番外編/拍手お礼ページ総集編

**ウェブ拍手のお礼ページに載せている小話をまとめました。おふざけです。**

番外編1「騎士の求婚」より

「やっぱりファンタジー?」編
エドゥアール「今回の思い出話でわかったことは、ユベールは確実に、俺が娼館に移ったときまで童貞だったってことだ」
ユベール「何を根拠にそのようなことを」
エ「だって、俺たち以外誰もいない森の中で暮らしたんだぞ。女性のお相手が見つかるはずない」
ユ「ふふ。甘いですね。若さま」
エ「なんだと」
ユ「獣人、エルフ、妖精…ファンタジー世界では、森の中はよりどりみどりなんですよ」
エ「ユベール…恐ろしい子!」


番外編2「王妃の密約」より

「なんとなくムカつく」編
エドゥアール「へえ、テーブルにいつも置いてある干しぶどうって、王妃さまの差し入れだったわけ」
フレデリク王「緑色をした大粒のマスカットレーズンは、アルバキアが一大生産地なのだ」
エ「確かに美味いよな。ということは俺、今まで何にも知らずに、王妃さまの愛情を口に含んで、舌の先で転がして、ねぶって、噛みしだいてたんだ」
フ「…くっ。だから、そなたが干しぶどうを無節操につまみ食いするたびに、無性にむかむかしておったのだ」
エ「なーるほど。そう聞くと、ますます欲しくなっちまうな」
フ「ほう、奪えるものなら奪ってみよ!」
侍従長ギョーム「あの…喧嘩なさらなくとも、まだたくさんございますのに」
テレーズ王妃「(ためいき)放っておきましょう。じゃれ合っているだけなのですわ」


番外編3「公子の縁談」(1)より

「やっぱり若さまも」編
エドゥアール「『「申し上げても、お信じになれぬと存じます』か。うまい答えだな」
ユベール「実際そうなのですから」
エ「で、正直なところ、どうなんだ。ソニアと新婚半年目の感想は」
ユ「(妖しげに微笑む)18禁抜きで?」
エ「……そ、それはオフレコでゆっくりと」
ユ「一口で申せば、何も変わりません」
エ「えー?」
ユ「何をするか予測がつかない、思考が突飛すぎて理解できない、隙あらばとんでもないことを始める。むくれると手に負えない。そういう相手の手綱を取ることは、若さまで十分に慣れていますから」
エ「お、俺って、そんなふうに見られてたのか……」
ユ(でも、だからこそ、いろいろな意味で目が離せないのですけどね)


番外編3「公子の縁談」(2)より

「守備範囲は?」編
エドゥアール「六歳も年上の年寄りと結婚するなんてイヤと言われて、けっこう傷ついてるだろ」
セルジュ「傷ついてなどおらん。こちらとて、十五歳の子どもの守りなどごめんだ」
エ「そういえば、おまえの好みは、うんと年増女だって情報はほんとうか」
セ「どこから、そんなデマを仕入れてくる」
エ「複数の消息筋から聞いた未確認の情報だ。その1、テレーズ王妃に横恋慕している。その2.フォーレ子爵夫人に横恋慕している。その3、アルマ婆さんに――」
セ「…おい、いくらなんでも範囲が広すぎないか?」


番外編3「公子の縁談」(3)より

「結婚の格言」編
エドゥアール「ヒルデガルトさまとの会談で、もう一度確かめたいことがあるんだ」
記録係パトリス「はい、どこでしょう(速記帳をめくる)」
エ「小麦相場の話のところで、『パンのかわりにお菓子をお食べ』って発言があっただろ」
パ「…ありましたっけ?」
エ「『できるだけ早く結婚することが女の務めであり、できるだけ長く独身でいることが男の務めである』ってのは?」
パ「ええ。ど、ど、どなたがそんな発言を」
エ「さすがに、これは書き留めてるだろ、『喜劇は結婚によって終わり、事件は結婚から始まる』」
パ「ぜ、全然です…。申し訳ありません」
エ「あ、違った。たった今、俺が思いついたんだ」
(記録係、倒れる)
セルジュ「こいつの悪ふざけについていくには、まだまだ修行が足りないな」

