに私の意図が伝わっているとうれしくなりました。
>鈴子さま
いらっしゃいませ。感想ありがとうございます。
宇宙ステーションにひとりで数か月滞在したロシアの飛行士がいましたが、どうやって乗り切ったのでしょうね。もちろん、地上との交信や音楽やビデオなども装備していたとは思うのですが。やはり、怖いです。
ノックの暗号に関しては、調べると、私よりもっと賢いノックの暗号を考えた人がいたのですが、やはりオリジナルをと、いろいろ考えました。キーボードというのはパソコンを見て思いついたのですが、この配列じゃないキーボードもあるのかなと、ちょっと不安でした。
ウツミの性別不祥に関しては、作者のお遊びでしたが、ほかの参加作品を見ると、けっこう性別不詳に関するお話が多くて、同好の士がたくさんいたなと、にんまりしています。
こんばんはー(^^)
「銀色夜話」をご紹介いただいて、ありがとうございました。
オンライン文化祭、今月いっぱいですよねー。やばいっ、まだ全然読了できていない……。一か月なんてあっとゆーまですね(^^ゞ
案内役にバッタを選んだので、多少えらそうにしても大丈夫だろうと思ったのですが^^;、涙をいただけたと聞いて、ほっとしております(笑)。押しつけがましくなっていないかと、かなり迷った部分もあったので……。ちなみに、案内役をカッコイイお兄さんにしようか、バッタにしようか迷いました(笑)。結局バッタにして良かったと思います。(もっとも、カッコイイお兄さんの写真はなかったのですが…^^;)
招夏さん、いらっしゃいませ。
ごめんなさい、こっそり紹介文だけ載せておいて、まだメールが送れていないんですよ。語りだすと長くなっちゃいそうですし。
バッタはやはり正解です。どこまでも高く、遠く飛んでいけるようで、風船などとは違って、やはり限界がある。その有限さがいいなと思います。
かっこいいお兄さんバージョンも見たかったですけどね。スナフキンみたいにギター抱えてるとか。
>小高まあなさま
わざわざメールをありがとうございました。
「好き」、「かっこいい」お話とおっしゃってくださって嬉しいです。
だんだんと謎が解き明かされていく感じが出ていれば、よかったです。短編でエピソードが積み重ねられなかったので、展開がやや唐突かなと恐れていたので。
すべて解決の後、男か女かわからないという謎を最後に出して、読者をケムに巻く狙いでした。騙されてくださって、「やった」という感じです。
>中井かづきさま
感想をありがとうございます!
「猫かぶり公子」を拝読したときから、FTがお得意な方という先入観があったもので、SFがお好きとは存じませんでした。や、でも後で、SFも書いておられることを知りました。しかも最初の会話の相手がっ!
この短編は、ずっとFT仕様で行こうと考えていて、最後にSFに方向転換したというイワクがあります。とにかく宇宙という言葉だけで脳内トリップできてしまう性分でして。
今思えば、「ギャラクシーシリーズ」のテーマにもなった「宇宙の孤独と、呼び続ける声との交流」という題材が、形を変えているのですね。
極限状態において育まれた友情(愛情?)の絆に胸を熱くしていただいて、書いた者としても、これにまさる喜びはありません。
う、「ギャラクシー」書きたくなってきた。
こちらこそ、ありがとうございました。