「ぶた仙」名義で、山仙さんとの共作を「500文字の心臓」に投稿し始めて、はや数年(←何年か調べないヤツ)。 ついについに、正選王をいただきました。 今まで二度ほど逆選王をいただいていたのですが、正選王は初めてです。 ちな…
カテゴリー: 500文字の心臓
煙
SPEEDIの隠匿が問題になった際、放射能を煙のように可視化すれば大本営発表に騙されないのにと多くの人が思ったことだろう。 それから三十年、ついに研究は実り、透明無臭の危険ガスが次々に有煙化された。放射能は発見者の名…
K
「古き絵や 逢わず −K」 空き巣の残したメッセージはそれだけだった。いや、怪盗というべきか? というのも、大学生の娘の部屋に入った形跡は明らかなのに、盗まれたものが見つからないからだ。メッセージから…
結晶
ここに人間が入ったのは何年ぶりなのだろうか。 白い埃の積もった床に足跡を印し、切断されたコードが垂れ下がる聖域を行くと、奥から規則的な機械音が響いてきた。立ち入り禁止の筈なのに、という疑問は、わざわざここに潜入した私…
スイーツ・プリーズ
目覚まし代わりのラジオが鳴った。 「想定外の……」 最悪の可能性から目を背けるなんて、ダチョウと同じ。……それは私もか。 冷蔵庫に入っていた残りのチーズケーキを手づかみで食べる。 近所の奥さんたちのティータイム。…
天空サーカス
落ちるかと思えば落ちず、ぶつかるかと思えばすれすれでかわし、要所要所で噴煙をたなびかせ、極め付きは分身の術、あっという間に数万、数億の光を作り出して夜空にちりばめる。お立合いの方々、とくとご照覧あれ! 「彗星ブランコの…
ドミノの時代
全ての言動が狩られる時代、始めることは常に難しい。巷には閉塞感が満ちている。だからこそ誰かが最初の一歩を踏み出さなければならない。 そこで俺は、空港カウンターで僕の後ろに並んでいた女に振り向いた。 「好きだ。結婚して…
あおぞらにんぎょ
透き通る冬空に雲のメッセージがぽっかり浮かんだ。 「フク ムリョウハイフ」 さっそく出掛けたところ、福々しい男は「もう福は残ってないねん、服で我慢してくれや」と言って、下半身魚の着ぐるみを舟から放り投げた。おれは男だ…
ペパーミント症候群
そや、後味や。最後をペパーミントよろしく爽やかに終えるのがプロちゅうもんや。 かく言う俺かて、昔はとろけるような甘さにつられて買い、大きく買い足すと味が薄うなって、挙げ句にどかんと大損して慌てて売ったもんや。甘く始ま…
3丁目の女
世界は鏡像のように左右対称だ。例えは粒子と反粒子。右利きと左利き。LアミノにDアミノ、それから出来る右螺旋と左螺旋。宇宙ジンだってそうだ。 せっかく見つけた住処を爆発でなくした宇宙ジンは、子孫を残すべき新天地を求めて…