**「パンがないなら、お菓子をお食べ」は、有名なマリーアントワネットのパロディ、「男はできるだけ永く」というのは、バーナード・ショー、「事件は結婚から始まる」というのは、マリヴォーの格言だそうです。


番外編3「公子の縁談」(4)より

「それはやりすぎ」編
*微妙にワイ談です。ご注意。







エドゥアール「こら、奥方にお皿をいったい何枚割らせる気だ?」
ユベール「だいじょうぶです。高価なお皿のときは自重しておりますから」
エ「けど、困ったもんだ、ソニアのウブっぷりにも。キスだけで、あのうろたえようじゃ、夜はいったいどうやってるんだ?」
ユ「それが、実は困っているのですよ」
エ「まさか…すぐに気絶しちまうとか?」
ユ「はい。わたしもいろいろ工夫は重ねているのですが」
エ「たとえば?」
ユ「わたしと目を合わせないように目隠しをしてあげたり、暴れてケガをしないように手足を縛ったり」
エ「(うしろに飛びすさり)ひえ、ユ、ユベール、おまえそれ」
ユ「そうすると、余計に失神するんですよねえ(遠くを見てためいき)」



番外編4「王女の初恋」(1)より

「触れられたくない話題」編
セルジュ「いくらなんでも、おまえは万能すぎる。いったいいくつの職業をこなせるんだ?」
エドゥアール「まあ、園丁と馬丁はだいじょうぶだな。もちろん娼館の主にだってなれるぞ」
セ「海賊にもな」
エ「あとはまあ、コック、法律家、会計士、剣闘士ってとこかな」
セ「つくづく嫌味なやつだ。これだけは苦手ということはないのか」
エ「あ、あるある。絶対にできそうもないことが」
セ「なんだ」
エ「きれいな女性がもれなくついてる別邸をたくさん持つこと、かな」
セ「…帰る」



番外編4「王女の初恋」(2)より

「返せーっ」編
セルジュ「だいたい頼みもしないのに、なぜあんなところに下着を干す」
エドゥアール「俺が洗濯してやらなきゃ、脱いだままほったらかしだったろう。きったねえ」
セ「そのせいで、とんでもないものを見られてしまった…」
エ「ぷっ。ヒルデ姫がおまえのズロースを頭にかぶっているお姿、思い出すたびに笑える」
セ「…そういえば、あれ以来、一枚見当たらぬのだが」
エ「ああ、そういえば、姫が宝にしたいとおっしゃって、持ち帰ったみたいだぞ。今頃はおまえを想うたび、頭にかぶって…」
(セルジュ、脱兎のごとく、宮殿に向かって走り出す)



番外編4「王女の初恋」(3)より

「絶対誤解される」編
セルジュ「まったく、ソファに寝ころんで覗き見とは、いい趣味だな」
エドゥアール「覗き見だったら、もっとうまくやるって。俺、昔からソファに寝ころんで考え事をすると、すごく頭が冴えるんだ」
セ「そういえば、わたしの執務室でも、いつも寝ころんでいるな」
エ「人の心だって読めるんだぜ。ヒルデ姫が、おまえのシャツを夜着代わりにする妄想をしてたときは、さすがに鼻血を吹きそうになった」
セ「な、なぜ、そんなことまでわかる!」
エ「おまえなんか、もっとすごかったな。姫の服の下に手を…」
セ「わあっ」
(ふたりでソファにもつれて倒れこんだところに、ヒルデガルト姫が扉を開けて入ってくる)



