日本のTPP協定交渉への参加が決定しました。
7月15日から25日までマレーシア・コタキナバルで開かれる拡大会合で、日本はぎりぎりの初出席が予定されています。
TPPに関しては、多くのメリット・デメリットが議論されていますが、離陸してしまった以上、少しでも不備な部分を改善していくために、国民全体が活発に議論に加わる必要があると思います。
さて、TPP参加決定で懸念されているのが、著作権の問題です。
TPP交渉で、日本は著作権保護期間を現行の50年から70年程度に延長するように欧米から求められる懸念があるのです。
米国の著作権延長の圧力
アメリカは、ディズニーアニメなど息の長い映画作品を抱えており、日本にも著作権期間の延長を求めるとみられています。国際収支をみると、日本は著作権収支で年間5000億円の赤字国で、支出先の6割以上が米国です。
米国は、さらに法人著作権を95年に延長する法律を制定済みであり、これは「ミッキーマウス」の著作権切れを防ぐためだと言われていて、「ミッキーマウス保護法」と揶揄されるそうです。
米国はさらに、世界各国にも著作権を延長するよう圧力をかけていて、日本も映画著作物に関しては、著作権期間を70年に延長しました。
著作権期間の「個人の死後または法人の公表後50年」を維持している国は、日本のほかに、カナダ・ニュージーランド・中華民国があり、日本はそれらの国々と連携して、著作権問題にあたることが重要だと考えます。
電子書籍業界への打撃
吉川英治、柳田国男、室生犀星らの作品は、昨年末に著作権保護期間が切れ、今年から自由に使えるようになりました。
こうした著作権切れの古典の名作は、青空文庫などでテキストファイル化され、電子書籍の普及に大きく貢献しています。
しかし、これらの作品も、著作権期間が70年に延長されれば、また数十年先まで読めなくなることは必至で、せっかく軌道に乗ったばかりの電子書籍業界にも打撃を与えそうです。
書籍のデジタル化が遅れる
著作権の延長によって、「著作権の所在が不明な「孤立作品」を人為的に大量発生させただけだ」と言う批判も、米国内で起こっています。
日本の国会図書館では明治期の本の著者のうち70%強が権利者の没年や連絡先が不明といわれていて、期間延長によって、図書館の蔵書デジタル化がさらに遅れることが懸念されているそうです。
(以上のソース:日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54918090R10C13A5TCJ000/、
ウィキペディア「著作権延長法」))
ジェネリック薬も危機
同じ、知的財産の保護に関連して、ジェネリック薬の製造・販売が妨げられる恐れもあります。
このことに対して、「国境なき医師団」は強い懸念を表明しています。途上国でジェネリック薬を利用している数百万人の患者の治療に影響が出る恐れがあるというのです。
(国境なき医師団日本 http://www.msf.or.jp/news/2013/07/6133.php)
TPP交渉参加に関する意見募集
さて、TPP交渉に関連する業界団体への説明会などが活発に行われているようですが、説明会に招待されなかった団体にも、メールで意見を提出する方法があります。
TPP政府対策本部・TPP関連情報
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo.html
〆切は7月17日(水)までです。
団体名を記入する必要がありますが、TPPに関して意見をおもちの方は、ぜひこの機会を活用なさってください。
【7/13追記】個人でもメールを送れるそうです(青空文庫の掲示板を参照)。
【7/13追記】
いくつか有用な記事をリンクしておきます。
青空文庫 「著作権保護期間の延長を行わないよう求める請願署名」 (署名運動自体は終わっています)
山仙さんの、「著作権は誰のため」
朝日新聞デジタル「WEBRONZA」 「著作権保護期間の延長は科学研究を阻害する」
4 thoughts on “著作権延長は誰のためか”
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記事をありがとうございます。5000億円の赤字は知らなかった。そもそもベルヌ条約(19世紀締結)自体が古く臭くて(「子孫」ってだけで権利を享受するのは貴族の発想です)、直さなくてはならない(作家の死後でなく、他の知的財産と同じく作品発表を起点にすべき)のですよねえ。
