またまたお久しぶりです。
たった一か月でここまで状況が変わるのかというくらい、コロナが再拡大してきましたね。それだけではなく、ウクライナ情勢のことや、安倍さんの事件や、気の滅入るようなことが次々と起きてきます。
そんな中で、兵庫県立芸術文化センター毎年恒例の「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ」を7月20日に観てきました。2月にチケットを取ったときから、(今年は大丈夫か、コロナで中止にならないか)とドキドキしながら待っていましたが、無事に開催されました。
2022年の今年は、「ラ・ボエーム」。どの曲も観客を魅了させるプッチーニの名作です。もともとは、2020年に演じられるはずだった演目が、コロナのため中止になり、2年のときを経て実現したのです。
↓ 兵庫県立芸術文化センター特設ページ
タイトルの「ラ・ボエーム」とは、英語で言えば、「ボヘミアン」。19世紀、パリの下町に流れ込んできた定職を持たない若い芸術家たちのことを指すそうです。
詩人のロドルフォ、絵描きのマルチェッロ、哲学者のコッリーネ、音楽家のショナールがひとつの部屋に同居しています。
この部屋というのが、普通は屋根裏部屋だと思うのですが、今回のオペラでは、なんとセーヌ河に浮かぶ船という設定なのです。演出を手掛けたのは、アカデミー賞美術賞を三度も受賞したダンテ・フェレッティ氏。古き良きパリの下町のセット、美しい絵画のような遠景、夕方の透明な空気を感じさせる照明は、どれもすばらしいものでした。
19世紀はじめのフランスといえば、1815年にナポレオン帝政が終わり、1830年の七月革命にいたる時代ちょうど「レ・ミゼラブル」の時代です。だからなのか、若者たちの群像や、下町シーンを見ると、ほんの少し「レミズ」を思い出してしまいました。
主役の6人を演じるのは、ミラノのオーディションで選ばれた若手の歌手たちです。まだ現地でのデビュー間もない新進気鋭たち。実は、この「ラ・ボエーム」はダブルキャストになっていて、もう一組のキャストは砂川涼子さん、笛田博昭さん、高田智宏さんと有名歌手がそろっています。かなり迷いつつ、若手のエネルギーに賭けることに決めました。
見終わったとき、ヨーロッパの空気感や、物語の描く「ほろ苦い青春の1ページ」に胸を打たれつつ、こちらを選んでよかったなーと思いました(きっと砂川さんのミミもすばらしかったのでしょうけどね)。
第1幕は、若き芸術家の貧しくも楽しい共同生活と、ロドルフォとミミの出会いと恋におちる場面。ここで、ロドルフォの「冷たい手を」と、ミミの「私の名はミミ」の有名なアリア二曲が続いて、ノックアウトされます。いい歌だなあ、プッチーニすげえなと至福にひたること間違いなし。数あるオペラの中で、一、二を争うくらいの名場面だと思います。
ミミというのは彼女の本名ではなく、若いお針子の女性は当時、「ミミ」や「ルル」などの短いあだなで呼ばれたそうです。そして、多くは水商売に就いたり金持ちのパトロンに囲われる運命でした。そう考えると、「私の名はミミ」という題名は、ひどく切なく響きます。
第2幕は、クリスマスイブのカルチェ・ラタンのどんちゃん騒ぎ。舞台から落ちるのではと思うくらいの大群衆です。コロナを恐れて、とにかく密を避けていた三年間をせせら笑い、吹き飛ばすような、密で圧倒されるシーンでした。
第3幕は、うって変わった静かな雪の情景。重い病にかかったミミが、一途に思いをぶつけてくるロドルフォに別れを告げる場面です。この悲しいカップルに対比して、マルチェッロと華やかで勝気なお針子ムゼッタのカップルはケンカばかり。この二組の四重唱もすばらしい曲です。
第4幕は、別れてしまった二組のカップルの再会。けれど、若者たちの見守る中で、ミミは命の終わりを迎えてしまうのでした。ミミの死に最初に気づく友人たちが、どうやってロドルフォに伝えるかと、うろたえる場面は、胸が熱くなりました。恋愛をテーマにしたオペラはたいていの場合、やりきれない悲劇で終わるのですが、この「ラ・ボエーム」は、悲劇の中にも、観衆を甘酸っぱくもなつかしい気分にさせてくれるのです。無計画性、恋ゆえのケンカ、自らの才能に対する過信と落胆。仲間との友情。オペラの登場人物たちの中に自分の青春の姿を見出しているからでしょうか。
素晴らしい音楽を堪能されたのですね。素敵ですね!
前回の記事のコメント欄を拝見し、私も『折れた竜骨』を読みましたら、どうしても『月の戦士』を再読したくなり、一気読みをさせていただきました!
いやもう、様々な描写や展開や登場人物の心の動きなど、何度読んでも心に沁みます。
素晴らしい小説を今も読ませていただいて、心から感謝します。
暑い日が続いておりますので、どうぞご自愛くださいませ!
AYAさん、ずいぶん間が空いてしまい、すみません。
なんだかいろいろややこしいことがあって、サイトが見られなくなったり。
無事に戻ったみたいです。
「月の戦士」を再読してくださいましたか? ありがとうございます。
私は今、まったく自作品を読んでいません。しばらく寝かしておけば、まるで誰か他人の小説を読むような感じで新鮮に読めるかな? なんて思いでいます。自分で書いたのに、それは無理かもしれませんが。
暑い夏もようやく終わろうとしています。AYAさんもどうぞお元気で。また遊びに来てください。