番外編4「王女の初恋」(4)より

「誤解が誤解を生む」編
ミルドレッド「殿下。ご結婚おめでとう存じます」
ヒルデガルト「ミルドレッド…(涙ぐむ)それが、気にかかることがあってな」
ミ「まあ、なんでしょう」
ヒ「リンド侯爵とラヴァレ伯爵があられもない姿で、しっかり抱き合っておったのだ(←前回の小話。すでに思いきり脳内変換)」
ミ「まあ、そんなこと」
ヒ「そんなことって…そなたは妻として平気なのか」
ミ「エドゥアールさまったら、そんな話ばっかりなのです。近侍のユベールさまとの主従疑惑とか、フレデリク国王陛下とのピンクのネグリジェ疑惑とか。いちいち気にしていたら、身が持ちませんわ」
ヒ「そなたの強さをぜひ見習いたい。わたくしも、たくさんの別邸疑惑とやらに立ち向かうぞ」
ミ「ともに、がんばりましょう!」
エドゥアール「セルジュ、なんだか、さっきから背筋がぞくぞくしないか?」



番外編5「王太子の孤独」(1)より

「天の配剤」編
エドゥアール「うわあ、一番目は男だったか。『子どもは四人、最初は女』という俺の壮大な計画が」
ミルドレッド「残念でした。でも、ジョエルが生まれて一番楽しんでいるのは、あなたのような気がしますわ」
エ「俺?」
ミ「だって、まだ歩けもしない頃から仔馬に乗せたり、暇さえあれば、あちこちに連れ出して…」
エ「まあ、そうかもな。大きくなったら俺に輪をかけて、やんちゃなガキに育つだろうな」
ミ「反対に、一番がっかりしているのは、お義父さまと国王陛下だと思いますわ」
エ「親父とフレデリクちゃん?」
フレデリク「ああ、女だったら、エレーヌの幼い頃の服を着せようと思っていたのに」
エルンスト「ああ、女だったら、エレーヌの好きだった庭を毎日散歩させてやったのに」
(ふたり、抱き合って泣く)
エ(震えながら)「…男でよかったかも」




番外編5「王太子の孤独」(2)より

「普遍的真理」編
エドゥアール「今回の秘話が始まって、一番株を上げたのは、うちの親父だな。今はひょろひょろだけど、昔はマッチョで女にモテたんだって」
父エルンスト「まあな」
エ「ユベールがアンリから聞いた話によれば、親父は女遊びに関しては若い頃はいろいろ武勇伝があったらしい。でも、リオニアで同じ下宿だったラウロ・マルディーニによれば、あまり遊んでなかったらしいし」
父「(苦笑)みな、いろいろ言っているのだな」
エ「で、結局どっちが正しいんだ?」
父「どちらも正しい」
エ「え、そんなのあり?」
父「つまり、それぞれによって、ものごとの基準が違うのだよ」

アンリの女遊びの基準 < エルンストの現実 < ラウロの女遊びの基準

エ「なーるほど。勉強になるなあ」



番外編5「王太子の孤独」(3)より

「まぎらわしい話」編
エドゥアール「いよいよ、おまえの出番だな」
セルジュ「まだ母が産気づいたという話だけではないか」
エ「それでも、話にでも出てくるだけマシだよ。俺なんか、今回影も形もないんだぜ」
セ「そうだったか。【エドゥアール】という名前はよく出てくるではないか」
エ「あれは、ハツカネズミの話! おまけに吹雪の中に数週間もほったらかされるし、おふくろ…俺のことをなんだと思ってたんだよ(泣」
セ「だから、ハツカネズミの話だろう?」