僕が7年前に書いた奴にも今回手を入れました。
キャプチャがうまく機能してなくて、ご迷惑かけました。今は解除してます。
著作権について、いろいろ示唆をありがとうございました。
人間は、一度手に入れた既得権益を離さないものなので、なかなか今回の交渉も難航しそうです。でも一度妥協してしまうと、ずるずると、際限なく延長する羽目になるかもしれません。
せっかく竹内端三の著作も有志が無料公開してくれたのに、このままでは公開停止にされるだろう。
《死後50年経っている数学者(没年順)》
高橋卯之助 (1833-1902)
菊池大麓 (1855-1917)
佐原純一 (1841-1920)
樺正董 (1863-1925)
北条時敬 (1858-1929)
藤沢利喜太郎 (1861-1933)
林鶴一 (1873-1935)
隈本有尚 (1860-1943)
70年の壁
竹内端三 (1887-1945)
藤原松三郎 (1881-1946)
吉江琢児 (1874-1947)
掛谷宗一 (1886-1947)
岡村博 (1905-1948)
窪田忠彦 (1885-1952)
谷山豊 (1927-1958)
高木貞治 (1875-1960)
辻正次 (1894-1960)
小倉金之助 (1885-1962)
これらの著作が読めなくなるんですよ!!70年以上なんてやられたら、それこそ大正以降の数学書ですら全く読めない。本当に明治初期の洋算がでてきたばっかのころの初代数学者(洋算)の書いた本しか読めねえんだよ。何考えてるんだよ。理工書の電子書籍も、ようやくアップルがepubの数式表示に対応し、いよいよこれから巨匠の作品たちが小学生でも無料で読めるような黄金時代が到来すると思ったら、TPPで弾圧するだと、ふざけるな!!電子書籍ストアには全く数式が大量に出てくる硬派な理工書が売っていないのだから、市民の手によってこれらを無料公開して、学校に配布されるタブレットで子供たちに利用してもらうということもできたのに、全て潰されるんだよ。青空文庫も頭が固いから数式表示に対応する気が全くないようだし、有志が集まって団体で公開するしかない。出版社は永久にやらないだろう。日本の理工書の出版社がどれだけの悪行を行ってきたか。ニュートンのプリンキピアですら、絶版で日本語で読めないんだぞ。ブルバキやランダウですら、東京図書は一切復刊しない。東京図書はファシスト出版社、人間のクズだ。我々から文化資本という貴重な糧を奪い、著作権の美名のもとに死蔵しているのだからな!!学生は東京図書本社前でデモを起こして、ブルバキやランダウを教科書に復刊して採用させろと運動をしないといけない。文学や哲学や歴史や社会科学の本ならそこら編の図書館や小規模書店にもあるが、こういった科学の古典に触れる機会をことごとく奪い取ってきたのが悪の日本の出版社である。昨今の刊行物など栄光の過去に比べれば単なる劣化コピーにすぎない!数式すら出てこないゴミのような啓蒙書やエッセイを氾濫させ、このような古典すら一切読めなくした奴らだ、絶対に電子書籍化なんてするわけがない。だから市民の手で電子書籍化を成し遂げねばならないのだ。すでにepubでは数式表示に対応したんだから、誰か竹内端三や高木貞治の欧文論文集でもepubで頒布してほしい。なぜだれもやらないんだよ。竹内端三がTPPによる著作権延長でつぶされようとしているんだぞ!近代デジタルライブラリーにある初等代数や初等幾何や初等整数論といった彼の著作をも潰す予定だ。このような暴挙は決して許されない!!
>竹内端三が公開停止に のコメントをくださった方へ
激しい怒りのこもったご意見、拝聴しました。一部、不穏当な発言はありますが、おおむねおっしゃっていることは共感いたします。
残念ながら、管理人は数学者でも科学者でもないのですが、今回の著作権延長に関しては、文学よりも、むしろ科学の分野で反対の立場を表明する方が多く見受けられます。山仙さんも、そうです。
そういった科学者のネットワークができればいいのにと思います。それとも、もうすでにあるのでしょうか。
おっしゃったとおり、数式表示に対応したファイル形式での電子書籍化、「青空文庫の科学論文版」というべきものは、多方面に呼びかけるべきだと思います。
欧米の科学者は泣き寝入りをしているはずはないと思うのですが、何らかの形で連帯はできないものでしょうか。