2013年4月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3212ページ
ほとんどの本は、図書館から借りているのですが、私の行く図書館には、「返却本棚」というのがあって、返ってきたばかりの本は、いったんそこに置かれます。
これが、けっこう役に立つのです。「誰かが借りて読んだ」ということだけを手掛かりに、けっこう好みの本に出会えたりします。
ケルトとローマの息子の感想
再読。最初読んだときは、悲惨なエピソードの連続に読んでいて息が苦しくなったが、今回はどんな過酷な運命にあっても、自分の良心を貫く主人公の潔い生き方に胸を打たれた。荒れた海原にもみくちゃに翻弄されながら、針路を見誤らなかった主人公の最後の幸福は、決して偶然ではないのだ。
読了日:4月2日 著者:ローズマリ サトクリフ,Rosemary Sutcliff
硝子のハンマーの感想
前半は、女弁護士と現役泥棒(?)のコンビが、密室殺人のあらゆる可能性について検討し合い、後半は犯人の倒叙、という二部構成で成り立っている。読み応えはあったが、介護サルの話など、やや豪華な要素をつめこみすぎた感もあり。犯人はこの若さの素人にしては天才すぎて、嘘っぽい。
読了日:4月5日 著者:貴志 祐介
星月夜の夢がたりの感想
本文カラー挿絵つきの、絵本風の装丁の掌編集。昔話のパロディあり、星新一風あり、O・ヘンリー風あり。もちろん切なくやさしい恋物語もありと、バラエティに富んでいて楽しめた。「天馬の涙」は、「イオニアの風」でギリシャ神話の話を上梓された方だけあって、一番読みごたえがあった。
読了日:4月7日 著者:光原 百合
闇の女王にささげる歌の感想
イケニ族が母系社会であるという事実を知ったことが、サトクリフの執筆の背景にあったことを作者のあとがきで知った。歴史書に書かれている一文でも、彼女の手になれば、自然の息吹を感じさせる臨場感ある物語になる、若き武官であったアグリコラの手記が交互にはさまれ、ローマ帝国側の視点を伝えてくれる。
読了日:4月11日 著者:ローズマリー サトクリフ
吉祥寺の朝日奈くんの感想
あの著者の別PNだと知って、あわてて読み漁っている。なるほど人物造形が魅力的で、それっぽい。日記を利用した展開や、一人称の語りにひそむミステリ的手法も面白い。恋愛色が強いが、ラストはいずれもはっきりと結ばれずに終わる。この切なさとさわやかさが青春ものというジャンルに必須なのだろう。
読了日:4月15日 著者:中田 永一
I love youの感想
男性作家ばかり6人の恋愛短編。アンソロジーは、好みの作家を発掘するときに役立つ。未読のふたり、中村航の「突き抜けろ」が描くのは、恋愛と並走する男同士の友情、本多孝好の「Sidewalk Talk」は、破局に瀕する夫婦の再生。このふたつが一番面白かった。
読了日:4月17日 著者:伊坂 幸太郎,石田 衣良,市川 拓司,中田 永一,中村 航,本多 孝好
山羊座の腕輪(ブレスレット)―ブリタニアのルシウスの物語の感想
女王ボウディッカの反乱から、ローマ軍がブリタニアを去っていくまでの三百年あまりの歴史を、ひとりの百人隊長の一族を通して描く。サトクリフのローマン・ブリテンの連作を一冊の書物にしたような趣きがある。長い時間をかけて、敵対していたローマとブリテンの血が混じり合い、やがて子孫は部族の中に戻っていく。ローマの記憶は腕輪にしか残されず、長城の廃墟に狼が住み着いたというラストには、歴史の雄大さと寂寥感が胸にしみた。
読了日:4月20日 著者:ローズマリ サトクリフ
おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)の感想
就職皆無の中で将来への不安。嫉妬と自分の才能への絶望と。音大生をめぐる現実を直視しながら、それでも音楽を追い求める熱情を描いている。ミステリは添え物。バイト先でのトラブル、東海豪雨など、詰め込み過ぎてやや散漫になりがちな筋立てだが、演奏シーンの迫力でカバーしている。
読了日:4月22日 著者:中山 七里
永遠の0 (ゼロ)の感想
「戦争に行った人たちが歴史の舞台から消えようとしている」(第八章より)。この事実を今書かなければならないという著者のジャーナリスト魂を感じた。臆病者と呼ばれた男の真実の姿に迫るにつれ、読者はいつのまにか、あの時代の空気を吸っている。これでもかと見せつけられる、生と死、崇高さと愚かさ。日本人がどれほどの覚悟と想いを持って死んでいき、また戦後を生き抜いたかは、なんとしてでも語り継がねばならない。
読了日:4月29日 著者:百田 尚樹
金曜日はピアノの感想
音楽がテーマではあるが、静かな物語だと思った。雨の重み、しのびよる夕暮れ、蝉の声、花々の咲く丘。深い苦しみを内に秘めて体を寄せ合う主人公たち。ページを繰るにつれて、研ぎ澄まされていく読者の五感に、清冽なピアノの音色が響いてくる。
読了日:4月30日 著者:葉嶋 ナノハ
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