番外編5「王太子の孤独」(4)より

「結局どっち?」編
エドゥアール「作者がぼやいてたぜ。親父がなかなか自分の気持ちを認めないから、ちっとも話が進展しないって。おかげで4ページの予定が5ページになったって」
父エルンスト「ふむ、確かに。それほど王女との結婚というのは、当時のわたしにとっては考えられないことだったのだよ」
エ「もし、俺が親父の立場だったらどうしたかな」
父「おまえなら、相手がたとえ誰であろうと、ただちに猛攻しただろうな」
エ「あはは。そうかな」
父「おまえがうらやましいよ」
エ「そこまで言うか」
父「おまえくらい何も考えずに行動できたら、どんなに人生が楽だったろうな」
エ「親父…それ微妙に褒めてないって(しくしく)」



番外編5「王太子の孤独」(5)より

「ネタ募集中」編
エドゥアール「やれやれ、ようやく終わったか。ふたりは結局結ばれなかったんじゃないかと、気を揉んじまったぜ」
ミルドレッド「それでは、あなたが生まれたはずがありませんわ」
エ「ところで、ずっと続いてきた番外編だけど、ここで作者が考えていたプロットは全部終了したらしい」
ミ「えっ、それでは、この話はもうこれでおしまいということですの?」
エ「そうとも言えない。アイディアさえ湧けば、書くんだと」
ミ「つまり、有体に言えば、アイディアがさっぱりということなのですね」
エ「あはは。まあ、そういうことだ。今のところ候補としては、俺の海賊修行時代の話。またはジョエルが少し大きくなったころのラヴァレの谷の日常話。武器商人フラヴィウスとの攻防の話、くらいかな」
ミ「まあ、どれも私が聞きたいですわ」
エ「何かリクがあれば、コメ欄に書いて送ってくれるかな」
ミ「お願いいたします。どうぞ、私たちが一日も早くみなさまと再会できますように」



番外編「冬至祭」より

*拍手ページでは、自作の似顔絵を掲載しました。ごらんになりたい方は、こちらをどうぞ

エドゥアール「え、今回はペンギンじゃなくて、俺たちの絵? しかも、設定編の家系図のときの使いまわしじゃねえか。俺なんか、まだ黒髪だし」
ミルドレッド「クリスマス企画ということで、作者も拍手お礼ページを工夫したかったのですわ」
エ「俺たちの住む世界にはクリスマスはないから、『冬至祭』というネーミングになったんだよな」
ミ「はい、でもイメージは、そのままクリスマスだそうです」
エ「イラストは、掌編がアップされるごとに増えていくんだって?」
ミ「ええ、私たち以外のキャラのイラストになるということですけど、どうなりますやら」
エ「で、登場人物全員の似顔絵も募集中なんだそうだ。メールフォームで送ってくださった似顔絵を、ここで順次掲載させていただく。ラフ絵でも何でもいいそうだぜ」
ミ「作者を助けると思って、ぜひお願いいたします(ぺこり)」



エドゥアール「と言うことで、今回はユベールの登場なんだけど、似顔絵がずいぶん俺のと違ってねえか?」
ユベール「ふふ。若さまと違って、わたしはどんなところでも、三頭身キャラになれない仕様なのですよ」



エドゥアール「姫さまって、本当はすごく可愛い性格なんだな」
ヒルデガルト「…うるさい、寄るな」
エドゥアール「うわあ、嫌われちまったなあ。もうお尻は叩かないから安心しなよ。で、セルジュの似顔絵がないのは、どうして?」
ヒルデガルト「完璧な美を表す画力が、作者には欠けているからだそうだ」
エドゥアール「あいつは、やっぱり可愛くねえ!」



セルジュ「…などと言われたから、不本意ながら出てやったぞ」
エドゥアール「少なくとも、俺の似顔絵より色がついてるだけマシじゃねえか」
セルジュ「実は作者は、おまえのことを主人公と思っていないことが、露呈されたな」
エドゥアール「え、俺って引き立て役? 主人公じゃなかったのか(ショックで駆け出す)」
セルジュ「作者の画力の低さゆえに、面白い見世物が見られたな」
ヒルデ「だいたい、なぜわたくしは、こんなに色が黒いの。作者のばかーッ」



エドゥアール「ああ、この似顔絵だけは描いてほしくなかった。だって、髪の色目の色その他容姿に関しては、母親似だと言われる俺に一番似てるのは、伯父貴のあんただもんな」
フレデリク「ふん、ご挨拶だな。エレーヌも柔らかな絹糸のような癖毛だったが、おまえは全然似ておらぬぞ」
エドゥアール「髪の硬さは、親父の遺伝らしい。もちろん、硬派な性格も親父譲りなんだろうな。あんたみたいに、クセのある性格じゃなくてよかった」
フレデリク「よく言う。そなたの性格こそ、誰よりも曲がりくねっておるわ」



エドゥアール「お、親父。ずるい。50歳のくせに、その似顔絵は反則だろ」
エルンスト「ちゃんと「30才」と断っているではないか。代々の伯爵家の肖像画も、普通は何枚も描かせて、一番見栄えのよいものを残すことになっているのだ」
エドゥアール「ああ、俺もそう言えば、肖像画を描いてもらえって家令のナタンにせっつかれてるんだった」
エルンスト「おまえは、何歳のときの肖像画を残すことになるのだろうな」
エドゥアール「結局、黒髪に染めてたときの、この似顔絵が、一番俺らしい気がする…」

***似顔絵募集は、まだまだ続けております。お気に入りのキャラの絵をいつでもお寄せください。拍手ページまたは、サイトのギャラリーに飾らせていただきます。



番外編「下働きの休日」(1)より

「妻がこわい」編
エドゥアール「今度はポルタンスが舞台の過去編なんだな。俺が14歳ってことは、おまえは?」
ユベール「わたしは21になろうかというころですね」
エ「謎の美女と謎の男が出てきたけど、正体については次回で種明かしするからいいとして、なんだか、あの涙が意味深だよな」
ユ「この導入の具合から察すると、若さまの初恋編という趣向でしょう」
エ「俺はミルドレッドが初恋だったんだ。今回はおまえが主人公の恋バナじゃないのか」
ユ「わたしも、ソニアが初恋でしたから」
エ「この嘘つき」
ユ「心外な」
 それぞれの妻の刺すような視線を背中に感じている夫たちは、けっこう必死なのだった。



番外編「下働きの休日」(2)より

「やっぱり妻がこわい」編
ユベール「よくも、ああいう嘘をついてくださいましたね」
エドゥアール「女遊びがひどくて、借金だらけっていうあれ? コレットががっかりしてたな」
ユ「どこへ行っても女どもから冷たい視線を受ける理由がわかりました。若さまが率先してああいう噂をまき散らされたせいですね」
エ「嘘つけ。おまえはどこへ行っても、女どもから熱っぽい視線の集中砲火だったじゃないか」
ユ「若さまこそ、行く先々で最低ひとりは恋のとりこにしておられたでしょう」
エ「ふん、少なくとも森で暮らしていたときは、誰もよってこなかったもんね」
ユ「雌牛が、いつも若さまの姿を見るたびに目をうるませてましたよ」
エ「おまえがそばにいると、雌鶏が有精卵を産むってアルマ婆ちゃんが言ってたぞ」
ミルドレッド&ソニア(ため息)「…そんなに必死で否定しなくても、おふたりが、よくモテたのはわかっていますから」



番外編「下働きの休日」(3)より

「父と伯父も怖い」編
ユベール「なるほど。若さまの女装の趣味は、あの頃からだったのですね」
エドゥアール「趣味じゃねえ! 敵のふところに潜りこむための方便だ。おまえこそ、女装はカスティエ家の必修科目だなんて言ってたよな」
ユ「すごい記憶力ですね」
エ「他人の弱みを握る情報は絶対に忘れないというのが、伯爵家の家訓だ」
ユ「あの頃の若さまは、確かに体も細く少女のようでしたよ」
エ「はああ。つくづく、あの頃に親父やフレデリク王に会わなくてよかった」
フレデリク&エルンスト「ああ、もう少し小さい頃のエドゥアールに会っていたら…。エレーヌそっくりだったろうに(さめざめと抱き合う)」
エ「(ため息)…やっぱり」



番外編「下働きの休日」(4)より

「ユベールが強い理由」編
ユベール「なるほど。第1章で、州長官がテオドール・グラン医師を借金取りから守るために一肌脱いだ陰には、こういう経緯があった。そういう種明かしの秘話だったのですね」
エドゥアール「俺の初恋話でも、おまえの初恋話でもなかったわけだ。安心しただろ?」
ユ「それより今度は、心配になりませんか」
エ「何が」
ユ「奥方さまの初恋は、どなただったのでしょう」
エ「ええっ。ミルドレッドの初恋は俺に決まってるじゃないか」
ユ「(くすっと笑う)本当に? 社交界の花と呼ばれた方ですよ。麗しき殿方との恋のひとつやふたつ」
エ「そんなあ、うそだろ。……ミルドレッド!」
(エドゥアール、あわてて走り去る)
ユ「ふふ。まだまだ精神修養が足りませんね。妻の初恋の相手などに、いちいち心を乱されていては生きていけませんよ」
ソニアの初恋相手がエドゥアールだと知っているユベールは、けっこう毎日が精神修養なのだった。



番外編「伯爵夫人の涙」(1)より

「妻の心得」編
ミルドレッド「あなた、お茶が入りましたよ」
エドゥアール「ミ、ミルドレッド。こんな展開になってるのに、のんびりお茶なんかしてる場合じゃねえだろ」
ミ「いいんです。だいたいわたくしたちの結婚生活に、平穏無事などという言葉はありませんわ」
エ「そりゃ、そうだ。だいたい、新婚初日から俺は牢屋にぶちこまれるし」
ミ「奴隷に売られそうになるし、海賊にはなるし」
エ「でも、ちゃんと最後には解決するようになってるんだな」
ミ「ええ、だから、あなたの浮気騒動なんかにあわてたりはしませんよ。ちゃんと信じてますから」
エ「ミルドレッド…ありがとう」
 感激したエドゥアール、お茶を口に含んだとたん、吐き出す。
エ「ぶわあ。こ、こ、胡椒…ハ、ハックション」
ミ「(にっこりとほほ笑む)ええ、でも、念のために、ときどき釘を刺しておくのも妻の務めですわね」



番外編「伯爵夫人の涙」(2)より

「執事は高給取り」編
ロジェ「若旦那さま、お待ちください」
エドゥアール「わあっ。いきなり飛び出してくるな。馬のひづめで蹴り殺すところだったぞ」
ロ「お出かけになる前に、ひとつお聞きしたいことが。先ほど若旦那さまがわたしめに抱きついたおり、わたしの襟のカラーが濡れておったのでございます。これの成分はなんでしょう。 1. 涙 2. 鼻水 3. よだれ」
エ「1番に決まってるだろう」
ロ「ほんとですか? …わかりました。汚れの成分によって、使う洗剤が違うのでございますよ」
エ「ええっ。すごいな」
ロ「執事たるもの、いつでも真白で糊のきいたシャツを着ることが求められていますからな」
エ「おまえの部屋に行くと、戸棚に数十枚、白シャツがぶらさげてあって、あれはビビった」
ロ「ほっほっほ。甘いですな。屋根裏と床下に、全部で百枚隠してありますぞ」
エ「おまえさ、もしかして、給料は全部シャツを買ってる?」



番外編「伯爵夫人の涙」(3)より

「C'est la vie(これも人生) 」編
エドゥアール「やれやれ、峠で追いついてよかったよ」
ミルドレッド「あのまま出発していたら、お会いできませんでしたね」
エ「馬も限界だったからな。あとは走るしかないと思ってたんだ」
ミ「それで、いつ心臓が止まってもかまわない、なんておっしゃったんですね」
エ「それだけじゃない。きみがいない人生なんて、生きる値打ちがないって言いたかったんだ」
ミ「まあ、そうかしら。だいたいわたくしがいなくても、エドゥアールさまはけっこう楽しい人生だったと思いますわ。ソニアと結婚してもよかったし、ネネットともまんざらではない感じでしたし。そういえば、もっとお若いころは、ラトゥール州長官のご息女コレットさんの部屋に忍び込んだりしていたと聞きますし。あ、そういえば…」
エ「…ごめん、そのへんでやめてくれないと、そろそろ心臓止まりそう…」



番外編「伯爵夫人の涙」(4)より

「雪だるまの秘密」編
エティエンヌ「お疲れ様でした、お茶をどうぞ」
エドゥアール「やれやれ、今回の一件はきつかったなあ」
エティ「なんにせよ、奥方さまが、旦那さまを信じてくださったようで、本当によかったです」
エドゥ「(声をひそめて)…俺が出かけたあと、ミルドレッドはどんなふうだった?」
エティ「それが、お顔には微笑を絶やさないのに、お声がとっても怖いんです。階下で盗み聞いていて、『どきなさい』という声が二階から聞こえたときは、思わずその場を飛びのいてしまいました」
エドゥ「やっぱり…。ジョエルのいたずらを叱るときの声がすごいんだ。思わず、俺もいっしょに叱られてるみたいに、直立不動になっちまう」
エティ「本当に浮気などなさったら、雪の中に三日三晩直立不動で立つくらいの覚悟は必要ですね」
エドゥ「雪だるまって、浮気した亭主の悲しいなれの果てなんだろうな…」 (男ふたり、ため息)



番外編「伯爵夫人の涙」(5)より

「亭主元気で…」編
エドゥアール「やれやれ。やっと暇になった」
ミルドレッド「お疲れ様でした。当分は領地でゆっくりできますのね」
エ「ああ、今から一年、これまで寂しくさせた罪滅ぼしをするよ」
ミ「まあ、うれしいですわ。それでさっそくスケジュール表を持ってきたのですけれど」
エ「スケジュール表?」
ミ「朝六時起床。妻と庭を散策。
八時 妻と朝食
九時 妻とスポーツやゲーム
十時 妻と領地を見回り
十二時 妻と昼食
一時から五時 妻とずーっといっしょ
七時 妻と夕食
九時から翌朝まで 妻とずーっとなかよし」
エ「…王都へ戻って、仕事してきていい?」



番外編「伯爵の謀反」(1)より

「それしか頭にない」編
エドゥアール「もう前回の更新から1年3か月も経つんだなあ。やっと戻ってこれた」
セルジュ「もう、きさまのことなど誰も覚えていないだろう。死ぬまでラヴァレ領で静かに暮らしていた、でよかったのに」
エ「あのな、俺が静かに暮らせるわけないだろう」
セ「そういえば、作者が言うには、おまえが主役として登場するのは、このエピソードが最後だそうだ」
エ「え、えーっ。それ、どういう意味だよ」
セ「手厚くとむらってやるから安心しろ」
エ「そ、そんな」
セ「まあ、それは冗談だが、つまり主役を張るには、わたしもきさまも年を取りすぎたというところだろうな」
エ「世代交代か。それもいいか。確かにシャルル王子、ジョエルやニコルが活躍する時代が来たのかもな」
セ「(拳を固める)ニコルが美しく成長し、間違っても、変な伯爵子息などにたぶらかされぬよう、気を配らねばならん」



番外編「伯爵の謀反」(2)より

「ほんとは、かまってほしい」編
エドゥアール「あー、やっぱりラヴァレの谷はいいな。誰かさんのにらみが利いてる王都と違って」
セルジュ「新しいおもちゃを手に入れて楽しそうだな」
エ「おもちゃじゃねえ。俺はロナンをりっぱな議員に育てたいんだ」
セ「ところで、ジョエルのお気に入りの『まっくろくまちゃん』とは、何だ」
エ「ああ、ポルタンスのイサドラ女将が送ってくれた、クマのぬいぐるみだ。めちゃくちゃかわいいんだぜ」
セ「(憤慨する)…うちのニコルを忘れるほどにか」
エ「おまえなあ。かまってほしいのか、ほしくないのか、どっちだ」



番外編「伯爵の謀反」(3)より

「金曜日の妻たち」編
エドゥアール「中庭のお茶会で、いつも何を話してるんだ」
ミルドレッド「もちろん、あなたのことですわ。ときおり軽い失敗談を織り交ぜて、近寄りがたい雰囲気を払拭するように努めていますの」
エ「たとえば?」
ミ「たとえば、わたくしが髪型を変えてもちっとも気づいてくれないとか、ジョエルを寝かしつけると自分のほうが先に爆睡してるとか、若いメイドに世話をしてもらうと嬉しそうとか。『うちもだわ』って奥方さまたちと、とても和やかにお話できますのよ」
エ「(しくしく)それって、亭主の悪口大会って言わない?」



番外編「伯爵の謀反」(4)より

「痛恨の黒歴史」編
父エルンスト「ジョエルの様子はどうだ?」
エドゥアール「しーっ。今膝の上で寝たところなんだ」
父「可愛い寝顔だな」
エ「親父は、俺の幼い頃を知らないから、損をしたな」
父「いや、あれでもアルマはマメだったので、細かく記した育児日誌を定期的に届けてくれていたのだぞ」
エ「本当か? 初耳だ」
父「永久保存しようと、大切にとってある…ほら、見てみろ」

○月×日 エドゥアールさま、おむつを替えるとき暴れて、お小水を噴水のようにまき散らされる。
△月□日 エドゥアールさま、服をどろどろに汚して帰ってこられた。今日はもう五回目。
×月△日 煮込んでいたシチューの中から、靴が出てきた。エドゥアールさまのいたずら。
□月○日 エドゥアールさまをはじめて村へ買い物にお連れした。ものすごい勢いで走り出し、女性のスカートをめくって回られる。

父「これを読みながら、つくづくおまえが手元にいなくてよかったと」
エ「(しくしく)親父、こんなもの永久保存しちゃダメ…」



番外編「伯爵の謀反」(5)より

「オムレツを作っていたら」編
ミルドレッド「(おろおろ)あなたったら、また無茶なことをなさって…弾に当たったら死んでしまうのでしょう?」
エドゥアール「まあ、さすがにマスケット銃だと危ないな」
ミ「え、では小さな銃の弾なら生き残れますか」
エ「どうかな。怪我はするだろうけど、俺運いいし」
ミ「それでは、砲丸投げの弾では?」
エ「まあ余裕で避けるから、だいじょうぶだろう」
ミ「では、生卵なら(わくわく)」
エ「ミルドレッド、お願いだから、手に持っている卵で試さないで」



番外編「伯爵の謀反」(6)より

「明日は明るい」編
エドゥアール「なんだか、ひどい場面で『続く』になっちまったな。次で最終話らしいけど」
ミルドレッド「でも、ほっとしましたわ。王宮裁判でギロチンを求刑されるかと心配していたのです」
エ「ギロチンって、どこの世界の話だい」
ミ「だって、作者はフランス革命を参考資料にしているのでしょう」
エ「そうか。僧院を根城にするギロンヌ・クラブなんて、そのまんまジャコバン・クラブだもんな」
ミ「でも、フランス革命のような悲劇的な結末にはならないはずです。家族を捨てて、革命を選んだ夫の末路とは言え、きっと明るい最終話になると思いますわ」
エ「ミルドレッド、なんだか、作者並みにどんどん性格悪くなってない?」








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